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音楽家だからこそ知っておきたいクレーム対応 | NSU経済・経営学部 Vol.10

NSU経済・経営学部は今回で最終回となります。最後のテーマは「クレーム対応」です。

皆さんは演奏や指導の現場でクレームを付けられた事がありますか?もしくは、何か商品を買う際にクレームを付けた事はありますか?

ビジネスをやっていれば、ある意味クレームは避けては通れない問題かもしれません。

クレームとは何か?

クレーム(claim)とは、「購入した商品・サービスに意見や不満をもつ顧客が、それを提供した企業などに対して問題点を指摘したり、苦情を述べたり、損害賠償を要求したりする行為。または、その内容の事」です。

似たような意味の言葉で「苦情」「不平」「愚痴」を意味するコンプレイン(complain)という言葉がありますが、こちらは日本ではあまり耳馴染みではないですね。

皆さんも日常生活で、一度はクレームを付けた事があるのではないでしょうか。

例えば通販サイトで何かを注文したら、商品が壊れていた。(服などのサイズや色が)違っていた。もしくは頼んだ商品ではなかった。飲食店で頼んだ商品が来なかった(遅かった)。虫や髪の毛が混入していたなど、さまざまな場面が想像出来ますよね。

通販であれば、「この商品をいくらで買います」とこちらが意思表示し、大抵の場合はクレジットカードや銀行振込などで「事前決済」をします。つまり、「売買の契約を結んでいる」という事になります。

飲食店の場合、事前決済ではなく、店を出る際にお金を払いますが、「この商品を頼んで(飲み食いして)後でお金を払います」という売買契約をしているのです。

新幹線は、在来線よりも快適で早いから、その分高い「売買契約」が成立します(大幅な遅延になると、払い戻しされる場合もあります)。

売買契約というのは、不動産賃貸のように契約書を書く場合だけでなく、身近で常に行われているのです。クレームは、この売買契約(約束)に対して、商品やサービスの質が劣っていた場合に起こりうるという事になりますね。

音楽家に起きるクレームは?

それでは、我々音楽家がクレームを付けられるのはどういったシチュエーションか考えてみましょう。

音楽家も、通販や飲食店、乗り物と同じく「サービス業」なので、提供する商品やサービスの質が劣っていた場合に起きる可能性があります。

・お客様の想像より演奏技術が低かった場合

お恥ずかしい話なのですが、NSPは僕がディレクターに就任する前は登録をすれば誰でもオーディションもなく仕事を受ける事が出来たので、「こういった案件があるのでやりたい人、連絡をください」と一斉メールし、最初に返信のあった人に現場に行ってもらっていたそうです。

皆さんの周りでも想像が付くかもしれませんが、音大生と言ってもいわゆる「ピンキリ」で、中には申し訳ないけど、お世辞にも上手いとは言えない人もいるわけです。そんな人は暇なので、真っ先に連絡が来る。なんの調査もなく早い者勝ちで現場に出してしまい、「すみません、素人が聴いてもちょっとこの演奏はないんじゃないでしょうか?」などと言ったクレームが来てしまうのです。

ちなみに現在はYouTubeでの事前審査を行うか、もしくは口コミで信頼出来る人から紹介してもらったりするので、このような事は起きていません。

音楽家募集・登録 | NPO法人ネクストステージ・プランニング

・社会的なルール違反があった場合

一番分かりやすいのは「遅刻」ですね。ごくたまに、体調不良や電車の遅延でリハーサルに1人間に合っていないといった事態があります。最近の台風などのような大幅なダイヤの乱れは許される場合もありますが、クライアント様はリハーサルからの拘束分も含めお金を払ってくださっているのですから、事前の約束と違う時間に来れば(契約と違えば)、クレームとなり、最悪の場合「約束した金額はお支払い出来ません」となってしまいますね(本番に穴を開けた場合はこの可能性が高いでしょう)。

時間、期限を守る/電話、メールなどできちんと連絡が取れる『フリーランスで成功するための“10の秘訣”』 Vol.3

レッスンの仕事の場合、大手の音楽教室は月謝に「設備使用料」などを含んでいる場合があるので、エアコンがきかない、蛍光灯が切れている、トイレが汚いといった環境要因でもクレームになる可能性があります。

講師側は、演奏以上に言葉を使うので、言葉遣いが汚いといったクレームも考えられます。

音楽家に不可欠な日本語教育 | NSU教育学部 Vol.10

クレームは必要な場合もある

誰もクレームを付けられて嬉しい人はいないのですが、悪い事ばかりではありません。

クレームを付ける人の中には、とても的確、適切なご指摘をされる方もいらっしゃるので、そういった方のご意見を真摯に受け止め、改善していく事で、サービスの質が向上し、あなた自身のスキルアップや収入のアップにも繋がります。

例えば、前述の音楽教室ですが、実際にエアコンがきかない、蛍光灯が切れている、トイレが汚いとクレームが来たとします。

設備費をきちんとこれらのメンテナンスに充て、エアコンは常に手入れされて快適な温度になり、蛍光灯が切れて暗いという事はなくなり、トイレも清潔になれば、当然生徒さんの印象、居心地は良くなります。そうなれば、退会する人が減り、結果、教室は増収が見込める事になります。

飲食店でも、「温かいはずのスープがぬるい」「昨日と今日で味が違う(ムラがある)」などのクレームがあったとして、真摯に受け止めて改善すれば、お店は繁盛店になるかもしれませんよね。

音楽家の場合でも、さすがに面と向かってお客様に「下手くそ!」と言われた事がある人は少ないと思いますが、「プロなんだからもう少し身だしなみ(ルックス)に気を付けたらどうですか?」などと言われ、改善することが出来れば、もう一歩上のステージにいける音楽家になっていくかもしれません。

音楽の仕事をするときはパッケージとサービスについて考えよう | NSU経済・経営学部 Vol.9

クレームの裏を読む

最近はインターネットの普及で、メールやSNSで気軽に(面と向かってではなかったり、匿名だったり)クレームを付けられるようになってしまったので、昔よりは増加傾向にあるのは間違いないですが、特に日本は、「あまり自分の意見をハッキリ伝える文化がない」ので、これでも欧米などに比べるとクレームは少ない気がします。

何が言いたいかと言うと、「実はクレームを言わなかった人(もしくは買わなかった人)の意見のほうが必要な情報の場合がある」と言う事です。

不平、不満があっても、本当の事を言わない人が多いからですね。

例えば、あなたの家の近くにあるラーメン屋に入り、頼んだラーメンが美味しくなかったとします。「マズイ!」までいかなければ(お腹が空いていれば)とりあえず、スープは残しても麺や具は全部食べたりしますよね。

ラーメン屋くらいの単価であれば、店を出る際に、「すみません、美味しくなかったんですけど、お金返してください」とクレームを付ける人、ほとんどいないですよね。皆さんの多くは、「美味しくなかった」と感じ、次から行かない(その商品を買わない)だけです。

このお店が「料金は適正なのに、なぜリピーターさんが少ないんだろう?もしかして美味しくないのかな?」と考え、味の改良に取り組めば良いのですが、そのままではいずれ潰れる事になります。

音楽家の場合も、(もしも本当に技術が足りなかったとして)直接「下手くそ!」とは言われなくても、「なぜ自分には仕事が来ないんだろう?(もしくは2回目に呼ばれないんだろう?)」と考え、練習を頑張れば売れっ子ミュージシャンになれるかもしれないですよね。

音楽教室でも、「スケジュールが合わなくなった」など、当たり障りのない理由を言って退会していく人が多いのですが、実は「この先生、教え方がうまくない、面白くない」など、別の理由が隠れている場合もあります。自己分析がきちんと出来ていないと、「生徒さんはみんな忙しんだな、まあ仕方ないか」で終わってしまい、この先生は成長せず、収入も不安定なままという事態に陥ってしまいます。

謙虚さ、感謝がある、謝罪が出来る『フリーランスで成功するための“10の秘訣”』 Vol.1

クレームを全て受け入れてはいけない

ここまで読んだあなたは、「クレームはありがたい、誠心誠意向き合って、改善しよう」とか「クレームが来なくても裏を読んで読んで読みまくるぞ」と感じたかもしれませんね。

よく聞く言葉で「クレーマー」というのがありますが、日本はクレームは少ないほうだと言っても、かなり自己中心的で、的確でないクレームを付ける人も一定数いるのは間違いないです。

例えば「○○社のスマホを買ったらすぐに壊れた」というクレームがあったとします。

「では、壊れにくいように丈夫なスマホにしよう」と考え、製品を改良したとします。でも、その結果、以前よりもかなり重くなったり、デザイン性が薄れてしまった場合、余計に売れなくなる可能性があります。

働き方改革の影響もあり、アルバイトの最低賃金は上がり続けていますが、仮に経営者がきちんと労働に見合った時給を支払っているのに、従業員がろくに仕事もしないにも関わらず「時給が安い」とクレームを付け、真に受けて上げ続けてしまったら、お店はどうなりますか?

それにより、サービスの質が上がって儲かるならともかく、以前と何も変わらなければお店の利益は減り、最悪の場合は潰れてしまいますよね。

音楽教室の場合、4人のグループレッスンだったとして、その中の1人が「曲が簡単過ぎて面白くないので、もう少し難易度を上げてくれ」とクレームを付けたとします。もしも残りの3人はちょうど良いレベルだと感じているのに、難易度を上げてしまったら、この残りの3人のほうが辞めてしまう可能性もあります。

このような場合はクレームを聞き入れず、「すみません、他の方にはちょうどいいようなので、合わせていただくか、他の時間帯の少しレベルの高いクラスに移っていただくか、個人レッスンを受講していただけないでしょうか」などと、提案、交渉をする必要がありますよね。

それでも納得出来ない場合、この生徒さんは退会するかもしれませんが、クレームを聞き入れ、残りの3人が辞めてしまうよりは損害が少ないわけです。

レッスン料に関しても、適正金額なのに「高い」とクレームを付けられ、下げる一方では生活出来なくなってしまいます。僕も時々、「その金額でそこまでのサービスは出来ません」とハッキリ伝える事もありますよ。

クレームを付ける人というのは「お客様は神様だ、何を言っても良い」と思っています。

ですが、この「お客様は神様」という言葉は、本来お客様のほうが使う言葉ではなく、良いお客様に対してお店や企業のほうが感謝を込めて使う言葉だと僕は思んですよね。

まとめになりますが、このように、クレームから学ぶ事はとてもたくさんあるので、今回の記事を参考に、あなたの人としてのスキル、音楽家としてのスキルや収入のアップに繋げてほしいと思います。

クレーム対応がうまくなるためには、この『NSU経済・経営学部』のシリーズでお伝えしてきた知識が必要不可欠になります。

個人事業主として、(Vol.1でも書いた)「お金を稼ぐ意識」を高くもち、演奏以外のノウハウをしっかりと身に付ける事により、職業音楽家として成功する確率は格段に向上するでしょう。

音楽家は今すぐお金を稼ぐ意識を見直そう | NSU経済・経営学部 Vol.1

ブログ休止のお知らせ

さて、最後にもう一つお知らせですが、NPO法人ネクストステージ・プロジェクト時代の2017年の2月から連載を続けてきたこの「音楽家のためのサバイバル術」ですが、今回をもって一旦休止とさせていただこうと思っています。

若い音楽家が特に音楽業界で自立するために必要なノウハウは、だいたい伝えられたのではないかと思っています。無理やり続けて量を増やしていけば良いというものでもありません。

サービスというのは「量より質」です(場合によりますが)。例えばビジネス本や自己啓発本も、たくさん読めばその人の人生が変わるのではなくて、僕は「何かを読んで(セミナーを受けてでも良いのですが)、『本当に実行した人』が成功していると感じています。

このブログを読んで何かを得られると感じた人は、まずは「信じて行動してみる」事をオススメします!(ナイキのキャッチコピーの、まさに「Just Do It.」です!)

僕もまだまだ全ての事において有言実行ではないのですが、「自分の意思で行動出来る人」を目指したいですね。

このようなブログを書いていると、どうしても偉そうに見えてしまうし(笑)、ディレクターなどの肩書きがあると、なんか凄い人なのかな?と思われたりしますが、実際は僕もまだまだ未熟で、伸びしろが多いと思っています。

NSPでも、若い音楽家やスタッフからもたくさん学ばせてもらっています。
これからも、年齢や立場、性別、国籍などに関係なく、全ての人から学び、共存し、成長していきたいと思っています。

ちなみに、近々このブログを元にした「音大生のためのもう一つのエチュード」という本も出版される予定ですので、見かけたらぜひ手に取ってみてください。

また、カウンセリングも行っていますので、僕から直接アドバイスをもらってみたい、相談に乗ってほしいという方はNSPまでご連絡をいただければと思います。

カウンセリングお申し込みフォーム | NPO法人ネクストステージ・プランニング

また内容を追記したくなったら不定期で更新するかもしれませんが、ひとまずご購読ありがとうございました!

前回記事:音楽の仕事をするときはパッケージとサービスについて考えよう | NSU経済・経営学部 Vol.9

突然ですが皆さんは、「一風堂」というラーメン屋さんをご存知でしょうか?

九州の豚骨ラーメンチェーンですが、全国展開、海外展開もしている有名店なので、一度は食べに行った事があるかもしれませんね。

実は、なかなか面白いニュースを見つけたんです!

2019年の夏から、通常一杯750円から1000円程度で提供しているラーメンを、外資系高級ホテル「ザ・ペニンシュラ東京」のルームサービスとして、なんと一杯3400円で提供されているそうです!

今回のブログのテーマは「パッケージとサービス」です。

前回、前々回の「ターゲット」や「5W1H」の復習も兼ね、とても良い実例ではないかと思い、今回取り上げてみました。

参考
音楽家に必要なターゲット戦略を身につけてますか? | NSU経済・経営学部 Vol.7
音楽家こそ5W1Hを用いたマーケティングを意識しよう | NSU経済・経営学部 Vol.8

パッケージの大切さ

まずは一風堂のオフィシャルページで、3400円のラーメンを見てみてください。皆さんはどう感じましたか?

【一風堂】2019年夏、「ザ・ペニンシュラ東京」のルームサービスにてラーメンを提供開始

僕がまず凄いと感じたのは、「パッケージの美しさ」なんです。

本文にも書かれている宝石箱のような木箱。なんかこのトッピングだけでお酒が何杯も飲めてしまいそうです(笑)。

もちろん通常の店舗で出されているものと同じではないんですけど、パッケージを変えるだけで「明らかな高級感」がありますよね。

音楽家のために書いているブログで、僕が何を伝えたいかと言うと、「いかにルックス、外見が大切か、それによって得られる金額が変わってくるか」という事です。

例えば楽器ケース。初心者が使う入門用楽器と、プロが使う本格的な楽器では、明らかにパッケージが違いますよね。

「ケースなんてどうせ買い替えるから、あんまりコストをかけず、その分安くしてくれないかな」なんて思ったりもしますけど、やっぱり中身と外見は比例させないと売れない(高級感を出せない、安物と差別化出来ない)のではないでしょうか。

飲食店の食器や楽器ケースだけでなく、スーパーはビニール袋だけど、デパートはしっかりとした紙袋など、身近なところに実例がたくさんありますよね。

音楽家の場合、さらに僕が伝えたいのは、「あなたという商品をより良く見せるために、パッケージやルックスにも気を配りましょう」というお話。

若い音楽家だけではないかもしれませんが、クラシックやジャズの奏者は、Jポップなどに携わる奏者と比べ、服装に無頓着な人が多いように思います(あくまで僕の私感です)。

クラシックの奏者の場合、本番はタキシードやドレスを着るのでまだ良いですが、ジャズは私服の場合も多いので、あまりにもみすぼらしい「普段着」の人もいます(それが良さだと言う人もいますが…)。

音楽家はどうしても「楽器の技術」のみに意識が行きがちですけど、一風堂のように、器を変えれば普段1000円で提供しているものに3倍以上の価値を付けられると考えたら、少し気にかけてみようと思いませんか。

あなたは自分の知らないところで、パッケージのために自分の評価を下げている、もしくは上げられていないかもしれません。

サービスの重要性

一風堂の例ですが、オフィシャルの記事を読んでいただければ分かるように、3400円の値段を付けられているのはパッケージだけの問題ではないですよね。

重要なポイントは、ただラーメンを提供しているのではなく、「非日常を演出するサービス」を提供している点ではないでしょうか。

まずは、前々回のブログで取り上げた「ターゲット」ですが、「日本を訪れる(日本文化に興味のある)富裕層の外国人の宿泊客」という、明確な設定があります。
では、「5W1H」にも当てはめてみましょう。

What→一風堂のラーメン
Why→極上のホテルで非日常を味わってもらいたいから。世界の「IPPUDO」のラーメンをもっと多くの方に食べていただきたいから
Who→日本を訪れる(日本文化に興味のある)富裕層の外国人の宿泊客
When→11:00~23:00
Where→ザ・ペニンシュラ東京
How(Much)→3400円
How→通常店舗とは異なる木箱でトッピングを提供。ルームサービスとしてスタッフが直接客室を訪れ、お客様の目の前でスープを注ぐ,etc.

いかがですか?

我々音楽家も、飲食やホテル業界と同じ、「サービス業」ですよね。

ザ・ペニンシュラ東京ほど富裕層向けではないにしても、コンビニやファストフードと比べたら、やはり「非日常の提供」ではないかと僕は思っています。

サービスを提供する際のパッケージや演出に気を配れば、同じ演奏技量の人と比べ(もしかしたらそれ以下であっても)、高いお金を取る事が出来る可能性は十分にあります。

自主公演の際のチラシ(これも立派なパッケージです)、衣装や譜面カバーの統一、MCの内容、ステージでの立ち振る舞いなど、ザ・ペニンシュラ東京の一風堂から学ぶ事はたくさんあると思いますね。

そのほか、ディズニーリゾートのようなサービス、ホームページやSNSの見せ方(これもパッケージ、外見の一部です)などが上手な企業や芸能人など、身の回りに良いお手本(もちろん反面教師も)はたくさん転がっています。

音楽以外からも、日々の生活でたくさんの事を学んでください!

参考
『夢を実現させるために、最も大切な行動とは?』 Vol.2

次回へ続く→

次回記事:音楽家だからこそ知っておきたいクレーム対応 | NSU経済・経営学部 Vol.10
前回記事:音楽家こそ5W1Hを用いたマーケティングを意識しよう | NSU経済・経営学部 Vol.8

前回の記事では「ターゲット」について解説してきましたが、皆さんは意識出来ていたでしょうか?

今回は、よりターゲットを明確に絞るため、中学校の英語の授業でも習った「5W1H」を用いて、マーケティングを掘り下げていきます。

「5W1H」とは?

中学校の英語の授業でも習った「5W1H」、皆さんは覚えていますか?

「5W1H」とはWhat(なに)、Why(なぜ)、Who(だれ)、When(いつ)、Where(どこ)、How(どのように)を指し示す言葉です。

僕は中1の2学期辺りですでに英語で挫折したんですけど(笑)、さすがにこれくらいは記憶にありますね。

前回解説した「ターゲット」や「ペルソナマーケティング」は、この中で言うと「Who」の要素が強かったように思うのですが(だれが=どんな人物像か)、ここに残りの「4W1H」を加えると、より明確なマーケティングが出来ます。

では、「コンサートの開催、集客」を例にして見てみましょう。

What→ファミリーコンサートを開催する

Why→普段音楽を聴く機会が少ない人たちに生演奏を届けたいから

Who→子育て中のお母さんと子ども

When→日曜のお昼ごろ

Where→地域の公民館

How→その地域の保育園や幼稚園にチラシを貼らせてもらう、入場料は安めに設定する、その代わり地域の自治体から補助をもらう、子どもが椅子に座らずに聴く事が出来るマットを用意する、アンパンマンのような子ども向けの曲を用意する、コンサート全体の時間は短めにする,etc.

いかがでしょうか。

「こういうコンサートを成功させるには、こういう行動を取れば良い」、つまり、「目的と手段」が明確になっていくのが分かると思います。

参考
将来を考える際に目的と手段を区別できていますか? | NSU教育学部 Vol.1

音大受験でもやっていた「5W1H」

ちなみに皆さんは、音大受験の際にも「5W1H」を使えていたかもしれません。

What→音大に入る or プロの演奏家になる

Why→好きな音楽を仕事にしたいから

Who→とりあえず自分のため

When→(高1の人だったら)約2年後に受験

Where→東京藝大

How→藝大の教授のレッスンを受ける、聴音、ソルフェージュ、楽典、副科ピアノもレッスンを受ける

参考
“音大に行きたい”と“プロになりたい”は違う?
『夢を実現させるために、最も大切な行動とは?』 Vol.1

上記の参考記事でも取り上げたように、Whatの部分を「プロになる」に設定していた人と、「音大に入る」に設定していた人とでは、特に入学後の行動に大きな差が生まれてきますよね(How=手段の質が変わってきます)。

参考
音楽以外の能力を持ち合わせている/音楽が好きである、信念がある 『フリーランスで成功するための”10の秘訣”』Vol.7

こちらの「10. 音楽が好きである、信念がある」の中でも触れたように、プロとして生活していくためには「ただ音楽が好き」という程度のモチベーションでは続かないかもしれません。ですので、やはり僕は「Why」や「Who」の質を徐々に上げていく事をオススメしますね。

話が少し逸れましたが、コンサートやライブ、教室の集客も同じ事が言える訳で、その一つひとつをコツコツ積み重ねていく事が職業音楽家であり続ける事につながるとも言えそうです。

モチベーションの本当の意味は?

ちなみに日本でもよく使われる「モチベーション」という言葉を「やる気」と考えている人が多い気がしませんか。間違いではないのですが、僕は「動機(付け)」という訳し方のほうが正確だと考えています。

「あの人はモチベーションが足りない」=「やる気がない」ではなく、「動機付けが弱い」のではないでしょうか。

やる気を出すには動機が必要です。それが今回のテーマの中の「Why」や「Who」に当たる部分ではないかと思うのです。

音楽家である(あり続ける)事も、コンサートやライブの開催も、コンサートの集客も、「なぜやるのか」、「誰のためにやるのか」を明確にする事で(動機を明確にする事で)やる気が生まれ、行動の質が高まり、結果に結び付きやすくなると思います。

もちろんこれは、個人だけでなく、団体(運営)にも役立つ考え方です。多くの方がアンサンブルやユニットを結成、または所属して活動していると思いますが、動機や目的がはっきりしないリーダーだと、メンバーは「あのリーダーは何がしたいんだろう?」ってなりますよね(メンバーの脱退や解散にもつながりますよね)。

特に自主公演などは、収入よりもやり甲斐を求める場合も多いと思うので、チームとしてのモチベーションの維持はとても大切です。

そのうえで、やり甲斐だけでなく、しっかりとお金の面でも結果が後から着いてくるように、今回の「5W1H」を用いて、より精度の高いマーケティングをしていってほしいなと考えています。

次回へ続く→

次回記事:音楽の仕事をするときはパッケージとサービスについて考えよう | NSU経済・経営学部 Vol.9
前回記事:音楽家に必要なターゲット戦略を身につけてますか? | NSU経済・経営学部 Vol.7

前回記事の「音楽界のレッド・オーシャンとブルー・オーシャンって?」の最後は、

音楽業界のどの部分に身を置いて生きていくかは個人の自由ですが、自分はレッド・オーシャンの中にいる事を自覚し、そのうえで綿密な戦略を立てていくというしたたかさは、サバイバルを勝ち抜くためには必要不可欠な考え方になっていくと思います。

という言葉で締めくくりました。

『夢を実現させるために、最も大切な行動とは?』Vol.1

過去にはこんな記事も書いていますが、サバイバルとは「生存競争」であり、「戦い」なんですよね。

もちろん人が殺し合う戦争は僕も大嫌いで、あってはならない事だと思っていますが、ビジネスの世界は常に「戦い」である事は否定出来ません。

戦いで勝ち抜くためにはほとんどの場合(アメリカの大リーグのチームが日本の草野球チームと試合をするような圧倒的な実力差でもない限り)、綿密な戦略が必要だと言えるでしょう。

ターゲットを絞る

戦略を練るうえで僕がもっとも重要視しているのが「ターゲットを絞る事」です。前述の過去のブログでも説明した通り、ビジネスには戦争用語がたくさん使われています。

「ターゲット」もその一つで、日本語では「標的」や「攻撃目標」と訳されますよね。

戦争でなくても、オリンピックの射撃や、ダーツを思い浮かべてみてください。的の中心の得点が一番高くて、基本的にはそこを狙うシンプルな競技です。上手い下手はともかく、的の中心を狙わない人はいません(狙わないと勝てません)。

当然音楽ビジネスでも同じ事が言えるのですが、ターゲットを絞るという行為を意識していない人がとても多いように思います。

タピオカドリンクのターゲットは?

ターゲットの中で最も重要なのは「客層」ではないでしょうか。

成功しているビジネスは100%、的確な客層(ターゲット層)にアプローチ出来ています。

最近大ブームになっている「タピオカドリンク」のターゲット層はおそらく、10代、20代の女性ですよね。

ターゲット層を明確にすると、どこに出店するか、どんなパッケージにするか、単価はいくらに設定するかなどの戦略を立てやすくなります。

今はブーム後の便乗が増えたので「こんな所にもあるの?」という場所にも出店されていますが、最初は原宿や吉祥寺など、若い女性が多く集まるオシャレなエリアから始まりました。

お店の内装や商品のパッケージはインスタ映えするようになっていて、これはSNSを多く利用している世代とも一致します。

単価は500円程度。ブームやオシャレさでつい買ってしまう金額で、若者でも「その値段なら買わない」とはなりづらく、なおかつ安くもない絶妙な料金設定になっています(原価は10分の1の50円くらいで、実はボロ儲けらしいのですが…)。

もしも出店場所やパッケージや料金が全く同じだったとして、ターゲット層を中年の男性に設定していたとしたら、明らかにターゲット層を間違えているのが分かると思います。

逆に、ターゲット層はちゃんと若い女性を狙っているのに、出店場所がおばあちゃんの原宿と言われる巣鴨や地方の田舎町だったり、お店の内装が千利休の茶室みたいだったり、パッケージが日本茶の湯呑みたいだったり、1杯1000円くらいの高級品だったとしたら、これはターゲットでなく、戦略を間違えていると言えます。

こういう状態はまさに「的外れ」。この例えが射撃やダーツの「的」からきているのも合点がいきますよね。

タピオカドリンクのように、ターゲットの設定と戦略がうまくいけば、このような大ヒットの可能性があるのですが、音楽家の場合はどのように考えたら良いのでしょうか。

音楽家のターゲット戦略

以前うちのスタッフ(管楽器奏者)が作った個人のホームページをチェックした事があります。プロフィールや演奏会情報、レッスン案内、SNSへのリンクなど、必要なコンテンツは揃っていて、パッと見とてもよく出来たサイトでした。

ただ、一つ気になったのが「ターゲットの設定」なんです。その点を訪ねたところ、このスタッフは、

「いろんな人に演奏を聴いてもらいたいし、習いに来てもらいたい」

と答えました。

一見全く間違っていないんですけど、不特定多数の人をターゲットにするのは実は難しいんです。言い換えれば、これは不特定多数の人をターゲットにしているのではなく、単にターゲットを絞れていないだけで、前述の「的外れ」な状態とあまり変わりありません。

老若男女、不特定多数の人に愛されるためには、ディズニーランドやジブリ映画のような絶対的とも言える価値がないといけないと思いますが、それでも最初は「子ども向け」といったターゲットがあり、その子どもと一緒に親も楽しみ、子どもたちが大人になって、それをまた自分の子どもに伝えるようにして、長い年月をかけて幅広く広がっていったと考えられます(ターゲットを絞らないのとは全く意味が違います)。

タピオカドリンクもそうですよね。若い女性がブームの火付け役になった事で、彼氏や男友達も一緒に頼んだり、あまりにもブームなのでターゲット層でない人も試しに買ってみた事で広がっていったはずです。つまり、

漠然と「いろんな人に演奏を聴いてもらいたいし、習いに来てもらいたい」と考えるより、最初はターゲットを絞ったほうが結果的にうまくいく可能性が高いのです。

アーティスト色が前面に出ているページでは、おそらくレッスン募集はかすんで見えるし、逆に、アーティストとして演奏をメインでやっていきたいのであれば、レッスン募集は載せないで、コンサートやライブ動画を1番目立たせたほうが良いかもしれません。

「二兎追うものは一兎も得ず」ということわざもありますが、「この人、何がやりたいんだろう?」とお客様に思われてしまうコンテンツでは、結果集客がうまくいかない可能性が高いです。

僕の場合、演奏の仕事はネット経由でなく、すでに繋がっている人脈で直接電話やメールで入ってくる事が多かったので、ホームページは「音楽教室」という見せ方に特化していました。

教室の特徴 | Mt. Fuji Music
https://mtfujimusic.com/lesson/

最近はまたターゲットや戦略が変わり、リニューアルしているので、以前とはだいぶ違うのですが、現状のものも、少なくとも僕が若い女性や子どもをターゲットにしていないのは分かると思います。

「子どものための音楽教室」であれば、当然写真は子どもが楽しく演奏しているものを使用したり、文章は、実際にお金を払ってくださる親御さんに信頼されやすい内容を意識すると思いますね。

「女性向け」であれば、ページ全体の色合いを、ピンクやパステルカラーを基調にするかもしれません。ターゲットが漠然としていると、このような戦略の立てようがないのです。

ビールメーカーのペルソナマーケティング

もう一つ、これはビールメーカーの例ですが、「ヤッホーブルーイング」さんという会社をご存知でしょうか?ビールと言えばキリンの一番搾りやアサヒのスーパードライなどが有名ですよね。ビール業界もまさにレッド・オーシャンで、キリン、アサヒ、サントリー、サッポロなどの大手が全体のシェアの99%を締めており、残りの1%をその他のクラフトビールで争っているらしいです。

「ヤッホーブルーイング」さんは、あえて大手がターゲット層にしていない、「ビールを飲まない女性」をターゲットにし、そういった方が飲みやすい、一番搾りやスーパードライなどとは全くコンセプトの違うビールを作って成功しました。さらに凄いのは、ターゲットをまるで実在する人物のように具体的に設定した点です。

・30歳前後の女性
・責任ある仕事をしているOL
・住んでいる場所は東横線、日比谷線沿線(駅は中目黒、自由が丘)
・休日は朝からヨガに通う
・独身又は既婚で子どもはいない
・お酒や美味しいものが好き
・ファッションなどのこだわりが強い

こんな感じです(このような具体的な設定をする事を「ペルソナマーケティング」と言います)。

これらを元に、料金や売る場所などを綿密に計算していきます。

商品名も「よなよなエール」、「水曜日のネコ」、「インドの青鬼」、「僕、ビール、君、ビール」など、とてもユニークで、パッケージデザインも明らかに大手の王道とは違います。

ですが、ここまで徹底すると、お客様が付くんですね。この会社がキリンやアサヒと真っ向勝負をしていたら、ここまでうまくいかなかった可能性が高いでしょう。僕はビールが好きで、普段はエビスやサントリープレミアムモルツが多いですが、飽きてきたり、食べる料理によっては「よなよなエール」、「水曜日のネコ」などを買うようになりました(結果ターゲット層でない人も買うようになる例です)。

音楽家の場合でも、有名な大手教室とは違うターゲット層を狙い、それにあった生徒さんの人物像をイメージ(ペルソナマーケティング)出来れば、成功の可能性が上がるかもしれません。

もちろん音楽教室だけではなく、コンサートやライブの集客にも役立つ考え方です。

皆さんも、ホームページやSNSでの集客がうまくいっていないと感じるなら、一度「ターゲット」を明確に出来ているか見直してみましょう。良くないのは「闇雲に何も考えず、的にダーツを投げ続ける行為」。

すぐにうまくいくとは限りませんが「ターゲット→戦略」という順番で物事を考えていれば、うまくいかない場合はターゲットを変えたり、戦略を変えれば良いだけの話なんです。それをひたすら繰り返す。このような「トライアンドエラー」はコンビニなどの大手でも、常にやっている事です。

ビジネス的なマーケティングの視点をもち、より納得、充実した音楽活動が出来るように工夫してみてください!

次回へ続く→

次回記事:音楽家こそ5W1Hを用いたマーケティングを意識しよう | NSU経済・経営学部 Vol.8
前回記事:音楽界のレッド・オーシャンとブルー・オーシャンって? | NSU経済・経営学部 Vol.6

今年はうっとうしい梅雨が長く、明けたと思えば猛暑。体調管理が難しいですね。
僕は普段、ほとんど病気をしないのですが(3,4年、人間ドック以外で病院に行った記憶がありません)、そんな僕でも珍しく不安定です。

自己管理が出来ている『フリーランスで成功するための“10の秘訣”』 Vol.2

この記事にも書いた自己管理(体調管理)は、代わりのきかないフリーランスではとても重要ですので、皆さんも日々気を付けてくださいね!

さて、そろそろ本題に入りますが、皆さんはこの夏、海に行きましたか?

「夏といえば海!」という人もいれば、全然関心のないインドア派の人もいるかと思いますが(僕はこちら…笑)、ビジネス用語にも「海」にまつわるものがあるのをご存知でしょうか。

それが今回のテーマの「レッド・オーシャンとブルー・オーシャン」です。

レッド・オーシャンとブルー・オーシャンって何?

これらはビジネスの市場を海にたとえた言葉ですが、まずはざっくりと両者を説明してみましょう。ウィキペディア先生によると、

レッド・オーシャン:赤い海、血で血を洗う競争の激しい領域

ブルー・オーシャン:青い海、競争相手のいない領域

とあります。血で血を洗うって、怖すぎます。もうちょっと良い表現はなかったんでしょうか(笑)。

ただ、「青い海」が穏やかな印象なのに対して、「赤い海」がなんだか厳しい世界をイメージする感じは伝わってきますよね…

レッド・オーシャンとは「既存の市場」であって、競争が激しく、利益をあげるのにコストがかかり、薄利多売(利益が少なく、数を売る必要がある)、低価格ゆえに付加価値を提供しづらいという特徴があります。

音楽業界なんてまさにレッド・オーシャンだと感じませんか?

特に、クラシックやジャズのように、生演奏を生業(なりわい)としている我々は、デジタル音楽の台頭により需要が減っているにもかかわらず、音楽大学などで学ぶ人は減っていない(需要より供給が圧倒的に多い)、楽器購入や、能力維持のためにコスト(お金だけではなく、時間を含む)がかかり、その割には仕事の単価も安く、儲からない現場も多いのです。

安いまま付加価値を上げてしまうと、それはさらに価値を下げてしまう事になりますよね。

音楽家にとって大切なタイムイズマネーの話 | NSU経済・経営学部 Vol.3

この記事でも説明しましたが、安い仕事を受けて、こちらの労力が大きければ、その分時給は安くなります。

たとえば、ほとんどギャラの出ないような仕事でも「全曲暗譜します!」という付加価値を付けてしまったり、リクエストを受けて「無料で編曲します!」という付加価値を付けたりすると、レッド・オーシャンの中であなたに仕事は来るようになるかもしれませんが、それはただ、安くて便利に使われているだけかもしれません。

まずは皆さん、音楽業界で生き残る事、このブログのタイトルにもなっている「サバイバル」は、レッド・オーシャンなんだという意識をもっておくのは必要な考え方ではないかと思います。

ブルー・オーシャンで勝負出来るのか?

ものすごく安易に考えれば、「じゃあ、ブルー・オーシャン(競合がいない世界)に行けば良いじゃないか!」となるんですけど、まあ、そんなに簡単な話ではないですよね。簡単に出来るなら、僕もやっています(笑)。

ブルー・オーシャンに近いビジネス用語の「ニッチ」。「隙間」という意味ですが、「潜在的な需要があるが、まだビジネスの対象として考えられていない分野の事」を言います。

実際に、世の中にこれだけ多種多様なビジネスがあり、ゼロからのアイディアが出尽くしてしまった音楽業界でも、なんとか「隙間」はないかと、多くの方が日々試行錯誤していると言えますね。

そもそも我々は音楽が好きで、だからこそ職業にしたいと考えているわけです。なので、「音楽業界はレッド・オーシャンだから、どこか競合のいないブルー・オーシャンへ行こう!」とはならない人が多いですよね。

ただ、音楽にさほど思い入れや未練がない人は、この割り切り方はアリかもしれませんよ!

あきらめない勇気 or あきらめる勇気 | A or B/あなたが選択すべき人生の分かれ道 Vol.6

この記事にも書いたように「好きならとことん頑張る」、そうでもないなら「いさぎよく諦めてほかの事をやる」。

では、なんだかんだ言ってもこの業界で勝負したい人はどうすれば良いのでしょうか…

レッド・オーシャンの中にブルー・オーシャンを見付ける!

僕が日々実践している事や、このブログに書いている事は「レッド・オーシャンの中にブルー・オーシャンを見付ける」って事なんじゃないかなと思っています。

ある有名な経営者の方が「レッド・オーシャンはブルー・オーシャンだ」とネットニュースか何かに書かれていて、最初意味が分からず、本文を読んだのですが、僕にはとても納得出来る内容でした。飲食店を例に挙げて、

「個人経営の飲食店などは、あまり深く経営の勉強などもせず、ただ”飲食店をやってみたい”という浅はかな考えで始めてしまう人が多い。だから、店の数、つまり競合が多いレッド・オーシャンではあるけど、その中で普通にちゃんとやっていれば、必ず生き残れるブルー・オーシャンだ」

こんな内容です。

僕、これがそのまま多くの若いフリーランスの音楽家に当てはまると思うんですよね。

楽器の技術は音大で学ぶけど、職業としてやっていくノウハウは学ばずに、ただ「音楽が好きだから」でプロを目指して、結果レッド・オーシャンだという事にも気付かず、消えていくんです。

この経営者さんの言う「普通の事をちゃんとやっていれば」の部分は、

謙虚さ、感謝がある、謝罪が出来る『フリーランスで成功するための“10の秘訣”』 Vol.1

まさにここに書いた10の秘訣ではないでしょうか。

楽器の技術以前に勝負で負けているいる人がどれだけ多い事か…
(飲食店で言えば、味で勝負する前に潰れる事が決まっている状態)

『音大卒の演奏家が仕事を得る方法』Vol.1 音楽業界の現状

この記事で書いたように、演奏技術以外に、教えるスキルを身に付けたり、たとえばクラシック専攻の人もジャズやポップスの奏法を身に付けるとか、作編曲を学ぶとか、パソコンで楽譜を書けるようにするとか…

音楽以外の能力を持ち合わせている/音楽が好きである、信念がある 『フリーランスで成功するための”10の秘訣”』Vol.7

この記事に書いたように、音楽以外のほかのスキルを掛け合わせてオリジナルの、レアな人材になるとか…

僕は今年でプロになって20年ですが、もちろんトロンボーンの演奏のみでここまで続ける事は不可能だったと思います。上記の事はほぼ全部やってきましたが、それでもレッド・オーシャンだったと感じています。

ここ2,3年でさらにスキルアップして、ブルー・オーシャンに行く努力というか、戦略も考え、現在は比較的競合のいない世界で、ストレスも少なく仕事が出来ているように思います(結果、自分が経営者になり、会社を立ち上げるというところまで行きました)。

音楽業界のどの部分に身を置いて生きていくかは個人の自由ですが、自分はレッド・オーシャンの中にいる事を自覚し、そのうえで綿密な戦略を立てていくというしたたかさは、サバイバルを勝ち抜くためには必要不可欠な考え方になっていくと思います。

次回へ続く→

次回記事:音楽家に必要なターゲット戦略を身につけてますか? | NSU経済・経営学部 Vol.7
前回記事:音楽家のマージンについて理解しよう | NSU経済・経営学部 Vol.5

前回のブログ『フリーランスの音楽家こそ契約という意識を持とう 』では、いま話題になっている吉本芸人さんの問題を取り上げ、契約書の重要性について解説しました。皆さんの中でも口約束だけで仕事を受け、危ない経験、理不尽な経験をした方は多いのではないでしょうか。

この2週間でも吉本芸人さんの件は大きな動きがあり、これを書いている2日前には、契約解除になった宮迫博之さんと田村亮さんの記者会見があり、吉本興業のあり方が世間で物議を醸しています。

もちろん芸人さんたちがギャラを貰っていないと嘘をついた事で話が大きくなってしまったので、元はと言えばそれが一番悪いのですが、立場のある方が責任を取らず、トカゲのしっぽ切りで逃げようとするのは、芸能界に限らず、音楽ビジネスの世界や政治の世界、一般企業など、どこにでもあるように感じますね。

僕自身も、自分にはまったく非がないのに、クレーマーのような生徒さんに対し、「収集がつかないので、とりあえず謝って」と上に言われて謝罪させられたり、別件でも同じくこちらには非がないのに、教室との講師契約を一方的に解除させられた経験があります。

実は僕、6月に法人を立ち上げ、個人事業主ではなく株式会社の代表取締役になったのですが、「理不尽な会社に使われて”マージン”を取られるくらいなら、自分で経営してやる!」という想いもあっての事です。

というわけで、今回のテーマである「マージン」という言葉が出てきました。

マージンとは?

マージンとは、ざっくり言うと「(仲介)手数料」という言葉が分かりやすいでしょうか。

依頼主のクライアントさんと直接やり取りをせず、事務所などを介した場合は、ほぼ間違いなくマージンは取られていると思います。

クライアントさんが1万円出していて、あなたが6000円受け取っているとしたら、事務所のマージンは4000円(40%)、事務所:あなたの比率は、4:6という事になります。

計算式としてはとてもシンプルですよね。ただ、

一般的な演奏の仕事の場合、大元の予算がいくらなのかや、クライアントさんがいくら払ってくれているかは分からない事が多いので、自分のギャラが安いと感じても、そもそもクライアントさんが正当な金額を支払っていないのか、それともクライアントさんはきちんと支払っているのに、事務所がマージンを多くとっているのかは分からない場合が多いのです。

逆に音楽教室の場合、通常生徒さんが支払うレッスン料はホームページなどに明記されているので、講師に支払われた金額と照らし合わせれば、教室のマージンが何%なのかは分かりますよね。

自分が真っ当な評価を受けているか、その対価を受け取れているかを知るうえで、分かるものだけでもマージンを計算してみると良いと思います。

僕はこのように、教室だけでなく、演奏の現場の料金体系ももう少しオープンになっても良い、これからの時代は特にそうあるべきだと感じているので、ネクストステージ・プロジェクトでは、クライアント様からいただく料金と、奏者に支払う料金をある程度分かるように公開しています。

生演奏のご依頼・料金 | NPO法人ネクストステージ・プロジェクト

マージンの役割

常々吉本の芸人さんはテレビなどで、会社と芸人さんの取り分の比率が9:1だと言っています。今日の社長の会見では、5:5か、6:4(4:6?)と言っていましたが、真実は分かりません(芸人さんがネタとしてオーバーに言っているかもだし、社長が正直に答えていないかもしれないので)。

このブログは芸能ゴシップ記事ではないので、そこを追求するつもりはないのですが、そもそもマージンとはどういうものなのでしょうか。

音楽教室の仕組みは比較的分かりやすいと思うので、僕が所属していたヤマハの音楽教室を例に解説してみます。

先ほどマージンとは「仲介手数料」だと書きましたが、僕はそれプラス「ブランド料」も入っていると認識しています。

「私はヤマハ音楽教室のピアノ講師です」と名乗れるか、「私は個人でピアノを教えています」となるかの違いは、特に若くて、まだプロフィールに書けるような実績があまりない場合、結構な差があるのではないでしょうか。

単純に「肩書き」としてヤマハを名乗れる事、これだけでも大きなメリットと言えます。これがブランド料です。

次に、ここからがいわゆる「仲介手数料」の部分になりますが、ブランド力のある大手は、広告や営業にかけられる金額が個人よりもはるかに大きいです。ヤマハ音楽教室のテレビCMはほとんどの方が目にした事があると思いますが、地上波であれだけのCMを流すのは個人では不可能ですよね。ヤマハの場合、あなたが宣伝をしなくても、CM、ホームページ、店頭のチラシなど、あらゆる手段で生徒さんを集めてきてくれます。

さらに言えば、防音設備の整ったスタジオ、生徒さんが手ぶらでも習いに来られるような備品楽器があり、講師個人個人がカリキュラムを考えなくてもいいようなテキストが用意されています。また、講師としてレベルアップするための研修なども無料で受ける事が出来ます。設備や人材への投資も大きいという事ですね。

・大手の社名を名乗れるブランド料
・お客さんを集めるための広告宣伝費
・営業活動を行うための設備費
・研修などの人材育成費

これだけあなたに投資してくれているのですから、マージンを多く取られるのは当たり前の事なのです。

吉本の芸人さんたちも、ほぼ同じ仕組みである事が理解出来るでしょうか。

多くの芸人さんが、ギャラが安いと分かっていてもそこを目指すのは、明石家さんまさんやダウンタウンさんがいる大手事務所であり、自分が吉本芸人と名乗れる事で必ず恩恵があるからです。

自分ではほぼ不可能な営業活動も会社がやってくれます。「ルミネtheよしもと」のような専用劇場は設備費とも言えるし、舞台に立ち、現場で学ぶという意味では人材育成費とも言えますよね。

よく僕の周りでも「どこどこの事務所の仕事はギャラが安い、事務所が相当マージンをとってるんじゃないの?」みたいな話を憶測でしている人がいます(僕も昔はしていました…笑)。ここに書いているような事を分かったうえでなら良いのですが、あまり理解せずに文句を言っている人も多いと感じます。

誤解を恐れずに言うと、この仕組みを理解して、「自分はフリーになったほうが稼げる、やりたい事が出来る」と思うなら、文句を言わずに辞めれば良いだけの話です。

僕もそうやって、ディズニーリゾート、ヤマハのような大手でたくさん経験を積ませてもらった後、フリーになり、経営者になりました。

事務所と音楽家のあり方

結局のところ、契約というのは、雇う側と雇われる側の双方が、信用、信頼の関係を築けるかどうかという、とてもシンプルな話です。

参考:音楽家として信用される大切さ | NSU教育学部 Vol.8

先ほども書きましたが、演奏の仕事の多くは大元からいくら出ているか分からないので、マージンが何%かを全て明確にするのはかなり難しいと思います。

ですが、僕の経験では、「お前はウチのブランドを名乗れてるんだから(ここで働けているんだから)、お金の文句なんか言わずに黙って働け」と言わんばかりの経営者やマネージャーは、悪態がにじみ出ています(傲慢なおごりを感じます)。

「事務所以前にミュージシャンありき。皆さんの才能のおかげで私たちも生活出来ている、ありがとう」と思ってくださっている方々との態度とは明らかに差が出ますよね。

これも誤解を恐れずにざっくりと言えば、前者のような事務所はギャラが安く、後者では比較的良い場合が多いです。

後者のような事務所関係者に対し、我々ミュージシャン側も「そのブランドを名乗る事が出来、宣伝や設備投資のおかげでお仕事をいただけています。ありがとうございます」と感じる事が出来れば、そこには信用、信頼が生まれ、誰も嫌な想いをする人はいません。

今回の吉本興業と芸人さんの問題は、そもそもこの信頼関係がなかった、もしくは崩れていった典型的な例だと言えますね。

僕はこれまでの音楽生活の中で、いち所属アーティスト、いち講師として雇われる立場、ネクストステージ・プロジェクトのような音楽事務所的な法人で雇われながら管理する立場、そしてこれからは最高責任者として経営する立場と、いろいろな側面からそれぞれを客観視してきました。

この経験を元に、少しでも健全な音楽業界に出来るよう、これからも貢献していければと思っています。

→次回へ続く

次回記事:音楽界のレッド・オーシャンとブルー・オーシャンって? | NSU経済・経営学部 Vol.6
前回記事:フリーランスの音楽家こそ契約という意識を持とう | NSU経済・経営学部 Vol.4

「NSU経済・経営学部」は今回で4回目になりました。

経済学部はおろか、大学すら出ていない人間が書いているのですが(笑)、もしかしたらその分、音楽業界の実生活に役立つ内容になっているかもしれません。少しでも皆さんが正当な評価を受け、それ相応の報酬を受け取れるお手伝いが出来ていれば嬉しく思います。

さて、今回は何をテーマにしようか思案している中、ニュースでは吉本芸人の闇営業問題が大きく報じられていました。

クラシックやジャズと言っても、音楽業界は芸能界の一部とも言えます。我々にとっても決して他人事ではない内容だと思いますので、この件を参考にしながら、僕の考えを述べてみたいと思います。

今回の芸人さんたちの問題点は?

この件の一番大きな問題は、

・反社会的勢力からの仕事だった
・事務所を通していない仕事だった

この2点だと思います。

反社会的勢力からの仕事でなければ、芸人さんたちは謹慎や番組降板にはならなかったかもしれないし、事務所を通していなかっただけなら厳重注意で済んでいたかもしれません。謹慎させるくらいなら、テレビや営業イベントに出て稼いでもらったほうが良いですからね。

ワイドショーで取り上げている内容を僕がミーハーに掘り下げても仕方ないので、あくまでこのブログシリーズに関係する形で書きたいと思いますが、僕が一番気になったのは、

・吉本興業と芸人さんが契約書を交わしていない
・取り分の比率が、会社9:芸人1と言われている

こちらの2点なんです。

法律的に言うと、契約書は必ずしも書面で結ばないといけないという事はなく、口頭でもOKだそうです。ただ、トラブルになった時に責任の所在が曖昧になってしまうので、やはり形にしておくべきというのが一般的な弁護士さんの見解です。

吉本興業のような大きな会社で、たくさんの芸人さんを抱えているところが「口約束」レベルで仕事をしているのはちょっと驚きでしたね…

契約書に「事務所を通さず仕事をした場合は解雇」と書いてあれば、かなりの抑止力になったはずなので、それに輪をかけて反社会的勢力の仕事を受ける事はなかったと言えます。会社さえ通していれば、反社会的勢力の仕事を受けた場合、責任を追うのは吉本興業側ですからね。

音楽家も他人事ではない!

ここから音楽家が学べる事は、

・個人事業主(フリーランス)は自己責任、事務所に所属していればある程度守ってもらえる可能性はある
・個人事業主(フリーランス)の場合、なるべく契約書に近いものを残しておいたほうが良い

といったところでしょうか。

このブログを読んでくださっている多くの方は個人事業主でしょう。仮に事務所関係の仕事をしていても「専属(雇用)契約」の人はほとんどいらっしゃらないですよね。

僕自身も過去には「個人事業主」の形でディズニーやヤマハ音楽教室の講師などを請け負っていました。

ディズニーの場合はオリエンタルランドではなく、仲介のプロダクションと「契約」をしていましたが、パークの仕事で決められた日、時間帯を優先していれば、それ以外の時間でほかの仕事をするのは自由でした。

ヤマハ音楽教室も、もちろん(ヤマハの生徒さんの)引き抜きはNGですが、ほかで(フリーで)講師をやったり、演奏の仕事を受けるのはOKでした。

「きちんとした大手企業」は普通、このような契約書は交わしていますね。なので、そこに書かれている文言に関してのトラブルはなかったと思います。ただ、いわゆる「専属の雇用契約」でなないので、正社員のように守ってもらえる訳ではありません。ここがいわゆる「事務所に所属している芸能人(タレントさん)」との大きな違いです。

ほかの仕事をしても良いという事は、実質、個人事業主としての一部の仕事をとある会社(例:ディズニーやヤマハ)から請け負っただけなので、結局はほとんど自己責任だと思います。僕が言いたいのは、契約書があれば、責任の所在は曖昧にならないという部分ですね。

契約書に近いものを残そう!

フリーランスでクラシックやジャズを生業(なりわい)にしていると、個人同士のやりとりに近いレベルの単発の仕事をたくさん受けると思います。

その際にいちいち契約書を交わすというのは、まだまだ日本の社会では現実的ではないかもしれませんが、報酬や拘束時間、演奏の内容など(リクエストに答えて編曲など、時間のかかる作業があるかないかなど)、なるべくテキストで残る形にしたほうが良いと思います。幸い、最近では電話よりもEメールやLINE、フェイスブックのMessengerでやり取りをする機会が圧倒的に増えてきました。これはとても良い事で、必ず先方とのやり取りが記録されますよね。

僕は案件の細かい相談で、電話や直接の打ち合わせのほうがスムーズな場合はそうしますが、それ以外の「後で揉めるかも」という内容は必ずテキストに残してもらうようにしています。

前回のブログでは「時給換算」について触れましたが、事前にギャラの話だけしていたけど、当日やってみたら最初に聞いていた拘束時間の2倍になっていたら、つまりそれは時給が半分になっているという事です。もちろんそれを覚悟のうえで、やり甲斐も含め安売りしていないなら良いのですが、そうでなければ、これも前回書いた「機会損失」と言えます。増えた拘束時間分で別の仕事をして収入を得られる可能性があったわけですから…

後で「そんなに長く拘束されるとは聞いていない、ここ(メールなど)に書いてあるでしょ?だからギャラを上げてください」という「交渉」も、いずれは必要になってきます。そのためには必ず書面に残しておくべきだし、それ以前に後で揉めて気持ち良い人は誰もいないので、事前にハッキリさせておくべきだと僕は考えています。

日本の契約社会は、吉本のように、なんとなくユルい状態がまかり通っていて、あまり明確にすると、(このブログのケースでは)音楽家側が「金に汚い人」みたいに思われるところが問題だと思っています。吉本芸人の闇営業問題も、結局こんな曖昧な契約の仕方をしているのが問題で、ここまで大きくなってしまっているんですから、早くこういうユルい契約形態を無くしてほしいですね。

フリーランスの皆さんも、一つひとつの仕事に「契約の意識」を持つ事で、より自分の身を守れるのではないかと思っています。

次回は、「取り分の比率が、会社(吉本)9:芸人1と言われている」点をもう少し掘り下げ、「マージン」とは何なのか、詳しく解説してみたいと思います。

→次回へ続く

次回記事:NSU経済・経営学部 Vol.5『マージン』
前回記事:NSU経済・経営学部 Vol.3『タイムイズマネー』

前々回から始まった新シリーズ「NSU経済・経営学部」は今回が3回目となります。
「お金を稼ぐ意識の見直し」や「社会との繋がりを意識する」きっかけになりましたでしょうか?

さて、今回のテーマは「タイムイズマネー」です。

日本のことわざでは「時は金なり」とも言いますよね。

よく聞く言葉ではありますが、目に見えない部分も多いサービスを提供している音楽家には、忘れがちな視点と言えるかもしれません。

自分の仕事を時給換算してみよう

『フリーランスで成功するための“10の秘訣”』Vol.5 自分の価値がわかっている/お金の価値がわかっている

この記事でも触れましたが、プロというのは「自分が提供した何らかの労働、サービスなどを評価してもらい、その対価として、お金(給料や報酬)を受け取る」仕組みです。

レストラン、コンビニ、交通機関の利用も同じですね。

皆さんはアルバイトをしていた時(今もされている方もいらっしゃると思いますが)、時給○○○円といった条件で働いていたと思います。
時給というのはとてもシンプルで分かりやすい評価のされ方ですよね。

「やりがい」も重要な要素ですが、一般的には「そんなにキツそうではないけど、比較的時給の高い仕事」を選ぶ人が多いのではないでしょうか。
これ、言いかえると「その労働に対する評価額が高い」とも言えます。

ちなみに皆さんは、ご自分の住んでいる都道府県の「最低賃金」はご存知ですか?

東京都の場合、このブログを書いている2019年6月現在、時給985円です。
アルバイト、パート、派遣スタッフ、正社員、高校生、外国人など、どんな状況でも雇い主は労働者にこの金額を支払う事が法律で定められています。

僕が高校生の時にやっていたアルバイトは東京都で時給680円だったので、かなり条件は良くなっていると言えます(羨ましい…笑)。

ところが、音楽業界のギャラ(報酬)の相場が同じ比率で上がっているようには思えないんですよね。むしろ悪化している現場もあるんじゃないでしょうか。

僕が経験してきたものでは「ジャズのライブ」。

本番と別日にリハーサルが組まれ、数時間拘束され、交通費も支給されない。報酬は本番の日のチャージバックのみ。

チャージバック制というのは、当日お客さんが払ったテーブルチャージ(入場料みたいなもの)に集客出来た人数をかけ、お店の取り分○%、ミュージシャンの取り分○%というように分けられて支払われるシステムです。

仮にチャージ3,000円- x 集客100人 x 出演者取り分60% ÷ 出演者数15人という計算をすると、1人あたりの報酬は12,000円ですね。

まあ、悪くはないと感じるかもしれませんが、もしもリハーサルで5時間、当日も夕方からサウンドチェックがあり、7時間拘束されたとしましょう。

12,000円を拘束された12時間で割って換算すると、時給は1,000円という事になります。音楽事務所などが絡んでいないジャズのライブでは交通費も支給がされない場合がほとんどなので、ここから2日分の交通費を引いて計算すると、もしかしたら最低賃金を下回っている可能性もあります。

ジャズの現場だけでなく、クラシックでも、友人同士で集まって開催する自主公演などでは、同じような事がよく起きていますよね。

音楽家の場合、個人練習の時間もあるので、それも含めてしまうと、かなり効率の悪い稼ぎ方になっていると言えるかもしれません。

もちろん単純にアルバイトとは比較出来ないのですが、世の中の時給の相場はいくらで、どんな仕事ではいくらくらいの時給が支払われている、それと比べて自分の労働はどれだけの評価をもらえているのか、この考え方は一つの目安にはなるのではないでしょうか。

「やりがいや経験という報酬」は決して否定しません。

僕も今でも、正直計算するのが怖いようなライブもやったりするのですが(笑)、それを生活のあてにはしていません。分かったうえで楽しい、経験になるからやっていて、自立して生活するためのお金は別で稼いでいます。

良くないと思うのは、「自分は好きな事をやっている、経験のためには安くても仕方がない、音楽家は貧乏なのは当たり前」といった意識しかなく、なかなか自分の価値を上げていけない人です。

誤解を恐れずに言うと、どんなに楽器の技術があって、その演奏をお客さんの前で披露しても、それで得たお金を時給に換算して最低賃金を下回っていたとしたら、コンビニなどのアルバイトよりも「社会的」な評価は低いという事なんです。

自分がやっているのは芸術だからそれでも構わないと思っている人はそれで良いと思いますが、職業音楽家として正当な対価を得て生活していきたいのであれば、これは必要不可欠な考え方ではないかと思います。

「費用対効果」、「機会損失」とは?

続いて、ビジネスの世界でよく聞かれる用語を二つ、解説してみましょう。

まずは「費用対効果」。「コストパフォーマンス(コスパ)」という言い方もありますよね。

かけた費用に対して、どれくらい効果があったかという意味です。

音楽家の場合だと、アルトサックスしか持っていなかった人がソプラノ、テナー、バリトン、移動用の車を買ったとして、仕事が広がり、大きな利益を生み出したとしたら、それは費用対効果が高いという話になります。

楽譜作成ソフトやパソコンを購入し、演奏だけでなくアレンジの仕事が広がるというのも同じですね。以前書いた「投資」の考え方も同じです。

参考
自己投資が出来る『フリーランスで成功するための“10の秘訣”』 Vol.6

逆に、あなたにお金を払ってくれるお客さんは、無意識だったとしても、この「費用対効果」を考えています。

レッスンのお仕事は分かりやすいかもしれませんね。レッスン料が1時間5,000円だったとして、受講した結果、上手くなったのかどうか。この先生(あなた)に習っていれば5,000円の価値はあると思ってもらえれば、生徒さんは継続してくれるでしょう。

教室までの移動の時間や交通費もあるので、実際はもう少し安くなりますが、時給は5,000円ですよね。生徒さんも納得してくださり、自分も時給換算で5,000円の評価を受けたとしたら、なかなか良い仕事だと思いませんか。

皆さんの中には演奏の仕事のほうが上、レッスンは下のような考え方をしている人がいるかもしれませんが、ビジネス感覚で言うと、僕はそうは思えないのです。音楽で自立して生活していくためには、結構重要な仕事だと思いますね。

参考
レッスンの仕事に誇りを持とう!『音大卒の演奏家が仕事を得る方法』Vol.7

続いて「機会損失」のお話。

ざっくり言うと「稼ぎ損ない」の事なんですが、意思決定を誤り、より多く稼ぐ「機会」を逃して発生する「損失」の事です。

ちょっと分かりにくくなってきましたか(笑)。

最近うちの事務所であったのは、吹奏楽部の指導の依頼をしてくる学校の顧問の先生が全然連絡の取れない方で、何度も何度も連絡しないといけない。留守電を入れてもコールバックがないので、メールで書面にするんですけど、当然電話でパッと話して用件を伝えるより時間がかかります。そのメールにも返信がないので、また「お返事ください」のメールをする。やっと返信が来たと思ったら、必要な事が書かれていない(希望の楽器や日程,etc.)。またそれを問い合わせる…

ものすごい無駄な作業ですよね。最近は「ブラック部活」なんて言葉も聞かれますが、恐らく先生は忙しくて大変なんでしょう。でも、だからと言って依頼をしている先のスタッフの時間を奪って良いという話にはなりません(世の中には、他人の時間を奪って平気な人が結構います)。

とは言え、公立学校だと予算もないので、支払えるレッスン料も安いわけです。

こういう仕事に多くの時間を割く事になると、目には見えないかもしれませんが、そこで奪われた時間のために練習時間や睡眠時間が減り、結果として自分が持っているパフォーマンスを発揮出来ず、スキルアップに繋がっていかない、つまり「機会損失」しているという話になります。

ちなみにこの学校の対応はあまりに酷かったので、警告をしたうえで指導者の提供は打ち切らせていただきました。

最初のライブやコンサートの例えに戻ると、友人同士で結成したバンドやユニットで、演奏以外にも事務的な作業で膨大な時間を取られているのに、「時給」も「費用対効果」も低く、結果としてそこで費やしてしまった時間のためにほかの仕事に影響が出て、スキルアップや条件の良い仕事を取れる「機会を損失」している人、結構多いように思います。

怖いのは、自分が意思決定した事により、見えないところで起きている影響なので、気付かない人もいるという事。

今、自分が取っている行動、選択している意思や友人との付き合いを評価、判断するうえで、今回紹介したビジネス的な考え方の一面を持っておく事はとても大切だと思います。

1日24時間というのは、全ての地球上の生物に与えられた最も平等な権利ですよね。ただ、それをどう使うかは一人ひとりに委ねられています。

「タイムイズマネー = 時は金なり」

費用対効果(コスパ)の高い人生を歩むために、時間とお金をなるべく「見える化」して、音楽家として生きていくための指針にしてみましょう!

次回へ続く→

次回記事:フリーランスの音楽家こそ契約という意識を持とう | NSU経済・経営学部 Vol.4
前回記事:音楽家は社会との繋がりを意識しよう | NSU経済・経営学部 Vol.2

前回から「お金・ビジネス」について学ぶ新シリーズ「NSU経済・経営学部」が始まりました。

「三方よし」という考え方に共感出来た人は、ぜひ自分の仕事がどのように世間の役に立っているのかを考えてみてください。

人、社会の役に立っていると実感出来れば、モチベーションも上がり、さらに充実した人生が送れるようになりますよ。

前シリーズでも少し触れましたが、スティーブ・ジョブズ氏も、お金儲けが先ではなく、「人に喜んでもらえる物を作りたい」という想いから、MacやiPhoneを作ったそうです。

まさに「売り手よし、買い手よし、世間よし」ですよね。

参考:NSU教育学部 Vol.7『お金の教育』(下)

さて、今回のテーマは「社会との繋がりを意識しよう」です。

「世間よし」を実現、達成するためには不可欠なテーマです。

「風が吹けば桶屋が儲かる」って何?

突然ですが、皆さんは「風が吹けば桶屋が儲かる」ということわざを聞いた事がありますか?知らない人は、このブログを読み進める前に、どういう事なのか想像してみてください。





どうですか?分かりましたか?

「風が吹くと土ぼこりがたって目に入り盲人が増える→盲人は三味線で生計を立てようとするから、三味線の胴を張る猫の皮の需要が増える→猫が減るとねずみが増え、ねずみが桶をかじるから桶屋が儲かるという事」


正直現代人にはよく分からないですよね(笑)。

つまりは「一見関係なさそうな場所に影響が出るかもしれない」というたとえです。

これの現代版では「ロングヘアーが流行ると牛丼が98円になる」というのがあるらしいですよ(どこかのグローバルなIT系企業の採用試験で出題されたとか…)

「髪を結ぶためのゴムの需要が増え→天然ゴムの生産地の東南アジアが急成長→牛丼屋が海外戦略の一環として、東南アジアに進出→現地物価水準にあわせて価格を設定すると98円になる」

だそうです。

ちょっと難しい話になってきましたね(苦笑)。

音楽家もひとごとではない!

では、音楽家の皆さんにとって少しリアルな話にしてみましょう。

今の日本で話題になるワードは「少子高齢化」、「待機児童問題」、「働き方改革」などがありますよね。

「少子高齢化になると、音楽の先生の需要はどうなると思いますか?」

「待機児童が増えると、音楽家にはどんな影響がありますか?」

「働き方改革がうまくいくと、音楽家にはどんな影響がありますか?」

こんなテーマについて、前述の「風が吹けば桶屋が儲かる」の要領でイメージしてみてください。





いかがでしょう?

では、これが正解というわけではないですけど、僕の考えを書いてみますね。

「少子高齢化になると、音楽の先生の需要はどうなると思いますか?」

少子化になると、生徒数が減ります。生徒数が減れば学校の先生の採用も減ります。という事は、音大で教員免許を取得しても、先生として就職出来る確率が下がります。

生徒数が減ると、部活動の規模も縮小します。例えば吹奏楽部の部員数が少なくなったり、存続出来なくなってしまった場合、学校の先生ではなく、フリーランスでトレーナーをやっている人も、それだけでは生活出来なくなってしまう人が出てきます。

もちろん学校や吹奏楽部だけでなく、町のピアノ教室も同じですよね。

少子化にターゲットを絞るとちょっとネガティブかもしれませんが「高齢化」のほうはどうでしょう?

最近では「健康寿命」という言葉もよく聞かれますが、シニアの方が老後をより有意義に、健康に過ごすためには、楽器を習うというのはとても良い事ですよね。シニアにターゲットを絞っている音楽の先生は、これから需要が増えるかもしれません。

「待機児童が増えると、音楽家にはどんな影響がありますか?」

子どもを保育所に預けられないという事は、お母さん(お父さんの場合もあリますが)が育児で家を出られないという事ですよね。例えば結婚をして産休を取ったとして、その後、保育所が空かないために、(音楽の)現場に戻るのが遅れる、もしくはプロとして続ける事を諦めなければいけない可能性もあります。

音楽家ではない一般のお母さんも、育児で外出出来ないので、コンサートに行けない。つまり、観客動員数が減る。コンサートが開催出来ない。そして音楽家の収入に影響が出る。

もしくはお母さんがアマチュアの音楽家だったとして、本当は趣味で再開したいけど出来ない。教室に通ってくれないので、音楽講師の収入は増えない。こんな事も考えられます。

逆に、子連れOKのコンサートは需要が増えるかもしれませんね。

「働き方改革がうまくいくと、音楽家にはどんな影響がありますか?」

残業が減れば、その分趣味や娯楽にかける時間が増えます。そうすれば、教室やコンサート、ライブにもお金を使ってくれるかもしれないので、音楽家の収入は増えるかもしれません。

ただし「うまくいくと」と書いたのは、今まで残業代をあてにしてそれなりの給料をもらっていた人が、残業が減り、収入も減ってしまうと、趣味、娯楽にお金をかけるどころではなくなってしまうので、音楽家が恩恵を受けるところまではいかないと僕は感じています。

別の見方をすると、働き方改革によって「副業OK」が増え始めているので、一般の企業に就職して最低限の収入を確保し、空き時間を有効利用して音楽家をやるなんて事も可能、もっと言えば主流になるような気がしています。

前シリーズの最終回に書いたように、政治家の皆さんにはもう少し頑張っていただきたいのですが、正直あてに出来ないので、受け身になっている場合ではないのです。

これらの社会問題がどっちに転ぶかは正直誰にも分かりませんが、「自分で自分を切り開く」ためのアンテナを社会に対して常に張り巡らせていれば、どうなっても柔軟に対応出来ますよね。

参考:NSU教育学部 Vol.12『自分で自分の未来を切り開く』

今、社会で起きている事は自分には関係ない、とにかく練習を頑張って上手くなれば仕事があると思っている皆さん、その考えはとても危険です。

「世間よし」の感覚を持つ事は、必要不可欠、当たり前レベルの話。

音楽で収入を得て自立する事に興味がなく、ただ自分のアートを突き詰めたい人はもちろん構いませんが、そうでない人はもっと「社会との繋がり」を意識して生活する事を強くオススメします!

→次回へ続く

次回記事:NSU経済・経営学部 Vol.3『タイムイズマネー』
前回記事:NSU経済・経営学部 Vol.1『お金を稼ぐ意識を見直そう』

10連休の大型ゴールデンウィークが明けて1ヶ月弱ですが、皆さん、いかがお過ごしでしょうか。

5月、6月は会社を辞める人が1年の中でも最も多いそうですね。

4月に新生活が始まり、1ヶ月ほど頑張ったけど、疲れやストレスを溜めたまま連休に入り、憂鬱な時間を過ごし、そのまま行けなくなってしまう状態でしょうか。気持ちはなんとなく分かる気がします。

最近では、自分で直接会社に辞めると言いに行かなくても良い「退社代行サービス」というビジネスが結構はやっているそうです。本来なら「立つ鳥跡を濁さず」で、自分でけじめを付けるべきだとは思いますが、それくらい辛い方もいらっしゃるんでしょうね…

そこまで自分を追い込む必要のない、有意義な人生を送りたいものです。

そのためには、前回の『将来を考える際に目的と手段を区別できていますか?』でお伝えしてきた内容はとても大切だと思いますので、まだお読みでない方はぜひご一読ください。

さて、今回の新シリーズは、「NSU経済・経営学部」と題し、「お金を稼ぐ」事について触れていきたいと思います!

日本人のお金への意識

学生さんはまだないかもしれませんが、先輩や知らない事務所から演奏の仕事が来て、ギャラ(報酬)も提示されずに日程だけおさえられた経験はありませんか?

日本は「お金の話はタブー」という風潮があります。

これに輪をかけて、「年功序列」や、立場が上の人には絶対服従といった習慣が残っているため、「ギャラはいくらですか?」と聞く事も出来ず、でも、日程でOKを出してしまったので断る事も出来ない。こんな状況に陥ります。

やってみたら経験としての価値もなかったり、異常な拘束時間のうえに、ほとんどギャラが出なかったなんて場合もあります。あえてメリットと言えば、こんなブラックな世界もあるという社会勉強になった点くらいでしょう。

最近は「働き方改革」も進み、社員やアルバイトの雇用形態は改善の兆しが見え始めましたが、音楽業界を含む、芸能、エンタメ業界では、まだまだブラックなところも多いと思います。

ネクストステージ・プロジェクトでは、こういった事を助長しないのはもちろん、より良い環境になるよう、依頼者が若い音大生であっても、必ず事前に拘束時間や報酬を提示し、納得してから請けてもらうようにしています。

経験のために無報酬、またはそれに近い金額で働く事を否定はしませんが(僕も今でもやりますが)、依頼する側が条件を提示し、請ける側が(やるかやらないか)選べるのは当然の権利だと思うので、そういった「ごく当たり前の環境」になるよう、このブログを通しても呼びかけていきたいと思っています。

日本のお金の教育の問題点は?

なぜこのような「雇う側のほうが有利な状態」がまかり通ってしまうのか。それは、前シリーズでもお伝えした「教育」の問題かもしれません。

日本ってお金の「使い方」は小学校でも教わるんですけど、「稼ぎ方」は習わないんですよね。

皆さんも小学生のころ、「遠足のおやつは300円まで」というようなルールがあり、「予算内でいかに自分の満足するおやつを揃えるか」みたいな経験をしたと思います。これはある意味、小学生でも理解出来る素晴らしく実践的な「お金の使い方」の教育だと思いますが、「その300円をいかにして自力で稼ぎ出すか」までは教わった記憶がありません。

音楽家にとって大切なお金の教育(上) | NSU教育学部 Vol.7にも書いたように、アメリカや発展途上国などでは、子どものころから実践でお金を稼ぐ事をもっと学んでいると思います。日本は良くも悪くも恵まれている国なので、そういった教育が欠落していると言えるかもしれませんね(300円は親御さんが用意してくれるので)。

「稼ぎ方を知る」というのは、「社会で自立して生きていく手段を知る」とも言えます。

正しい知識がなければ、当然ブラックな事務所などにもだまされやすくなります。

プロの音楽家として生きていくためにも当然必要な教育であり、本来はもっと早い段階で学ぶべき内容ではないでしょうか。

「三方よし」って?

僕がお金を稼ぐ時に(ビジネスにおいて)大切にしている考え方に「三方よし」というのがあります。

これは、江戸、明治時代の近江商人という人たちの考え方で「売り手よし、買い手よし、世間よし」の「3方向」を指します。もう少し詳しく説明すると、

「商売において売り手と買い手(需要と供給)が満足するのは当然の事で、それに加えて社会に貢献出来てこそ良い商売」

という考え方です。

サッカー日本代表の試合で「キリンチャレンジカップ」というのを耳にした事があると思いますが、見ての通り、スポンサーは「キリン」ですよね。「一番搾り」などを作っているキリンビール株式会社や、「午後の紅茶」などを作っているキリンビバレッジ株式会社などです。

例えば僕が「一番搾り」というビールが好きでよく買うのは、「売り手よし、買い手よし」の状態ですよね。会社が購買意欲を誘う商品を作り、消費者が納得して購入しているという状態。

さて、ここに「世間よし」が入ってくるとどうなるのでしょう。

それが「サッカー事業への応援、投資」だったりするわけです。「キリン」のような大きな会社が資金を投じてくれるおかげで、サッカーが多くの人に注目され、選手たちのプレーに感動し、(スタジアムやテレビで)観客として勇気をもらったり、世界で活躍出来るようなスター選手が生まれてきたりするんですよね。

ホームページを見ると、サッカー応援だけでなく、環境や健康への取り組みなどもたくさんしているようです(ページ下部にリンクがあります)。

実は多くの企業が、このような形で「社会貢献」を行っているんですね。

そして、それが出来ているのは大企業、すなわち「儲かっている企業」とも言えます。裏を返せば、稼げるようになりたければ「売り手よし、買い手よし」だけでなく、「世間よし」を意識するのがポイントと言えるのではないでしょうか。

音楽家は少し「浮世離れ」しているというか、どうもこの考え方が弱く、下手すると「売り手よし、買い手よし」どころか、売り手(自分)の事ばっかり考えている人も多いように思います。

「私の演奏は素晴らしいから聴いて!」だけではビジネスにはなりません。

もちろんアーティスト(ピカソのような芸術家)を目指すのであればそれでも構いませんが、「職業音楽家、フリーランス、個人事業主」に当てはまる人は、やはりこの考え方は大切になってくると思います。

前述のサッカー選手や野球選手などのアスリートは多くのスポンサーが付いていますが、音楽家ではとても少ないです。この考え方がもっと浸透すれば、「スポンサーを探す」という「資金調達」の方法も増えるかもしれませんよね。

最近では「クラウドファンディング」という言葉もだいぶ一般的になってきました。音大の先生たちが若かったころにはまだ存在もしなかった「稼ぎ方」が、あなたの音楽生活を助けてくれるかもしれません(きっと音大では教わりません)。

今回は「序章」というイメージで書かせていただきましたが、次回からより詳しく、皆さんがあまり注目してこなかったであろう視点で、経済や経営について分かりやすく解説していこうと思います。

→次回へ続く
次回記事:音楽家は社会との繋がりを意識しよう | NSU経済・経営学部 Vol.2
前回記事:音楽家は自分で自分の未来を切り開く | NSU教育学部 Vol.12

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