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NSP奨学生への応募を考えているアナタへ【2023年第2期生の感想と共に】
皆さん、こんにちは、音楽ディレクターの藤井です。
NSP奨学生の制度を設けてから3年弱が経ちました。この3年あまりのコロナ禍とほぼ重なっている状態ですが、将来に夢と希望をもつ多くの優秀な若い音楽家と出会えた事は僕自身にとっても良い刺激であり、かけがえのない経験となっています。
今回は初の試みとして、期間を満了した2人の奨学生の感想を紹介させていただこうと思います。
これまでは奨学生一覧でどんな人たちが奨学生に選ばれているのかはチェック出来ましたが、プロフィールや制作したコンテンツのみで、終了後、どんな経験をしたかを本人たちの言葉で語ってもらってはいませんでした。
よりリアルな言葉を皆さんに届ける事で、これからエントリーする人には良い参考になるのではないでしょうか?
感想の紹介に移る前に僕から伝えておきたい事を少しだけ書かせてください。
NSP奨学生に必要な要素は「社会性」
『奨学生制度にご応募いただくにあたって』の記事では、NSPの奨学生制度の特長を説明しています。
この後紹介させていただく弓塲友美子さんも書いていますが、演奏技術やコンクール受賞歴などを重視する奨学生制度が多い中、「社会性を重視している奨学生制度」は稀だと思います(唯一無二かもしれません)。
コンテンツの制作が課題になっているのも珍しいかもしれませんね。
奨学生に選ばれたけれど、期間までにコンテンツの制作が出来ず、ドロップアウトした人も実は多いです。
なぜそうなってしまうかと言うと、「視聴者が興味のあるもの、依頼者の意図に合ったものではなく、自分の作りたいものになってしまっている」「初めての事に挑戦するのに、自分がこの課題にどれだけの時間がかかるか逆算出来ていない」などが挙げられます。
前者は演奏に例えると、「自主企画のリサイタルではなく、どこかから依頼されたコンサートなのに、自分の好きなマニアックな曲ばかり演奏している状態」、後者は「初めて行く会場なのに早めに家を出ず入り時間に間に合っていない状態」に近いですよね。
本当に自分の好きな演奏だけで食べていけるほんの一握りに入れれば良いですが、ほとんどの人はそうではないはずです。
僕はNSPで執筆させていただいたブログ「音楽家のためのサバイバル術」や著書の「音大生のための“働き方”のエチュード」でも何度も繰り返して伝え続けていますが、特にこれからの世代の若い音楽家にとって「社会性がある事」「個での発信力がある事」はマストだと思っています。
少し厳しい事を書きますが、音大では演奏技術や表現力しか習っていないようで、社会性、ビジネスマナー、コミュニケーション能力、デジタルのツールを活用する能力など、「職業音楽家」「個人事業主」として生きていく、自立していくためのスキルが備わっている人が本当に少ないです。
ですが、逆を言えば、その部分さえ出来ていれば(もちろん演奏技術も必要ですが)、かなり高い確率で仕事になるし、自立出来るという事なんですよ!
こういった部分を学ぶためにも、ぜひNSP奨学生に挑戦していただきたいですね。
NSP奨学生は留学生でなくてもOK!!
それから、この制度は留学生に限定しているわけではありません。
海外留学をしている人のほうが貪欲、モチベーションが高い人が多いからなのか、たまたま選ばれている人が留学生というのが正直なところです。
募集ページのQ&Aにも記載しているとおり、この奨学生制度は「音楽に関わる裏方志望者」でもOKだし、2021年第2期の鷹澤 和さんのように、幼児教育の現場を目指している人でもOKです。
皆さんが、「この制度は留学生のためのものなんだ」「留学して海外で通用するレベルの演奏技術が必要なんだ」と勘違いしていない事を切に願っています。
リマインドしますが、こちらが最も重視しているのは『将来、音楽で社会に貢献する』という明確な意思をもちながら学業に取り組んでいる学生です(=社会性の備わっている学生です)。
言い換えれば、どんなに演奏が上手くても自分中心の考え方の人は受からないし、逆に、演奏技術はそこまででなくても(今回紹介している2人は優秀ですよ!)、音楽で誰かの役に立ちたいという想いが強く、それをきちんとプレゼンする能力があれば受かるという事。
日本の音大に在学中の人のエントリーもお待ちしています!(もちろん、教育大や一般大、専門学校などでも構いません)
☆募集ページはコチラ
弓塲 友美子さん(ヴァイオリン)
※弓塲 友美子さんは2023年第1期、2期を満了しました!
Q1. 期間中どんな学びがありましたか?
テーマを決めて動画を作成するのは初めてだったので全て手探りでしたが、構成を考えて使用する表やイラスト、BGMなど一つ一つ作っていく中で、伝えたい事をわかりやすく伝えるには、どのような工夫が出来るのかと考える良い経験になりました。
また、作成した動画に対して、自分とは異なる視点から意見をいただき、具体的な改善点などアドバイスをいただけて勉強になりました。
Q2. その学びは今後どのように活かせそうですか?
現代ではあらゆる場所でSNSが使われているので、音楽活動するうえで今後も動画を作って発信する機会が増えていくと思います。
伝えたい事をわかりやすく伝える工夫をする、というのは動画作成に限らず全てに通じる事なので、あらゆる場面で活かしていきたいです。
Q3. 今後、奨学生へのエントリーを考えている人へメッセージをお願いします。
音楽家として将来どんな活動が出来るだろうかと考える事は、自分がなりたい音楽家像をより明確にするので、『将来、音楽で社会に貢献出来る人材の育成』を目的にされているNSP奨学生制度に参加出来た事は、私にとって素晴らしい経験になりました。提出課題に対して丁寧なフィードバックをいただける事も、NSP奨学生ならではの特長だと思います。
また、音楽や芸術を志す学生を対象とした奨学金は、応募する際に教授の推薦状やコンクールなどの実績が必須のものが多い中で、NSP奨学金はそれらを選考に必要とされていないため、学生全員に等しく可能性が開かれていると感じます。
私自身、奨学生として学びの多い期間になったので、興味のある学生の皆さんはぜひ応募する事をお勧めします!
Q4. 音楽家を志す、皆さんよりもさらに若い世代へのメッセージをお願いします。
私は音楽家を志すうえで、音高音大に入ってからだんだん周りと比較される事が増え、コンクールなどの結果に囚われて、本来音楽は楽しむものなのに、楽しいと感じられなくなってしまう時期を経験しました。大好きでずっと続けてきたヴァイオリンがいつしか自分を苦しめるものに変わってしまっていた時は苦しかったけれど、それでも辞めずにきたのは、やはり心の底でヴァイオリンが、音楽が好きだからだと思います。苦しい事も悔しい事も、少し時間が経って振り返ってみると、学びの多いかけがえのない経験に変わり、自分を強くしてくれました。
皆さんも、もし壁にぶつかったり悩んだりする事があったら、それは真剣に取り組んでいるからこそだと思います。音楽が好きという純粋な気持ちを大切にして、頑張ってくださいね。
Q5. 今後の目標を教えてください。
直近の目標としては、留学最後の1年間、出来るだけ多くの事を吸収し、長かった学生生活の良い締めくくりが出来るように頑張ります。
また、卒業しても音楽の勉強に終わりはなく、音楽家を志すという事は常に技術を磨き、向上心をもって学び続ける事だと思います。奏でる音楽にはその人の人柄だったり人生が反映されるので、音楽家である以前に一人の人として、さまざまな経験を重ねながら成長していけるよう努力してまいります。
丸山 貴大さん(指揮)
Q1. 期間中どんな学びがありましたか?
動画コンテンツの制作作業を通じて、自分の感じた事を出来るだけ表現する力が飛躍的に高まったと思います。そして自分が何か一つの物事やスキル、知識などを習得しようとする時に、どれくらいの時間が必要でどのような成長過程を通るのかをかなり深いレベルで腑に落とせました。
Q2. その学びは今後どのように活かせそうですか?
自分は指揮者とコレペティという歌手のコーチングをする仕事の二つをしておりますが、 そのどちらにおいても、自分の提案やアイデアを他者に確実に伝える、という事に活かせると思っています。また今後もいろいろな知識やスキルの習得に励む際に、習得に至るまでの全体像も見えやすくなっているので以前よりも淡々と目標達成に迎えるのではと考えています。
Q3. 今後、奨学生へのエントリーを考えている人へメッセージをお願いします。
NSP奨学生は特に自分の内的な成長を大切にしたい全ての人にお勧め出来る制度だと思い ます。 もちろん成長を施すための適度な労力は必要としますが、NSPの活動をサポートをしてくれる方々がそれぞれ素晴らしい人物で、そのような方と出会えることが一番の財産になると思っております。自分の人格の成長に対する興味がある方や人との出会いをご縁と受け取るタイプの方は、エントリーをされてまず間違いなく実りのある機会になると思っております。
Q4. 音楽家を志す、皆さんよりもさらに若い世代へのメッセージをお願いします。
音楽は本当の意味で人を癒したり勇気づけたりする素晴らしい芸術だと思っています。 音楽を学べば学ぶほど、深い気づきや学び、感動がありそれらが自分達の人生を豊かにしてくれると考えています。 もし音楽家を志す方がいらっしゃれば、自分にとってその方は同志です。 お互い一生懸命勉強をして音楽を愛して学び合えたらと思います。聴いてくださるお客様や、共演者、そして曲を書いてくれた作曲家達にわずかでも貢献出来るよう全力で音楽を楽しみましょう!
Q5. 今後の目標を教えてください。
自分としては指揮者の仕事はまず第一に相手のエネルギーを受け止める仕事だと思っております。さまざまな想いをもった音楽家が放つ大量の音を、善悪のジャッジなく受け止め、そ れらを分け隔てなく愛するときに、音楽は大きく拡がっていくのではと想像します。 作曲家、関わる全ての音楽家、そして自分の想いを大きな心で受け止められる人間になりたいと思っています。そのために喜びも悲しみも達成感も苦労もとことん全力で味わっていこうと思っております。