音楽大学で主に楽器の演奏技術を学んできた若い音楽家が、一人の社会人として、職業音楽家として自立するためには、演奏技術以外にも学ぶべき事がたくさんあります。

若い音楽家がマネージメント業務や裏方業務を経験する事は、将来どんな役に立つのでしょうか?
NSP音楽ディレクターの藤井裕樹さんにお話を伺いました。

マネージメント、裏方の視点

NSPのマネージャーの仕事内容

―― NSPのマネージャーや裏方の仕事について簡単に教えてください。

マネージメント業務は一般の音楽事務所と同じで、まずはクライアント様からお問い合わせやご依頼をいただき、日程や会場、予算などをお伺いします。そして、最適なプランを僕のほか、幹部スタッフらと一緒に検討し、音楽家の手配などを行います。その後、クライアント様や音楽家とのやり取りをし、イベント当日をむかえ、終了後には、請求書の作成や、音楽家への報酬の支払い手続きなどをやってもらっています。

そのほかの裏方業務は、Web制作やチラシ制作といったデザイン業務、メールやブログ作成など、パソコンを使用した仕事も多いですね。

マネージメントや裏方の仕事から学べるもの

―― マネージメントや裏方の部分に携わる事で、一人の社会人として、職業音楽家として、特にフリーランスでやっていくのにどんな良い影響がありますか?

 個人や事務所から来る仕事を受けて、ただ演奏してお金をもらっているだけだと、通常クライアント様との打ち合わせや交渉には同席しません。雇う側がどういう人を好むのかもわかりません。この事情を知る事が出来るのは何より勉強になるのではないでしょうか。

 例えば、2017年の吹奏楽のイベント(注)では、持田先生のような熱い想いをお持ちのクライアント様と実際にお会いし、両者で良いものを作り上げていくプロセスを体験出来るのは、裏方の作業に関わってこそです。その想いを感じられるのも、音楽家としてのやりがいやモチベーションにつながります

注:2017年10月 学校法人持田学園 有馬白百合幼稚園様のご依頼で行われた、創立50周年大運動会での50人編成の吹奏楽による生演奏(イベント詳細はこちら)。

 この時の案件では、僕は50人の奏者を集める、言わば人事権のようなものがあったわけですが、事務所側がどんな事を考えて人選をしているかを目の当たりにするというのも、通常は出来ない事ですよね。

たとえば、ディズニーランドのバンドに入りたいと思っても、音楽事務所の事情や会社の事情(採用基準)を知る事は出来ません。一般の就職活動でたとえれば、採用側が何を考えているのかがわかるわけですから、当然有利になり、内定をもらいやすくなります。つまり、自分もクライアント様に必要とされる音楽家になるためのノウハウを吸収出来るのです!

NSPでは、普段の業務からチャットを使ったコミュニケーションをしたり、メールやブログの作成の添削(校正)を僕やライターのスキルがあるスタッフが行い、日本語力やプレゼン力、コミュニケーション能力を養っていきます。この能力は、フリーランス、個人事業主として自立するための大きな武器になります。

現場では音楽家だけでなく、マネージャーなど裏方スタッフの存在も大切です。何となく、演奏する人が上、マネージャーはその下の雑用係のようなイメージがありますが、僕はそれは間違っていると思います。どちらが欠けても良い仕事にはなりません。

ちなみに、よく「○○という事務所は待遇が悪い、ブラックだ!」というような愚痴を耳にするのですが、実際そういうところもあるし、逆に、マネージメントの苦労や手間(マージンを取られる意味)を理解せずにぼやいているだけの人もいます。

マネージメントや裏方業務を経験する事で、不当に搾取している事務所や企業にはだまされにくくなるし、きちんと仕事をしてくれている事務所や企業には感謝が生まれ、良い関係を築く事が出来るようになります。

若い音楽家には、マネージメント、裏方の大切さも学んでほしいと思っています。

 このホームページに連載している「音楽家のサバイバル術」の中でも書いていますが、採用する側がいかに楽器の技術以外の部分を見ているのか、それを知る事は、フリーランスの音楽家として生き残るために絶対にプラスになります