ニュースNews

NSP奨学生執筆記事

学生に優しい国!ドイツでの暮らしと学校生活

 

こんにちは、第2期NSP奨学生の郡司菜月です。

前回までの2回のブログでは、私が留学に憧れ、現在のドイツへ留学するまでの道のりについてお話ししてきました。
(まだ読まれていない方はぜひ!→第1回目はこちら、第2回目はこちら)

第3回目、最終回となる今回は、ドイツでの暮らしや、学校生活の様子についてお話ししていきます!

 

緑に囲まれた学校

私の通っているハノーファー音楽演劇大学は、周囲の半分が森に囲まれています。この森には公園やカフェもあり、サッカーをして遊ぶ子供たち(さすがサッカー大国!)、ランニングをする人、ベンチでサンドウィッチ片手に楽しく会話する人たちなど、平日休日問わず多くの人で溢れています。

皆さんは「ちょっと疲れたなあ…」と思った時、どんなことをされますか?

日本にいた頃の私は、例えばウィンドーショッピングに出掛けたり、カフェ巡りをしたり…
疲れを取るというより、他のことで忘れようという作戦です(笑)。気分転換にはなるものの、結局余計に疲れた、なんてこともしばしば…

「疲れた時は森を歩くといい」というドイツ人の考えを聞いたことがあります。
この森でも、“ただ歩いているだけの人たち”と沢山出会います。

葉っぱの揺れる音、小鳥の美しいさえずりに耳を傾けながら、木漏れ日を浴び、緑の中を歩く。
それだけで、不思議と心が浄化されて前向きな気持ちになります。

〈 “Wald Café” は “森のカフェ” を意味します。コロナ禍前に撮影したものですが、今はロックダウンも明け、再び活気が戻ってきました。〉

 

築125年の家に住む

ドイツの街を歩いていると、通りの左右にずらりと並んでいる5〜6階建ての集合住宅に圧倒されます。19世紀後半から20世紀初頭に建てられ、戦争にも破壊されずに残ったアルトバウと呼ばれる古い建物です。

私もアルトバウに住んでいます。1896年に建てられ、築125年。ドイツ人はこの歴史ある建物を、何度もリノベーションを繰り返しながらみんなで大切に暮らしているのです。

1896年のドイツというと、ブラームスやリヒャルト・シュトラウスが暮らしていた時代。そんな偉大な作曲家たちも、なんだか身近に感じられてワクワクします。

日本で築125年と聞くと、そんな古い家に住めるの?と思ってしまいます。

ですが、歩くたびに軋む床も、前に住んでいた人が残したペンキの跡も、何度も交換を重ねて噛み合いづらくなったドアも、長い年月を経てきたことによる魅力。私はそんな我が家が今では大好きです。

〈私が住んでいるアルトバウ。外壁には人物や植物の彫刻も施されています。〉

 

学生に優しい国

海外留学となると、なんだかものすごくお金がかかりそうだと思う方も多くいらっしゃるのではないでしょうか?
実は、ドイツの音大の学費は、州や学校によっても違いますが基本的には無料、かかってもかなり安いです。

例えばハノーファー音大の場合ですと、半年の学費は約400ユーロ(約52000円)です。
日本の国立音大、特に私立音大の学費と比べると、かなり安いですよね!

またドイツでは、美術館やコンサートなど多くの面で学割制度が充実しており、色々なことを学べる機会を多く持てることも、学生にとって嬉しいポイントです。

さらに私が1番驚いたのは、ドイツの学生であれば、その街から一定の地域(ざっくり同じ州内)まで、バス・電車などの交通機関を無料で利用することができます!

 

学校生活

さて、ここからは学校生活についてお話ししていきます!

レッスンは週に1回1時間あり、毎回のレッスンに門下専属のピアニストの方がご一緒してくださいます。

そして私の門下では週に2回、学校のホールで試演会(クラス発表会のようなもの)を行っています。門下生になった当初は、週に2回も本番があるなんて!と驚きましたが、今では自分の課題や成長と向き合える大切な時間です。

他の門下生たちの演奏を聴くことで刺激も受け、演奏後にはお互いの感想を伝え合ったりと、恵まれた環境で音楽を勉強することができています。

〈試演会での様子〉

また室内楽では、様々な国の学生たちと一緒にアンサンブルをする中で、それぞれアイデアをストレートに出し合います。イタリア人の友人と一緒に演奏した際には、彼女からイタリア特有の装飾音の奏法を教えてもらったりと、アンサンブルを通して新たな発見も。国によっての音楽性の違いなども肌で感じることができます。

 

練習環境

音大生にとって、おそらく生活の中で一番大切なのは練習環境、ですよね。

普段の練習は、学校または自宅で行っています。

通常であれば学内に多くある練習室を自由に使って良いのですが、コロナ禍以降は完全予約制となり、門下ごとに部屋が決められ、1人1日2~4時間しか練習室を確保することができなくなりました。自分の行きたい時間を希望することもできず不便ではありますが、誰が、いつ、どの部屋を使ったのかを学校側が把握していることはとても安心です。

〈校舎内の様子。床は全て赤のカーペット、部屋のドアは紫に統一されています。〉

 

休息を大切にするドイツ
“Ruhe Zeit” (休息時間) に要注意

自宅で練習する際にも注意が必要です。

大家さんが音出し可能だよと言っている物件でも、全てはご近所さんが許してくれるかどうか、にかかっています。実は私も、ハノーファーに来て一番最初に2ヶ月ほど住んだ家は、音出し可能だったにも関わらず隣人から苦情が来てしまい(壁を叩くなどの嫌がらせも…)、とても音を出しづらい状況でした。自宅で練習する際には、ご近所さんとしっかり相談することも大切です。

またドイツにはRuhe Zeit(ルーエツァイト)と言って、13〜15時(※ハノーファーの場合)の時間はなるべく静かに、テレビの音も小さくしましょう、という風習があり、その時間は音出しをすることができません。掃除機や洗濯機もだめ、など具体的な規則も。また夜から朝にかけての時間も同様で、だいたい19時頃までには練習をやめるようにしています(これもご近所さんとの相談が必要です)。

そして日曜日になると終日です。丸1日音出しが出来ないのは、正直結構困ります。

一見とても不便な環境のように聞こえますが、どれも、休息を大切にしよう、というドイツ人の考えのもと生まれたルール。
音を出せない時間は外の景色を眺めながらゆっくりコーヒーを飲んだり、静かに自分自身と向き合う良い時間となっています。

 

おわりに

いかがでしたでしょうか。第2期NSP奨学生として執筆する記事は、今回が最後となります。

3回に渡って、私のこれまでの道のりや、ドイツに留学してからの様子についてお話ししてきました。
何か少しでも、これから留学を目指す方々のヒントになれれば嬉しいです。

留学しようと考えたとき、当然不安はありますよね。
留学前の私も、想像すればするほど不安でいっぱいでした。

学校は楽しい?友達はできる?言葉は通じる?住む家は見つかる?

考えればキリがありません。

ですが、その大半は行ってみなければ分からないし、やってみなければ分かりません。
最初の一歩を踏み出す勇気さえあれば、大抵のことは何とかなるし、何とかしようと思うものです。

ドイツへ来てもうすぐ1年。大変なことに直面することも当然ながら多くありますが、その全てが、自分を成長させてくれるきっかけとなっています。何よりも、音楽の本場ヨーロッパの地で音楽を学べていることは、何ものにも代えがたい喜びがあります。

これからも、本場ヨーロッパだからこそ学べる音楽をたくさん吸収し、よりドイツの暮らしにも溶け込めるよう、自分自身と向き合いながら精進していきたいと思います。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

ニュース一覧へ

Reccomend