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演奏“以外”の準備について学んだこと
こんにちは。NSP奨学生の村松海渡です。
この度私を含めた奨学生3人(ヴァイオリンの郡司菜月さんとソプラノの谷菜々子さん)で「Sunshine City ミュージックウィーク」の一環で、池袋・サンシャインシティの噴水広場にて演奏を披露しました。
今回このような演奏機会を頂戴し、当日の運営にも関わっていただきましたサンシャイン池袋の皆様、奨学生としての挑戦の場を与えていただきステージの構成から演奏までを一貫してサポートいただきましたNSPの皆様、そして当日ご観覧いただきました皆様に心より感謝申し上げます。
今回の演奏機会に際して私が学んだことを、主に「事前準備の部分」において、音楽を志す中高生の方々へ向けて、ご紹介致します。
準備はオンライン
今回は出演者の3人の住まいが遠く離れていることや、昨今のコロナ禍の情勢により、対面での打ち合わせは前日のリハ以外できない状況でした。まずこのような状況においてどのように私たちが演奏を作り上げたのか、お話し致します。
オンラインのみに制約されることは一見すると不利な状況にも思えるかもしれません。
一方で、もし対面を最小限に抑えながらも良いコンサートを作ることが出来るならば、それは自分自身の時間やスケジュールを最適化させることにつながり、さまざまな場に挑戦できることにつながるように思います。ぜひ、そのような視点でオンラインでの演奏会準備についてのお話も参考にしていただけましたら幸いです。
議論をまとめておくこと
基本的に私たちはChatworkというチャットシステム(LINEよりも少し業務連絡に長けたサービスです)を用いて意見を交換していました。一方で、チャットシステムは時間にそって流れていくもので、古い議論は遡りにくくなってしまいます。
そのために、誰かが、議論をまとめることが大切だと感じました。これは議論を忘れることを防ぐだけでなく、全体の進捗を俯瞰することでまだ議論が足りない点を明らかにする、また、ディレクターや外部の方と情報共有をする際にもそのわかりやすさが強力に生きてくるツールだと実感しています。今回は具体的にはdropbox paperを用いて、決めなければいけない内容とその期日をはっきりさせました。
メンバーの多様性とTPO
今回のような案件では、メンバーのバックグラウンドが多様であったり、また普段は組まないような編成(今回はピアノ・ヴァイオリン・ソプラノ)になることもあり得るかと思います。このような場合には、望んだ選曲において既存の楽譜が使えないこと、そもそもお互いの良さが出せる曲目やそのジャンルがバラバラになることが頻繁にあるかと思います。
さらに、その演奏会場の構成(特に今回は広い空間であるのでアンプを用いている点は特にクラシックの本番とは異なる状況でした)や、観客の層(今回はご家族が多く幅広い世代の方がお越しでした)などのTPOも考慮しなければいけません。
このような問題はどのように解決されるでしょうか。今回は二つのポイントでそれを乗り越えました。
一つ目:テーマを共有する
例え普段の演奏ジャンルや楽器が異なっても、演奏会場や観客といったTPOに沿ってより良い演奏会を作るために、試行錯誤していた私たちに、NSP音楽ディレクターの藤井さんにはミーティングの折に「演奏会のテーマ」をそれぞれ出し合ってみると良い、とアドバイスをしていただきました。そこで改めてメンバーで話し合った際には、
- 音楽を聞いている時だけでも、コロナ禍を忘れられる演奏
- 若手ならではのフレッシュな演奏会
- 幅広い年齢層にも純粋に音楽を楽しんでいただけるプログラム
というような意見を出すことにつながり、結果的にそれらの中で両立できる要素があるように思えるようになりました。
自分の意図を伝えつつ、他の人の意見も尊重できるように、これらを念頭に置いて各々が選曲をすると、例え今回のように選曲のジャンルが複数になっても(今回はジャズ、クラシック、童謡と多様な選曲になりました!)一貫性を持って最初から最後まで演奏を楽しんでもらえるのだな、と学ぶことができました。
<今回の演奏では多様なジャンルや編成の演奏に併せて、池袋・サンシャインシティ舞台スタッフの方々が
照明の色やスポットライトの調整をしてくださりました>
二つ目:カジュアルな編曲に挑戦する
皆さんは編曲、というものをされたことはありますでしょうか。
このような本番では先ほども申し上げたように、楽器編成が独特でそれ専用の編成楽譜がなかったり、多岐にわたる演奏ジャンルの曲が並ぶことがあります。
このような状況になったため、僕たちはカジュアルな編曲によって、楽器ごとに担当する旋律を決めたり、自身の得意ジャンルをTPOに相応しい状態で披露することができると考えました。
例えば、今回私が演奏したトルコ行進曲は、そのままでもクラシックの名曲として素晴らしいものですが、TPOを考えると(誤解を恐れずにいうと)少し冗長になる可能性があります。しかし、そこに編曲を加えることによって、意外な印象を付与できると考えました(また、実はオリジナルより演奏時間は少し短めになっています)。
他にも、最後に演奏した「ふるさと」も原曲ではコード進行が1~3番とも同じです。一方で、今回はヴァイオリンとソプラノがそれぞれ旋律を担当するので、それぞれのパートが引き立つように伴奏の形を変えながら、かつ、ラストの曲に相応しいような、すこしキャッチーなコード進行に挑戦しました。
僕は作曲・編曲の専門家ではありませんが、それでも試行錯誤をしてこのような編曲を、演奏会を作り上げるために行いました。このように、自分自身にとっての専門ど真ん中でなくとも、勇気を出してより良いものを作ろうと考えることは大事かもしれません。
最後に
実は当日僕が着て行った衣装は綿のシャツだったのですが、気づかないうちに背中側にシワがびっしりとついてしまっており、急遽新しい衣装を購入する、という場面がありました。エンタメに長く携わっている音楽ディレクターの藤井さんからは、普段のクラシックではなかなか念頭に上がらなかった、エンタメのTPOとしての衣装への気配りの大切さを教わりました。
とかく演奏ばかりに気を取られがちの自分でしたが、今後、演奏は当然ながらも、衣装やMCを含め、周りの共演者や場を提供していただいた方の努力に応えられるよう、一層意識を広げようと考えるようになりました。
今回の演奏会を通じ、演奏の練習に限らない事前の準備の大切さを改めて実感しました。ここにご紹介したポイントが少しでも参考になりましたらとても嬉しいです。お読みいただきありがとうございました。
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