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生き残る人と消えゆく人の音大時代の違いとは?
前回の記事、『“音大に行きたい”と“プロになりたい”は違う』はいかがでしたか?
前回は、将来音楽の道に進みたい方が、中学高校時代にすべき事のアドバイスでした。
今回はその続編として、大学時代のお話をしましょう。
入学がゴールの場合、プロがゴールの場合
まず次の2名の生徒さんを仮定して、より具体的に見ていきましょう。
Aさん:「音大に行きたい」と思い音大に入学した。
Bさん:どんなプロになりたいか、具体的な目標をもって音大に入学した。
この両者の学生生活がどれだけ違ってくるか、シミュレーションしてみたいと思います。
まずは物語にリアリティーをもたせるため、もう少し詳細な人物設定をしてみたいと思います。
入学がゴールのAさん
中学1年生の吹奏楽部でトロンボーンを始め、高校では全国レベルの吹奏楽部に所属。
高校時代は部活一色で、勉強もあまりしなかったので、ほぼ楽器だけで受かりそうな私立の音楽大学へ進学。
ただ、その先の事は特に考えていない。
プロがゴールのBさん
同じく中学1年生の吹奏楽部でトロンボーンを始めた。
ハリウッドの映画音楽が好きで、ふだんから本編をそっちのけに、BGMに耳を傾けていた。
ジャズも好きで、高校生のころからライブハウス通い。
将来はジャズ、スタジオミュージシャンになろうと思い、私立の音楽大学に入学。
映画音楽の興味を生かし、作編曲の勉強もしたいと考えている。
※現在はジャズ科のある学校も増えましたが、スタジオミュージシャンという仕事はジャズだけでなく、クラシカルなフルオーケストラでの仕事も珍しくはないので、あえて一般の(クラシック系の)音楽大学に進学した設定にしてみました。
両者に生じる音大生時代の差
それでは、音大に進学した両者がどんな4年間を過ごすか見ていきましょう。
Aさんの音大生時代
高校時代には吹奏楽で全国大会に出場し、「華」のある舞台を経験したAさん。
大きな挫折もなかったせいか、プライドが高いようです。
ただ、将来の具体的な目標はないため、先生に言われた課題をこなすだけの毎日。
出された課題をそつなくこなし、技術的にはそれなりに上達しました。
クラシック以外には特に興味ももたず、他校の生徒たちとの交流もほとんどしませんでした。
Bさんの音大生時代
幅広いジャンルの音楽を仕事にするスタジオミュージシャンになるためには、クラシックの勉強も大切なので、何より専任の先生からのレッスンを誰よりも一生懸命受講しました。
トロンボーンの場合、ソロ楽器と言うよりはハーモニー楽器なので、学友とのアンサンブルやオーケストラなどにも積極的に取り組み、コミュニケーションを大切にしました。
残念ながらBさんの音大にはジャズ科はありません。
でも、ビッグバンドなどで、ジャズのアンサンブルを学ぶ重要性、必要性は理解していたので、一般大学(早稲田や明治etc.)のビッグバンドサークルにも参加。
音大の教授はクラシック専門でしたが、Bさんの将来を理解し、アドリブ(即興演奏)の指導が出来る、第一線で活躍するプレイヤーを紹介し、レッスンに通う事を薦めてくれました。
作編曲にも興味があったBさんは、ほとんどの生徒が「トロンボーンには関係ない」と思って寝ている和声の授業などもしっかりと受講しました。
現在では、パソコンで楽譜を書くのも当たり前。
そういったソフトウェアの技術も自分で勉強し、学校のトロンボーンアンサンブルのコンサートのために、積極的に作曲や編曲の実践を行いました。
さらに、卒業後の事も考え、ジャズ科のある学校の生徒との交流をもったり、ライブハウスにも通い、第一線で活躍するプレイヤーの音を聴いたり、直接その方々からアドバイスを受けたりもしました。
4年間で学びの量が大きく変わる
いかがでしょう?
AさんとBさんが、音大卒業後、どれだけ差がついているかは一目瞭然ですよね?
4年間同じ環境にいても、全く「学び」の量が違います。
技術「だけは」あるAさんは、運が良ければオケに受かったりする可能性もないとは言えません。
ですが、高校での全国レベルなんて、プロを目指す人たちの間では大した事ないんですよね。
実際、「甲子園の優勝投手がプロになって活躍出来ない」という話、よくありますよね?
おそらくAさんタイプのほとんどは、卒業後すぐに現実を思い知らされます。
指導者の観点
では逆に、彼らを指導する先生(教授)の立場でも考えてみましょう。
先生に出来る事
あなただったらどちらの生徒さんを熱心に指導しますか?
もちろん先生である以上、「あなたは将来どうしたいの?」とていねいに聞いてくださる場合もあるでしょう。
平等に接する義務もあるでしょう。
でも、Bさんくらい具体的な目標をもっていれば、先生もアドバイスしやすいわけです。
「僕はジャズは出来ないから、友人の良いジャズプレイヤーを紹介するよ。
だけど、スタジオの仕事をしたいなら、在学中にクラシックの奏法をきちんと身に付けなさい。
そのためには、僕のレッスンや、アンサンブルの授業は大切だよ!」
などとアドバイスしてくれるはずです。
ですが、Aさんの場合、
「じゃあ、次回までにエチュードの何ページを出来るようにしておいてね。」
程度のアドバイスしか出来ませんよね?
あなただったら、どちらのタイプのレッスンを受けたいですか?
教えてくれない先生が悪い?
実際、卒業後に
「ウチの大学の○○先生は、何も教えてくれませんでした。」
などと愚痴っている人、僕の周りにもいます。
でもそれは、 本人の学ぶ姿勢に問題があった可能性も高いと思います。
音大の先生方も、長年その現場で仕事をされているので、人を見極める能力は超一流です。
あなたがAさんタイプかBさんタイプかは、ほんの一瞬接したらわかるんですよね。
その時点であなたに対する対応の仕方を変えていると言っても過言ではありません。
僕はすべての学校のすべての専任教科の先生を把握しているわけではないので、先生方の善し悪しは何とも言えませんが、あなた自身に問題がある可能性も十分にあります。
それでも「この先生は違う、自分は精一杯やっているのに先生は答えてくれない」と思ったら、それは相性など、別の問題かもしれないので、違う道を考えるべきでしょう。
生き残る人、消えゆく人
2回にわたってさまざまなお話をしてきました。
あなたが今どのステージにいるとしても、とにかく大切な事、それは、
あなたが将来を見据えて、自発的に学ぼうとしているか?!
です。
ちなみにBさんですが、音大に行ってそれをやったか、高卒で自力でやったかの違いはあるものの、ほぼ僕が実践した事そのものです。
逆に、Aさんタイプの友人は音大にたくさんいましたが、現在きちんと音楽だけで生計が立てられている人は一人もいません。
あなたはどちらのタイプの生徒さんになりたいですか?
次回はいよいよ、音大卒業後に演奏家が仕事を得るために大事な事を、7回に分けて語っていきます!
次回記事:『音大卒の演奏家が仕事を得る方法』 Vol.1 音楽業界の現状
前回記事:『“音大に行きたい”と“プロになりたい”は違う』
今回は、将来音楽の道に進みたい中学生や高校生へのアドバイスをします。
プロの音楽家(ミュージシャン)になる方法を教えて!!
音楽の仕事に就くにはどうしたらいいの?!
そんなふうに進路に悩む中高生へ、音大に進学する前の話について書いてみようと思います。
中高生時代の考え方が大切な理由
さて、タイトルにも書いた『”音大に行きたい”と”プロになりたい”は違う』という点。
どこが違うでしょうか?
ずばり答を書いてしまうと、
それは
「ゴールの位置」です。
前者は「音大に入った所がゴール」、後者は「プロになった所がゴール」です。
中高生に「将来の夢」をたずねた時、
「音大に行きたいです!」って答える人、けっこういませんか?
「じゃあそれからどうしたいの?」と聞くと、その先が答えられない。
ハッキリ言いますが、このタイプの人は成功しない確率が高いです。
その理由は、目標が明確でないから!
「音楽を専門にする仕事」と言っても、いろいろな選択肢がありますよね?
クラシックをメインにする演奏家、ジャズやポップスをメインにする演奏家。
その中でも、コンサートやライブを中心にしている方もいらっしゃれば、レコーディングを中心とした、いわゆるスタジオミュージシャンと呼ばれる方もいらっしゃいます。
作編曲家や、レッスンを中心に行うインストラクター、完全に音楽の先生として、学校に就職される方もいらっしゃるわけです。
共通の部分もたくさんありますが、音大の在学中にどんな勉強や練習をするかの割合や優先順位は、目標によってかなり違ってくるのではないでしょうか?
それ以前に、選ぶべき学校そのものが違うとも言えます。
音大というのは、「プロになりたい」という夢をかなえるためのプロセス、手段でしかないという事です。
ところが、「音大に行きたい」が夢になってしまっている人はそこがゴール、入学した時点で夢がかなっているので、その後、何をしていいかがわからなくなります。
僕が中学・高校時代にした事
ちなみに僕の場合ですが、最初は(大阪の中学で吹奏楽部に入りたてのころ)管楽器のリペアマンとか、楽器店で働いてみたいと思っていました。
当時はプロ奏者との接点などありません。
ボロボロの学校備品を修理に出したら、キレイに直って戻ってきたり、お店でピカピカの楽器を見て「あんなの欲しいな」と思っていた事から、おそらくそういう現場にあこがれたのでしょう。
もし僕がそのままリペアマンを目指していたのであれば、その過程としては、リペアの専門学校に進むのが近道ですよね。
音大では修理を教えてくれません。
その後、中2で大阪から東京に出てきて、たまたまコンクールで全国大会に出場している吹奏楽部に入ります。
そこでプロ奏者のレッスンを受けたり、コンサートにもたくさん足を運ぶようになり、僕はプロのトロンボーン奏者になりたいと思うようになりました。
ちなみにこの時はまだ、クラシック奏者としてです。
ウチはそれほど裕福ではなく、私立の音大は絶対NGだったため、東京芸大を目標としていました。
高校に入ってからは、国内外のジャズ、ポピュラー系のアーティストとたくさん関わるようになり、自分の気持ちはクラシックでないほうに傾いていきます。
当時は今ほどジャズ科のある学校はなかったですし、あってもそれらは私立。
海外のアーティストと接する事で、将来アメリカで勉強したいとの想いが芽生えはじめ、結果、僕は日本では大学に行かない(高卒のままプロを目指す)という選択をしました。
早いうちからゴールを描く事
僕の選択はリスクも高く、万人に当てはまる方法とは言えません。
皆さんに薦めるつもりもないし、「音大に行かないほうがいいよ!」と言ってるわけでもありません。
ただ、自分が将来どうなりたいのかをよく考え、現時点で最も夢に直結した道を選びましょう!
という話です。
ほとんど何も考えずに音大がゴールになってしまっているのはもってのほか。
プロになりたいにしても、出来るだけ具体的に「自分の進みたい道」を思い描いたほうが良いと思います。
そうすれば、おのずと今、何をすべきかが見えてきます。
この思考の大切さは一生ついてまわると思います。
思い描いていたとしても、現実はそのとおりにいくとは限りません。
と言うか、いかない事のほうが多いです。
それに、実際はプロになった所がゴールではなく、あくまでスタートラインは通過点ですからね!
僕自身、何度も軌道修正や目標の再設定をしています(夢が変わっていく事は悪い事ではありません。むしろ自然です)。
ですが、軌道(計画)があって修正するのと、そもそも軌道すら描いていないのとは全く別モノ!
だという事を肝に銘じておいてください!
これから音大を目指す人は、この文のまま理解していただければ、きっと役に立つと思います。
現役生や卒業生の方は、自分が入学前、または在学中、どんな思考だったかを考えてみてください。
これからどのように考えて行動していけば良いかが、きっと見えてくるのではないでしょうか。
今回は、音楽の道を目指す中学生や高校生に向けてのアドバイスでした。
次回は、今回お話しした両者が音大に進学した場合、どのように学生時代の差が出るかを見ていきます。
次回記事:『生き残る人の音大時代、消えゆく人の音大時代』
前回記事:『音楽は“ビジネス”だ』
僕は中1の時、吹奏楽部でトロンボーンを始め、中2でプロを志し、クラシックのトロンボーンのレッスンに通い始めました。
高校でもクラシックの勉強をし、芸大を目指していましたが、だんだんジャズやポップスに興味がわき、結果、音大には行かず、高卒でバイトを始め、個人的にジャズのトロンボーンの先生に師事、一般大学のビッグバンドサークルに潜り込み、経験を積んだ後、19歳でプロになりました。
その後、さまざまなライブ、某有名テーマパークでのパフォーマー、海外生活、Jポップアーティストのツアーサポートや、CD、CMのレコーディング、作編曲の仕事などをしながら、今年(2017年現在)で20年近い音楽生活になります。
参考:https://mtfujimusic.com/about/#modal
僕の世代で周りを見渡しても、音大にも一般大にも専門学校にも行かず、高卒でプロ活動をしているミュージシャンは一人もいません。それだけに「奇跡だね!」と言われたりします。
もちろん奇跡と言っても過言ではない、人生を変えるような素晴らしい出会い、経験もたくさんあったので、事実と言えば事実ですが、一つ自信をもって言えるのは、自分から前向きに動いた結果だ!という事です。具体的にはどういう事でしょうか?
大学の先輩後輩という関係から仕事がくるというルートがない分、ライブハウスに通い詰めて、自分のあこがれのプレイヤーと繋がりを作ったり、通常大学のカリキュラムで教えてもらえる事を自分で勉強したりと、人より自発的に動いていた自負はあります。
音楽で仕事をするためには演奏技術以外の能力も必要になります。たとえば、人を教える能力だったり、作編曲の能力、制作のためのコンピューターの技術などですね。
それ以外にも、これはある意味社会人としては当たり前の事ですが、コミュニケーション能力や、時間を守ったりという基本的な能力も必要になります。こういった事をバランス良く伸ばす努力をしていました。
これは厳しい現実ですが、演奏(のみ)をメインの職業とした場合、オーケストラのオーディションにでも受からない限り、いわゆる会社員のような待遇で給料をもらう事は出来ません。そんなオーケストラは、何年かに一度しか空きがない事もあり、仮に空いたとしても、そこに100人以上のプレイヤーがオーディションを受けに来るのです。
結果、ほとんどの人がフリーランスとなり、言い方を換えれば、自分が経営者、個人事業主となるわけです!
つまり、あなたは「社長」であり、芸能界で言えば「マネージャー」がやるようなスケジュール管理をし、時には「営業」をやり、自主コンサートの際には、チラシを作ったり、メールでDMを送るというような「広告宣伝部」がやるような仕事をこなし、そのうえで「作編曲や演奏」もするのです。こんなふうに考えた事がありますか?
こんなの音楽家、芸術家ではない!と思う方もいるかもしれません。ですが、「演奏だけで食える」ミュージシャンというのはほんのひと握りです。あなたはそんなひと握りの才能の持ち主だと胸を張って言いきる事が出来ますか? 本当に成功したければ、起業家、ビジネスマンになりましょう!
僕の友人や音大生に聞いてみても、音大では演奏技術を学ぶ事は出来ますが、残念ながらビジネスの部分を教えてくれる所はないようですね。実はこれが大きな問題なのです。
これはアメリカのデータですが、起業した会社の約80%が、5年以内に潰れると言われています。
この数字は、日本の音楽業界にも当てはまるのではないでしょうか?
たとえば、あなたの音大の先輩を思い浮かべてください。卒業して5年で、実家暮らしやバイトをせずに自立している人はどのくらいいますか? 学校にもよるとは思いますが、おそらく20%いるかいないかでしょう。先輩を見渡さなくても、これを読んでくださっているあなたが、残念ながら、既に80%の潰れる側にいるかもしれませんね(正直、もっと厳しい数字かもしれません)。
僕の同業者を見渡しても、ある意味楽器がうまいのは当たり前で、成功している人は100%に近いほど、起業家としてのバランスが取れています。逆に、楽器はうまいけど、いまだバイト生活から抜け出せないような人は、むしろ演奏以外の能力に問題があったり、考え方(意識)が良くない傾向にあります。
演奏以外の部分は、ちょっとした心構えの変化だけで改善出来る事もあります。ただ知らないだけなんですからね。ここで損をするのはもったいないと思いませんか?
僕は決して才能のあるひと握りのミュージシャンではありません。高卒というハンディもあり、このような事を人より考えざるを得ない(工夫しなければ生き残れない)状況にありました。
ですが、結果、ハンディはハンディでなくなり、むしろ「セールスポイント」になっています。前回のブログにも書いたとおり、正解は一つではありませんが、少しでも成功のヒントになるノウハウを皆さんにお伝えしていこうと思っています!
次回記事:『“音大に行きたい”と“プロになりたい”は違う』
前回記事:『このブログに“正解”は書いていません!』
今回は、このブログを読んでいただくうえでの「大前提」(約束事)を書いておきたいと思います。
それは、このブログに書いてある内容は「正解」ではないという事。
僕の経験や得た情報の中から、なるべく多くの方に「役に立つ」と思われる事を書いていきますが、それらが万人に通用する保証はありません。
「マニュアル」と「ノウハウ」は違う
「マニュアル」はいわゆる設計図で、そのとおり組み立てていけば、スマホやパソコンのように、全く同じ製品を作る事が出来ます。
人の生き方がそんなに単純でない事は皆さんに理解していただけると思います。マニュアルどおりみんな同じだったら、それはロボットと同じですよね。
「ノウハウ」は、ある人にはとてもマッチするかもしれないけれど、またある人には全く意味のない内容の可能性があります。
それを判断出来るのは、ほかの誰でもない、「自分」しかいません。あなたの親でも親友でもありません。
このブログに限った話ではありませんが、何かの情報を得た時、鵜呑みにするのではなく、「この情報は自分にとって有益なのか、正しいのか?」を常に考える習慣を付けたほうが良いと思います。
日本の義務教育は、教科書に書いてある事が絶対正解と言わんばかりに、先生の言う事はすべて正しく、正解を一つに絞る傾向があるので、悪い意味で「信じやすい子」、「自分で物事を考えない子」が育ちやすいと言えます。まさに「マニュアルどおり」の子が育つ要因ですね。
義務教育の年齢では、ある程度仕方ないかもしれませんが、高校生や大学生、ましてやそれ以上になったら、もっと「自分の意思」をもたなければいけません。
※ちなみに欧米の教育では、先生は生徒に対し「この正解がわかる人?」でなく、「この問題についてどう思う?」というような問いかけをするのが一般的だそうです。これにより、小さいころから「答は一つではないという考え方」や「考える力そのもの」が身に付くと言われています。
僕の友人で、音大の声楽科に在籍していた子がいて、彼女は在学中からポップスシンガーを夢見て、既にその活動もしていました。ですが、声楽の先生からは「クラシック以外やるな」と言われ、学園祭などでポップスを歌っていると怒られたそうです。
この先生の言っている事、正しいと思いますか?
彼女がクラシックの世界に進みたいと思っているならまだしも、将来はポップス方面に進みたいという明確なビジョンがあるのに、それを頭ごなしに否定する。これは、先生自身の価値観を押し付けているだけです。
声楽科ならオペラ歌手、管弦楽ならオーケストラの奏者のような、クラシックだけで食べていける演奏家になれる人が生徒さん全体の何パーセントいるでしょうか? この先生は、在学中クラシックの勉強だけに専念させて、将来、必ずクラシックの道で成功させてあげる自信があるのでしょうか?
ちなみに、前述したポップスシンガーの友人は、先生に言われたとおりでなく、自分の道を貫いていたので、今もその道で(シンガーやスタジオミュージシャンとして)活動出来ています。きちんと「自分」をもっていた(信じていた)からこそですよね(僕が言いたいのは、音大の先生の批判ではありませんので、誤解のないようにお願いします)。
藤井のブログにこう書いてあったのに、信じたら失敗したとか、親の言う事を聞いたら失敗したとか、音大の先生の言う事を聞いたら奏法がおかしくなったとか、仕事に就けなかったというのは「言い訳」であって、結果、「自分の責任」でしかありません。
ある意味「他人が敷いてくれたレールの上」を歩くのは簡単なんですが、音楽業界は厳しい競争社会です。そんな事をやっていては成功しません。
「自分が将来どうなりたいのか」、明確なビジョンをもち、そのための適切な行動を取れている人が勝ちます。もちろんビジョンは変わってもかまいません。でも、「今」何がしたいかはハッキリさせておいたほうが良いと思います。
そうすれば、僕のブログを読んでも、自分に役立つ事だけを吸収したり、自分の状況に置き換えて考える事が出来るでしょう。
何をするにも自己責任、他人のせいにしてはいけません。
次回記事:『音楽は“ビジネス”だ!』
前回記事:『“ネクストステージ”へ羽ばたく若い音楽家の皆さんへ』
このたび、NPO法人ネクストステージ・プランニング(以下NSP)の音楽ディレクターに就任いたしました、藤井裕樹(フジイヒロキ)と申します。
NSPのホームページでは、音楽の道を目指す中高生や音大生、若い音楽家に向けた当ブログの執筆を担当させていただいています。
初回ですので、簡単に自己紹介をさせていただきますね。
藤井裕樹(フジイヒロキ)って何者?!
僕は中1の時、吹奏楽部でトロンボーンを始めました。
その後、紆余曲折あり(この部分に関しては、今後触れていく予定です)、現在はジャズなどのポピュラーミュージックを中心に、さまざまな現場での演奏活動や作編曲、講師としての活動などをさせていただいています。
また、東日本大震災後は、チャリティーコンサートなど、音楽を通した被災地の支援活動や、フィリピンの貧困地域の子どもたちの支援といったボランティア活動も行っています。
今年38歳(2017年現在)。
大学に進学せず、19歳でプロになった(初めてお金をいただいて仕事をさせてもらった)ので、20年近いキャリアになります。
プロになった後に短期間、アメリカに留学しましたが、最終学歴は高卒です。
心は今も10代のままのつもりなんですが(笑)、現実にはアラフォーと呼ばれる歳になってしまいました。
音大では教わらない、音楽家に必要な音楽以外の事
10代、20代で僕がお世話になったのは、ベテランの方だけでなく、当時30代、つまり、今の僕くらいの歳の素晴らしいプレイヤーがたくさんいらっしゃいました。
そんな方々から「音楽の技術」だけでなく、「いろいろなアドバイス」をいただいたからこそ、僕のような高卒の凡人が、何とかこの厳しい業界で20年近くもやってこられたのだと思います。
音楽以外の部分でつまずく音大出身者
自分自身、一生勉強は続くと思っていますが、レッスンなどで教える立場のお仕事もさせていただいていますし、現場で20代のミュージシャンと一緒になる機会も増えてきました。
そんな彼らを見ていると、すごく真剣に将来の事で悩んでいて、僕なんかのアドバイスでも必要としてくれる時があります。
20代前半で現場に呼ばれるミュージシャンの多くはとても優秀で、こちらが刺激を受ける事も少なくないのです。
しかし一方で「こういうところを気を付ければもっと仕事がつながるのに、惜しいな」と感じてしまう人がけっこういるのも事実です。
“こういうところ”というのは、ほとんどの場合、演奏以外の話なので「音大では奏法以外の事をほとんど教わらないのでは?」という気がしてしまいます。
実際、周りでプロとして活動している同業者や、音大生に意見を求めると、それは限りなく事実に近いようですね。
もちろん、一般常識などは音大以前、家庭内でのしつけや義務教育レベルの問題なのかもしれません。
しかし、一人の音楽家として自立するためには、時に音楽以外の内容のほうが大切になる場合が多くあります。
未成年を含む、社会に出る前の生徒を預かっている以上、音大は楽器の技術だけでなく、人として一人前にする手助けがもう少しあっても良いのかもしれません。
「自己プロデュース能力」を身に付けよう
しつけはともかく、特に「自己プロデュース能力」というものはもっと教えてあげたほうが良いように思いますね。
なぜなら、ほとんどの人は卒業後「フリーランス」になり、自分一人で人生を切り開いていかないといけないからです。
凡人が生き残る術
音大に行った人の多くは、オーケストラのプレイヤーを目指したり、ピアノや声楽ではソリストを夢見ている人が多いかもしれません。
でも、そんな希望どおりの人生を歩んでいる人が周りにどれだけ存在しますか?
才能があっても生き残るのはひと握りー自分は凡人だと思うあなたへ
これは、プロ野球やサッカー、芸能界でも同じ事です。
たとえば、甲子園で優勝するようなチームでも、プロに入って活躍するのはほんのひと握りです。
Jリーグに入れたとしても、本田圭佑選手のように、日本代表やヨーロッパで活躍出来る選手になるのはさらに狭き門です。
M-1グランプリで優勝しても、ほとんどテレビで見かけないお笑い芸人さんもけっこういますよね。
自分には才能があって、将来が約束されていると思う人は、このブログを読む必要はありません。
僕は間違いなく自分を「凡人」だと思っているのですが、凡人には凡人の生き方があります。
凡人のうえ、大卒の肩書きもなかったので、人より工夫や努力をしないと生き残れなかったのです。
自分は凡人だと思う方、安心してください。
世の中は才能のある人のみがうまく世間を渡っていけるほど単純でも、不平等でもありません。
必ずそれを埋める方法があるのです。
スポーツ界に学ぶ、非凡なる凡人
たとえばイチロー選手。
彼は高校時代、甲子園には出場していたものの当時はそんなに注目されていたわけではありませんでした。
プロへもドラフト4位での入団です。
1~3位が誰だったかは知りませんが(つまりもっと期待された選手がいたという事)、その3人よりもはるかにビッグになった事は誰もが認める事実でしょう。
彼の場合は天才で、開花が少し遅かっただけなのかな?とも思ってしまいますが、そこは本人にしかわからないと言うか、おそらく人知れぬ努力があったに違いありません。
サッカー日本代表の長友佑都選手は大学時代、補欠でスタンドの応援団として太鼓を叩いていたそうです。
キャプテンの長谷部誠選手も、自分はJリーグのチーム内でも目立った存在ではなかったと著書で語っています。
彼らの現在の活躍を見ていると、ちょっと勇気がわいてきませんか?
実はこのタイプのほうが、プロでは成功例が多いように思います。
後進につなぎたい、消える理由と生き残る術
実際、僕より楽器の技術が高く、音大卒という肩書きもあったけど、消えていった人はたくさんいます。
その人たちがなぜ消えていったのか、だいたい説明がつきますね。
知りたくないですか?
ところが残念ながら、音楽家には「能ある鷹は爪を隠す」タイプが多いのか、成功のノウハウはほとんど世の中に出てこないんですよね。
それは、今の音楽業界が「自分の事で精一杯」という人が圧倒的に多いからではないでしょうか。
わざわざライバルを増やす必要はないですからね。(スポーツのように白黒がハッキリしない性質もあるかもわかりませんが)
ですが、僕自身は、親が子どもを育てるのと同じで、先に生まれた人間が後進のために何かを残す事は「義務」に近いと思っています。
これがないと社会が崩壊してしまうんですよ。
ライバルが多い事は本来、自分のスキルアップのうえでは必要な事です。
周囲のレベルや意識が上がる事で、自分自身もより成長出来るという事を忘れてはいけません。
結果、業界全体が活性化され、将来自分に返ってくるのです。
僕が生き残ったノウハウをすべて書きます
僕は自分が「成功した」とまでは思っていませんが、とりあえず20年「生き残った」「消えなかった」ノウハウは、このブログですべて書こうと思っています。
そんなものは墓場までもっていけないですからね。
それで僕の仕事をおびやかす人が出てきたら望むところです(笑)。
このブログを通して、読者の方が一人でも多く「ネクストステージ」に進むきっかけを作る事が出来れば、僕はとても嬉しいです!
それでは、よろしくお願いいたします!