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NSP奨学生執筆記事

オンラインで進むグローバル化!コロナ禍の音楽家の演奏活動って?

こんにちは。NSP奨学生の、原あいらと申します。 大変ありがたいことに、引き続き、第3期NSP奨学生に選出していただきました。

今回は、演奏会がなかなか開催できなくなった後に始めた、オンラインでの音楽活動について詳しくお話していきますね。

オンラインでの音楽活動のお話をするために、少し時間を遡ります。 2020年2月末以降、イタリアはロックダウンになり、演奏会の機会はぐっと減りました。 演奏会どころか、学校自体も閉鎖に…! 後にオンラインレッスンが開講されましたが、当初はただ家にいるしかない状況でした(詳しくは前回のこちらの記事もどうぞ)

しばらくそうした状況が続いていたので、時間を持て余した私はふと、SNSに演奏動画を投稿したり、遠隔でのアンサンブル動画を作りました。

なぜ、今まではあまり演奏を載せていなかったのに、急に載せよう!と思ったのかは、自分でも分かりませんが、「演奏活動が何もできない、先のことも分からない」という不安が漠然とあったせいかもしれません。 私の場合はかねてから、演奏活動は聴いてくださる人がいて初めて成立するものと思っていたので、いつ終わるかわからない閉鎖的な状況が怖かったのだと思います。

もう一つは、上述した前回の記事にも書いたのですが、演奏を聴いて喜んでくれる人がいると知って、「今の環境で音楽家ができること」をしたいなと考えました。

私はたとえオンラインでも、演奏活動を続けたいし、誰かに聴いていただけたらいいなと思っていましたので、もし楽しんで聴いてくださる人がいるなら、幸せなことですよね。

具体的には何をしたの?

私は主にTwitter、Sound Cloud 、Instagram、たまにFacebookなど、SNS中心に動画をアップしました。YouTubeにも意欲がありますが、機材の知識に乏しくほとんどスマートフォンの直撮りだったので、気軽さを重視してまだほとんど手付かず…これからの課題です(機材については次回の記事で触れる予定です!)。 ロックダウン時にはほぼ毎日、Sound Cloudに演奏音源をアカペラでアップしました。Sound Cloudは音源のみのSNSです。 Twitterには動画を載せていました。 選曲は、有名なオペラアリアや歌曲、そして日本の童謡など。

せっかく誰かに聴いてもらえるなら楽しんでもらいたい… そこで、親しみのある曲は何かな、喜んでもらえそうな曲は何かなと考えて選んでいました。

そのおかげか、ありがたいことに一度載せる毎に何千回と再生してもらえるように(最高記録はアメージンググレイスをアカペラで歌った1.2万回!)。

そんな活動を続けている中で、同じ音楽院の友人や先生と一緒に遠隔で演奏しようという機会が増え、次第にイタリア以外に在住の音楽家とも繋がり、演奏の輪が広がりました。 孤独な中、これらの活動は楽しみになりました。 中でも、素晴らしいチェリストの鈴木淳さんと世界の名曲をアンサンブルして、私のSNSだけではなく、先方のアカウントにも載せていただきました。それまではアカペラばかりでしたが、チェロの音色と一緒に歌える喜びと、聴いてくださる方の反応も増えました。(鈴木淳さん Twitterアカウント : https://twitter.com/SuzukiVc

またコロナ禍に苦しむ人々と音楽家のために作品を書かれた作曲家の近藤浩平さん* とコンタクトを取ることができ、オンライン上で世界初演させていただいたのは、かけがえのない大切な出来事です。 (*近藤浩平作曲「いつか夢になるまで 〜家の中にとどまる音楽家たちのために〜」メゾソプラノまたはソプラノ版 / http://koheikondo.com/corona/coronafree204#sheetmusic

信じられないかもしれませんが、これらは全部オンラインの活動がきっかけで与えてもらった機会だったのです…!

感謝するのと同時に、オンラインとはいえ、その向こうには人と人の繋がりがあると実感しました。

もちろんクラシック音楽というと、オンライン上での活動に迷う方もいると思いますが、何か演奏活動のためのプラットフォームを一つでも持っておくと、今後のために良いかもしれません。

他にも、ロックダウンと同時期にスマートフォンのLIVE812というアプリで、ライブ配信を始めました(ライブ配信自体はロックダウンより前からすでに準備していました)。 こちらは音声のみでラジオ配信もできるので、私は月曜日の日本時間の朝6:30〜、「朝活クラシックラジオ」というクラシック音楽の解説・トーク番組をしています。演奏会の本番前後や試験期間はお休みしますが、現在もコツコツと続けています。 アプリ内では定期的に、1時間程度の演奏プログラムを組んで、ピアニストと一緒にオンラインコンサートを開催したりもしています。

最近では、今年2021年8月に日本・東京で「落語×オペラの世界」公演(落語家 立川志ら門さん、ピアニスト 安斎航さんと共演)を行いました。このコンサートは2020年公演予定だったのが延期され、一時は開催が危ぶまれましたが、対策を徹底し文化庁からの支援も受け、オンライン配信と、会場の人数制限はあるものの満員御礼にて無事に開催できました。 オンライン上の活動を通して私を知ってくださった方の応援もあり、「やっぱりロックダウン時でも活動を続けていて良かった」と感じずにはいられません。

オンラインでの活動をしてみて…

これらの活動は私にとって、たくさんの良い発見や経験になりました。なんといってもオンラインの良いところは、場所や地域を問わず発信できるところ。 イタリアにいながら、日本に向けて、世界に向けて発信できるなんて、とてもありがたいと思いませんか? おかげでコロナ禍による強制的な活動停止に追い込まれていましたが、地道に演奏を続けられました。

オンライン上で演奏を楽しむことは、クラシックのジャンルにおいても、今後続いていきそうです。 もちろん、生演奏の迫力や臨場感は最高ですが、アメリカのメトロポリタン歌劇場やイタリアのミラノ・スカラ座をはじめ、多くの世界一流劇場やオーケストラもYouTubeでの配信を始めましたし、今では世界中の演奏をより身近に触れられるようになりました。 私の音楽院でもYouTubeチャンネルを導入し、マスタークラス&コンサートに私も出演させてもらえました。 でも反対にいえば、私も世界中のマスタークラスを聴講したり、コンサートを自由に鑑賞できるということ…すごい世の中ですよね。

これからは、社会のオンライン化に伴い、益々グローバルな活動もしやすい世の中になって行くのかもしれません。

ただ、演奏をオンライン配信するにはやはり良い音質で収録するのが理想です。 今回一時帰国した際、NSP音楽ディレクターの藤井裕樹さんの会社「株式会社マウントフジミュージック」様のスタジオで、スマートフォン+様々なマイクを使っての収録に挑戦しました!

次回はその様子を詳しく載せたいと思います。 最後までお読みいただきありがとうございました。 

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