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レッスンの仕事に誇りを持とう!『音大卒の演奏家が仕事を得る方法』Vol.7

『音大卒の演奏家が仕事を得る方法』と題して、全7回のシリーズでお届けしてきました。

いよいよ今回が最終回です!


さて、このシリーズの第1回で、「学校もビジネス」だという話をしました。

言葉は悪いですが、これは、「あなたが仮に優秀でなくても、とりあえず学費を払って通い続けてくれれば、学校側としてはビジネスになる」という事を意味します。

いろいろな先生がいるし、いろいろな学校があると思いますが、しっかり通った成果を出すには、やはり「自分が何を学びたいか」を明確にしておく必要があるでしょう。

ちなみに、これは決して学校サイドの批判ではなく、「ビジネスとは多かれ少なかれ、このような一面をもっている」事をお伝えしたいのです。

きちんとお客さんが望んでいるサービスを提供出来れば、何も悪い事ではありません。

僕が皆さんに言いたいのは、

あなた自身もレッスンの仕事に誇りを持ち、きちんとビジネスとして成立させましょう!

という話です。

レッスンの仕事から得られるモノ

レッスンの仕事をすると、良い事がたくさんあります。

1.誰かの役に立つ!

アマチュアでもプロ志望でも、うまくなりたいと思って情報を求めている人はたくさんいます。
その人たちの役に立ちます。

2.教える事で自分の演奏が向上する!

演奏する能力と教える能力は、必ずしもイコールではありません。

時に自分の演奏や生徒さんの演奏を論理的に分析し、説明する必要があるので、結果、自分のプレイを見直し、上達に繋げる事が出来ます。

3.演奏会、ライブの集客が増える!

生徒さんは、あなたのコンサートやライブの演奏にも興味があります。

演奏しかやっていない人は、集客に苦労している人も多いですが、レッスンをやっている人は、比較的安定した集客が出来ている印象があります。

4.社会への視野が広がる!

特に大人のアマチュアの生徒さんの場合ですが、年齢や職業もさまざまで、いろいろな価値観の方と接する事が出来ます。

同業者だけと接していると、残念ながらこの業界では、30歳になっても自立出来ていない人が大勢いて、「自分もまだ大丈夫」だと思うなど、社会人としての感覚が麻痺してしまっている人も少なくありません。

本当に自分のやりたい事をやるなら、社会人としてある意味「普通」の感覚をもったうえで取り組む事はとても大切だと僕は考えています。

5.ある程度の生活の基盤になる!

あなたが生徒さんにとって良い先生であれば、生徒さんは通い続けてくれるでしょう。
そういう方がたくさんいれば、結果、それなりの収入を得る事が出来ます。

収入が安定する事で、物質的にも精神的にも余裕が出てくるので、たとえば

  • (儲からないかもしれない)自主コンサートやCD制作に投資をする
  • 海外に勉強に行く
  • ボランティア活動などで、他人や社会への貢献をする
  • プライベートでは結婚出来る

そんな事も可能になるかもわかりません。

ちなみにここに書いてきた内容は、結婚以外(笑)、ほぼ僕が実践してきている事です。

レッスンの仕事に大切な考え方

教える仕事や、作編曲など、制作の仕事も多く、練習時間が十分に確保出来ないのはいまだ悩みの種ではありますが、僕がレッスンという仕事から得たモノは本当に大きいです。

レッスンがなかったら、いろいろな意味で今の僕はないと思いますね。

僕は、演奏が一番でレッスンが二番とか、演奏者のほうが先生より偉いと考えた事はありません。
もちろん、この逆でもなく、それぞれが必要な仕事で、価値があります。

また、お金が一番だとも思っていません。

演奏が一番と思っていて、レッスンをバイト感覚でやっている先生や、ライブの集客のためにレッスンをしている先生に魅力はないですよね。
僕だったらそういう先生には習いたくありません。

「自分の培ってきた能力をシェアしたい」

「自分と違う価値観の人から学びたい」

そういった想いがあり、それが相手に伝わっているからこそ、必要とされている気がします。

ぜひ皆さんも、あなた自身が生徒さんに何を伝えたいのかを考え、レッスンに誇りをもち、必要とされる先生を目指してください!

7回にわたって書いてきたシリーズ、いかがだったでしょうか?

あくまで僕の経験を元にしていて、必ずしも万人にとっての正解ではないと思いますが、将来について少し掘り下げて考えるきっかけになってもらえれば幸いです。

次回記事:第1回ジャズ&ポップスセミナーを終えて~あなたの行動があなたの未来を変える
前回記事:Vol.6 ジャズやポップスまで学びを広げる


本シリーズ第1回(Vol.1 音楽業界の現状)では、「デジタルとは無縁なクラシックの世界でも仕事が減っている」事実をお伝えしました。

最近では、ジャズ科のある音大も増えてきましたが、クラシックの学科でクラシックだけを学んでいる、もしくは学んでいた人も多いと思います。

では、

音楽だけで生計を立てて自立したいと思っている人は、果たしてクラシックだけの技術、知識でやっていけるのでしょうか?

クラシックだけでは生活出来ない

僕は、100パーセントに近いくらい「NO」だと考えています。

本シリーズ第2回(→『音大卒の演奏家が仕事を得る方法』 Vol.2 あなたがやるべき事を知るには)では、ピアノ科を例に挙げ、音大卒業後に「演奏のみ」で生活出来る人の割合は1パーセント、多くの人はレッスンなどもやって生計を立てている事を書きましたね。

ぶっちゃけ、これが答えと言っても過言ではないのですが、

99パーセントの人は、レッスンなど演奏以外の仕事をするにあたり、間違いなくクラシック以外の音楽にも関わる事になります。

となると当然、クラシック以外の音楽の事も知らなければ、お金は取れないし(取るべきではないし)、生活も出来ないのです!

たとえ演奏の仕事をしていくにしても、いわゆる自主公演ではなく、一般企業がクライアントで、イベントの仕事の依頼を受けたり、ブライダルの仕事などをする場合が多くなる事でしょう。

そうした生演奏の仕事では

「クラシックのみを演奏してください」

という依頼よりは、

「ジャズやポップスも演奏してください」

という依頼のほうが圧倒的に多いのです。

また実際に僕が過去の経歴の中で見てきた事ですが、千葉県浦安市の某大型テーマパークのパフォーマー(音楽家)も、某大手音楽教室の講師も、クラシックしか演奏出来ない人は100パーセント、オーディションには受かりません。

大手企業に興味がないにしても、たとえば管楽器で吹奏楽部の指導に行く場合、コンクールシーズンは別にして、文化祭や定期演奏会のシーズンで、ポップスをやらない学校のほうが少ないはずです。

“なんちゃって” でやってませんか?

「いやいや、自分はポップスもちゃんと指導が出来ている」

と思っている人もいらっしゃるかもしれませんが、そういう人の中には、

「ジャズやポップスは、クラシックより低レベルで簡単な音楽だ」

とナメてかかっている人も、残念ながら少なくありません。

では、ここで問題です。

  • クラシックではこう演奏しなさいと教わる事と、ジャズ、ポップスではそれが真逆の場合があります。違いを説明出来ますか?
  • ハーモニーにおいても、クラシックでは絶対に出てこないようなボイシングもあります。どんな種類があるか説明出来ますか?
  • 譜面に書かれた情報とは別に、ノリやグルーヴといった内容を、ある程度説明、演奏出来ますか?
  • アドリブってどうやるんですか?」と質問されて、「アドリブだから適当にやればいいんだよ」などと無責任なアドバイスをしていませんか?

ここに書いた内容を、音大のクラシックの学科で学ぶのはほぼ不可能だと思うので、自分で学ぶ機会を作った人以外のほとんどの人は、胸を張って出来ているとは答えられないはずです。

自分を過信せず、学びを広げる事

少し論点がズレるかもわかりませんが、

音大卒業時点で勉強が終わったと考えるのは絶対にやめたほうがいい

と思います。

これは、一般企業への就職でも全く同じですが、大学卒業はスタートラインでしかなく、学校では社会に出て必要な事のほんの一部しか教えてもらえません。
あとは自分で勉強するのです。

僕自身、ジャズやポップスを100パーセント理解したとは思っていないですし、たぶん一生かけてもすべては学びきれません。
ですが、演奏技術や指導の幅を広げるために、今も学び続けています。

もちろんクラシックも、吹奏楽でアマチュアの生徒さんに教えるうえで必要な技術、知識を深められるよう、マスタークラスを受講したり、練習もしています。

大切なのは、

ジャンルに優劣を付けず、学校で学んだ知識を過信する事なく、たとえお金をもらう立場になっていたとしても、謙虚に学び続ける事

ではないでしょうか?

次回はいよいよ本シリーズの最終回です。
最後は、レッスンの仕事に対する姿勢、考え方についてお伝えします。

次回記事:『音大卒の演奏家が仕事を得る方法』 Vol.7 レッスンの仕事に誇りをもとう!
前回記事:『音大卒の演奏家が仕事を得る方法』 Vol.5 デジタル技術で受注を増やす(後編)

スマートフォンを操作する男性前回の記事では、「自分のホームページをもつ事がどれだけ大切か」というお話をしました。

そして、あなた自身に興味をもってもらうためには、「いかにほかの人より魅力的な“お店”を作るかが重要」だとお伝えしました。

今回はSNSやYouTubeについて書きますが、まずはホームページの見せ方について解説していきます。

良いお店の見せ方 5つのポイント

皆さんが飲食店を利用したり、何かを買おうと思った時、どうやって「検索」してそのページにたどり着き、何が書いてあれば(何を知る事が出来れば)そのお店を利用しますか?

  1. (どこにある)何のお店なのか?
  2. 何が売りなのか?(ほかのお店と違う特色は?)
  3. どんな商品を扱っているのか?(画像などでわかりやすく見せているか)
  4. 価格は明記されているか?
  5. 評判はどうか?(口コミや更新度合い)

それでは、これを飲食店を例に、音楽と結び付けて解説してみましょう。

1.(どこにある)何のお店なのか?

「池袋 ラーメン おすすめ」

のように、地名と食べたい物の種類を使って検索するのが一般的ではないでしょうか。

具体的なお店の名前で検索される場合もありますが、それは「有名店」だけで、あなたが既にその情報を得ている場合です。

たとえば僕の場合、「フジイヒロキ トロンボーン」と検索してもらえる事より、

「池袋 トロンボーン レッスン」

というようなワードで検索されて、なるべく上位に表示される事が大切なのです(レッスンの場合、場所はとても重要です)。

僕を知らない人にアプローチ出来たほうが、断然マーケットが広がりますよね。僕はそんなに有名人ではないので(笑)。

僕は、演奏の仕事や作編曲などの制作の仕事もたくさんやっていますが、これらは主に口コミというか、人脈でくる事が多いので、検索の引っ掛かりやすさは「レッスン」にターゲットを絞っています

2.何が売りなのか?(ほかのお店と違う特色は?)

醤油ラーメンのお店なのか、味噌ラーメンのお店なのか、はたまた何でも揃っているのか、どんなスープにこだわっているのかなどの情報です。

ラーメンなら何でも良いと思って検索する人もいますが、最初から「醤油」など、食べたい種類が決まっていて、その中で一番美味しいお店を探したりしますよね。

僕の場合、「ジャズやポップス系に強いトロンボーンのレッスン」である事や、「初心者にやさしい」事などを売りにしています。

音大受験や、オーケストラに入りたい人は、僕より適任の先生がほかにたくさんいらっしゃいますので、「自分がどのタイプの先生であるかを明確にしておく事」はとても大切です。

3.どんな商品を扱っているのか?(画像などでわかりやすく見せているか)

ラーメンなどの場合、美味しそうな画像もなく、文字でメニューしか書いていなかったら、まず行こうとは思いませんよね。

僕は自宅のスタジオでレッスンを行なっているので、楽器店と比べると入りにくいと感じる方もいらっしゃると思います。
特に女性の場合は不安だと思います。

なので、トップには女子学生との写真を置き、部屋の中の写真なども公開し、少しでも安心してもらえる工夫をしています。

参考:https://mtfujimusic.com/lesson/

4.価格は明記されているか?

説明するまでもなく、これはとても重要ですよね。

「3.」ともリンクしていますが、音楽教室の場合、「1レッスン 90分 8000円」など、時間と値段が書いていないとほぼ問い合わせはきません。

たまに、演奏をメインにしている人のホームページやブログで、
「レッスンもやっています。詳しくはメールください」
としか書いていない人がいます。

「醤油ラーメンを扱っています。料金などはお問い合わせください」
と表記しているお店には絶対に入らないと思うのですが、音楽家はこれに近い非常識な事をやっている人がけっこういますね。

5.評判はどうか?(口コミや更新度合い)

食べログなどのサイトでは、数字や星でランク付けされていたり、口コミが載っていたりします。
これらを参考にしてお店を選ぶ人も多いのではないでしょうか。

個人の音楽家のページにランク付けはありませんが、僕は「生徒さんの声」というページを作り、レッスンに興味をもってくださっている方に安心してもらえるようにしています。

参考:https://mtfujimusic.com/lesson/voice/

SNS活用術

ようやくSNSの話まできました(笑)。

さて、あなたのホームページが「お店」だとすると、SNSは何に当たると思いますか?

SNSはウェブ広告のようなもの

答は「ウェブ広告」です。

フェイスブックやツイッターをやっている方は、誰かがシェアしている情報からメインのホームページに飛んだ事があると思います。

こうやって「本店」に誘導するんですね。

たとえば、あなたのレッスンに対する考え方や、演奏のYouTube動画などが上がっていて、そこに多くの「いいね!」があったり、リツイートがたくさんされていると、それが「口コミ」となり、評判の良いお店だと(習いたいと)思ってもらえるわけです。

SNSのタイムラインでは、あっという間に過去の投稿になってしまうので、「更新」が大切になります。
面倒くさいですが、ある程度評判になるまでは頑張るしかありません。

こうして、ほかのサイトからメインのホームページにきてくれる事で、「このページは常に世間の役に立っている」とグーグルが判断し、検索で上位にくる可能性が高くなります(SEOと言います)。

たとえば、テレビの地上波のゴールデンタイムでCMを流してもらうと、おそらく億単位か、何千万はするのではないでしょうか?
新聞などの媒体でも、大きさによっては何十万か何百万です。

これらに広告を出すのは実質不可能ですが、SNSやYouTubeは基本的に無料です。
利用しない手はないですよね!

大手が何千万もかけてテレビCMを放映するのは、「それくらい宣伝しないと商品は売れない」からです(ハイリスクハイリターン)。

逆に、少し前に、とある旅行会社が倒産しましたが、この会社は、ウェブを利用しない世代の需要を狙って、新聞広告に大金をつぎ込んだ事が仇になったと言われています。

つまり、莫大な費用をかけて大きな媒体に広告を出せば良いという時代ではなく(そういう事をするのは、潤沢な資金がある大手だけ)、「いかに安く、ピンポイントで自分を必要としている人にアピールするかが大切な時代」だという事。
それが、まさにSNSの役割と言えるでしょう。

「ピコ太郎」はちょっと極端な例で、あれを目指すのは危険もありますが、「ローリスクハイリターン」の良い例でもあります。

SNSでのNG行為

前回の記事で、

「既に(SNS、YouTubeのアカウントを)持っている人でも、あまり効果がない使い方だったり、むしろ逆効果なのでは?と感じるものも少なくありません。」

と書きましたが、それは具体的にどういう事でしょうか?

1.プライベートとビジネスを混同する

僕が思う最もNGな行為は、
「プライベートとビジネスを混同している事」
です。

先ほども書きましたが、SNSは「広告」です。
広告にプライベートな事を表記したり、放送している会社は絶対にありませんよね。

ですが、僕の友人のフェイスブックのタイムラインやツイートでも、音楽の投稿ではなく、今の政権に対しての不満だったり、芸能ニュースのリンクを貼っていたり、飲み会など、友達と遊んでいる写真ばっかり上げている人がいます。

初めてその人のページを見た人が、ざっとタイムラインを見渡した時、何をやりたい人なのかさっぱりわからないのです。

2.ネガティブな情報が多い

それどころか、酔っ払った写真などがたくさん載っていたり、人の悪口や、身の回りで起きた事の愚痴など、ネガティブな情報がたくさんあると、あなたの商品価値を著しく低下させます

ちなみに、今まだアルバイトをしている人は、その事を書くのも基本的にはNG、気を付けてください。

もしもあなたが英語を習いたいと思った時、バイトと掛け持ちをしている見習い講師には習いたくないですよね?(すごく安くてていねいなどのメリットがあれば別ですが)

「自分は政治的な意見も発信していく社会派ミュージシャン」というキャラで投稿する、
「グルメなミュージシャン」という売りで、美味しいお店の紹介なども挟んでみる、
「アルバイトをしながら音楽家を目指す◯◯奏者のページ」というようなタイトルで、日々の苦労を綴りながら成長していく様子をアップしていく、
という方法もないとは言えないので、必ずしもダメだとは言いません。

ですが、このように「意図」してやるのはむしろ「戦略」で、何も知らずに発信する必要のない記事をバラまくのは全く意味が違います。

どちらにしても「バランス」は大切なので、音楽以外の投稿のほうが多いというのは避けたほうが良いでしょう。

3.他人の投稿ばかりシェアする

あとは、良かれと思って他人の投稿ばっかりシェアしている人
特に、自分の意見をひと言も書く事なくURLだけ貼っている人。

これではあなたの個性は伝わらないし、場合によっては、同業他社のライバルの広告を出してあげている行為になります。

僕はプライベートでSNSをやるほど暇ではないので、このような事に気を付け、あくまでビジネスとしての使い方をしていますが、どうしてもやりたい人は、別々のアカウントを作り、プライベートのほうは友人のみの限定公開にする事をオススメします。

ウェブ活用のゴールデンルールとは

2回にわたってウェブの重要性、効果的な使い方、発信の仕方を書いてきました。

上手に使わなければ、時間をかけた割にほとんどの意味がないので、ぜひ工夫をしてみてください。ポイントは、

常にお客様の立場に立って考える

これだけです。

世間ではごく当たり前の事なんですが、学校で練習ばっかりしていた人で、これを理解出来ず(知らず)にいて、仕事に結びついていない人たちを僕はたくさん見ています。

あなたはそういうタイプの人になってしまっていませんか?

次回は、「クラシックだけにこだわらず、ほかのジャンルの勉強をする事の重要性」について書いてみようと思っています。

次回記事:『音大卒の演奏家が仕事を得る方法』 Vol.6 ジャズやポップスまで学びを広げる
前回記事:『音大卒の演奏家が仕事を得る方法』 Vol.4 デジタル技術で受注を増やす(中編)

前回から、デジタル技術にいかに対応するか(テクノロジーを味方につけて仕事を増やすか)のノウハウを書いています。

さっそく、楽譜作成ソフトを購入してみた方はいらっしゃいますか?

今まで手書きだった人は、それをパソコンに切り替えたり、出版された譜面を演奏するだけでなく、自分でアレンジを始めてみるなど、「何か行動を起こす」事が大切です(人より先にやったもん勝ちです)。

自分のウェブサイトをもっていますか?

さて、今回は「ウェブサイト」の重要性について書いていきましょう。

皆さんは自分のホームページやブログ、SNS(フェイスブックやツイッター)、YouTubeのアカウントをもっていますか?

何もやっていない方は、今すぐ何らかの形で始める事を強くオススメします!

また、既にもっている人でも、あまり効果がない使い方だったり、むしろ逆効果なのでは?と感じるものも少なくありません。

自分のホームページをもつ重要性

ウェブサイトには、前述のように幾つかの種類があります。

今回は「なぜ自分のホームページをもっていたほうが良いのか」を解説していきます。

あなたと同じレベルの音楽家は余るほどいる

本シリーズの第1回『音大卒の演奏家が仕事を得る方法 』Vol.1 音楽業界の現状にも書きましたが、生演奏の仕事自体(需要)は確実に減っています。

それに対して、プロになりたいと思っている人はそんなに減っていないか、むしろ増えているため、「供給過多」が起きているとお伝えしました。

厳しい言い方をすれば、「あなたと同じレベルの音楽家は余るほどいる」という事なんです。

学校や家でどんなに一生懸命練習していても、「あなた自身の存在を知ってもらわないと仕事はきません」

そのための一つの有効手段が「ウェブ」です。

ホームページの作成も、以前はHTMLの専門知識が必要だったり、専用のソフトが必要だったのですが、今では友達とのメールのやりとりと変わらないくらい簡単になりました。

インターネットが繋がっていたら、誰でも作成し、発信する事が出来ます。

昔よりはるかに簡単に「自己アピール」が出来るのです。

ホームページは個人商店と同じ

自分のホームページをもつのは、個人商店を立ち上げるようなものです。

「音楽家なのになぜ個人商店をやらなきゃいけないんだ?」と思う人もいらっしゃるかもわかりませんが、フリーランス、個人事業主というのは、個人商店の経営者とほぼ同じだという事に早く気付いたほうが良いでしょう

参考:『音楽は”ビジネス”だ!』

検索結果があなたの信頼性を左右する

たとえば、皆さんは初めての場所に行って、何か美味しいものを食べたい時、どうやって情報を得ますか?

もちろん情報誌や、現地の人に直接聞いてみる方法もあるとは思いますが、ほとんどの人は今、PCやスマホで「検索」しているのではないかと思います。

通常、一般企業がクライアントの案件の場合、間に音楽事務所やプロダクションが入り、音楽家を派遣します(外注とも言います)

僕がお仕事をさせていただいていた、某有名テーマパークでも同じで、我々は親会社所属ではなく、プロダクションの所属でした(規模は小さいですが、ネクストステージ・プロジェクトも、おおむね同じ役割を担っています)。

つまり、音楽事務所というのは、クライアントさんに満足していただける「商品」を提供(納品)出来るかどうかがビジネス成功の鍵なんです。

そのため、たとえばどこかの音楽事務所やプロダクションが初めて僕を呼ぼうと思った場合、責任者の方は

「この人を呼んで大丈夫か?(この人をクライアントさんに納品しても大丈夫か?)」

と考えます。

危機管理が出来ている責任者であれば、声をかける前に、必ず情報収集をしています。

そして、

トロンボーン 藤井
藤井裕樹
フジイヒロキ

などの検索ワードで「ググる」わけです(良かったら試しにやってみてください)。

僕の場合は、「Mt. Fuji Music」という個人ページが一番上に表示されるほか、フェイスブックのアカウントや教えている教室などのページが出てくるので、

「テーマパークの仕事経験があるから、演奏以外のパフォーマンス能力も高そうだな」

「有名なアーティストともたくさん演奏しているので、場慣れしていそうだな」

「大手の音楽教室でも教えていたので、指導も大丈夫そうだな」

といったイメージで、それなりに安心して呼んでいただける状態にあると思います。

ですが、このご時世に、何の情報も出てこない人だったら、頼む側はちょっと不安になると思いませんか?
(近所で見付けた、店内の見えない飲食店や美容室をググって何も出てこなかったら、あなたは入ろうと思いますか?)

もしも事務所側に複数の候補がいる場合、情報がある人とない人、どちらが有利かは一目瞭然でしょう。

演奏力はどの段階で問われるのか

さらに付け加えると、この段階では、「実際に音を聴いて判断される」という行為がいっさいなされていない事に気付かなくてはいけません

音で判断されるのは「現場に呼ばれた後」の可能性も十分にあり得るのです。

単発のお仕事の場合、ネットにある情報が一次書類審査、一回目の仕事が一次面接。そこで結果を出せなければ次は呼ばれない(本採用にはならない)のです

ネクストステージ・プロジェクトでも、音楽家の登録において、YouTubeでの動画審査を導入させていただいたのですが、ある人から、

「たった5分の動画で、しかも直接演奏する事もなく判断される事に納得がいきません」

という問い合わせがありました。
この人はここに書かれている「社会の現実」が全く見えていないのです。

音大の入試や卒試、定期的な試験が生演奏で、長い持ち時間を割いてもらえるのは、「あなた(の親)が高い学費を払っているから」(あなたのほうがお客様だから)です

一般の就活でも、まずは履歴書やエントリーシートで書類審査が行われ、それを通過した人だけが面接に呼んでもらえます。

一流企業、人気企業になればなるほど、その倍率は高いでしょう。

常に人手が足りず、履歴書と面接が同時で「じゃあ、明日から入れる?」と言われて仕事が出来てしまうアルバイトとは状況が違います。

だから就活をしている学生さんは、ボランティア活動をしたり、短期留学などをして、少しでも履歴書がほかの人より映えるように努力しているんですよね。

演奏力だけで仕事がくると思わない事

少し話が逸れましたが、要は音大生ももっと演奏(練習)以外のアピールが必要だという事です。

自分のホームページという「個人商店」を開店し、そこに「どうやったら人が集まって来てくれるか」を考えなくてはなりません。

もちろんあなたが「口コミのみで予約でいっぱいの隠れ家的なお店をもてる音楽家」なら、コツコツと練習だけやっていたら良いと思います。

初回のブログ『“ネクストステージ”へ羽ばたく若い音楽家の皆さんへ』にも書きましたが、僕もそんなレベルではない「凡人」です。

凡人が周囲から興味をもってもらうには、もっと演奏以外の努力が必要なんです!

ビジネスとして音楽をやっていくため(音楽でお金をいただいて生活していくため)には、全くインターネットに関わらずに仕事が出来るというシチュエーションはもうありません(事前のメールのやりとりなどもインターネットです)。

実際に仕事がくるウェブ活用を

最初に「インターネットが繋がっていれば誰でもホームページがもてる」という話をしました。

しかし、無料のホームページを作って顔写真とプロフィールを載せれば仕事がくるわけではありません。

なぜかと言うと、「ほとんどの人が、既にそれくらいの事はやっている」からです。

大切なのは、「いかにほかの人より魅力的なお店を作るか」ですよね。

それには当然、楽譜作成ソフトと同じように、「勉強や投資が必要」となるのです。

僕は自分のホームページを軸に、フェイスブック、ツイッター、YouTubeを利用したマーケティングを行っています。

ホームページ:hirokifujii.com

フェイスブック:facebook.com/hirokifujii.trombone

ツイッター:twitter.com/hiroki_trb

YouTube:youtube.com/user/hirokifujii1/videos

よくある失敗談としては
「とりあえずホームページを作ったけど、1年間まったく問い合わせがありません」
という話を聞きます。

SNSやブログにしてもそうですが、何となくやって仕事がくるほど甘くはありません。

検索エンジンの仕組みや、それぞれのツールの特性を理解したうえで、意図あるウェブ戦略を構築しなければ、そうそう成果は出ない事も知っておいてください。

今回はメインのホームページについて多く解説したので、次回はSNSやYouTubeについてもう少し深く書いてみたいと思います。

次回記事:『音大卒の演奏家が仕事を得る方法』 Vol.5 デジタル技術で受注を増やす(後編)
前回記事:『音大卒の演奏家が仕事を得る方法』 Vol.3 デジタル技術で受注を増やす(前編)

前々回、デジタル技術の急速な進歩によって「生演奏」の仕事が減っているという、ある意味「ネガテイブ」な話をしました。

では逆に、デジタル技術の急速な進歩に「ポジティブ」な要素はないでしょうか?

そうです。

デジタルの台頭は演奏家の脅威である一方で、演奏家もそれを味方に付ける事で大きなアドバンテージを得る事が出来るのです。

確かに、楽器や声がアナログなのはこれからも変わらず、このこだわりを捨てたら音楽家としておしまいですが、テクノロジーの助けを借りる事で世界が広がる可能性も十分にあるんですよ。

にもかかわらず、なぜか音大生は、実にアナログな人が多いですよね。
きっとこの記事を読んでいる方にも、苦手意識をもっている方が多いと思います。

今回は、そんな方にこそ読んでいただきたい内容です。

デジタル技術への「投資」が、あなたにどんな利益をもたらすのか?

出来る出来ない、やるやらないの前に、まずは知る事が第一歩です。

それでは見ていきましょう!

デジタル技術のポジティブ要素

僕が思うポジティブな要素は次のとおりです。

  • 楽譜がパソコンで書けるようになった
  • 自宅でも簡単にレコーディングが出来るようになった
  • ホームページやブログの作成、投稿が簡単になった
  • YouTubeやSNSでお金をかけずに自己PR出来るようになった

順番に見ていきたいと思います。

パソコンで楽譜が書けるメリット

まず、パソコンで楽譜が書けるメリットについて考えてみましょう。

  • よほど手書きで綺麗に書ける人を除いて、一般的にはパソコンで書いたほうが美しい
  • 楽譜の管理、保存、演奏仲間とのやりとりが、紙よりもはるかに楽
  • 一度書いた曲を移調したり、違う編成にアレンジし直すのも簡単(管楽器の移調譜を書くのも簡単)
  • 書いた楽譜の音が出せるので、リハーサルや納品の前にある程度サウンドを把握したり、音源を作ったりする事が出来る

こんなにも便利なのに、音大のカリキュラムに入っている所も少ないし、自分で勉強している人が少ない印象を受けますね。

僕は、22歳でテーマパークのバンドに在籍していたころから使っていました。

拘束時間の中で、ショーとショーの間にけっこうな空き時間があった点と、バンド内に同じ楽譜作成ソフトを使いこなしている仲間が2人いたおかげで、ずいぶん上達しました。

2年目にはテーマパークの運営会社からアレンジの仕事の依頼も受けられるようになりました(もちろん、ソフトの使い方だけでなく、アレンジそのものの勉強もしましたが)。

僕が使用している「Finale(フィナーレ)」という楽譜制作ソフトは5万円以上しますが、学生さんなら「アカデミーパック」もありますし(学生さんほか、教育関係に関わっている証明があれば、3万円台になります)、廉価版なら1万円代からあります。

演奏やアレンジの仕事が広がれば、あっという間に元が取れるレベルの「投資」だと思います。

使わないと損だとは思いませんか?

参考:楽譜作成ソフト「Finale」HP

自宅でもレコーディングが出来る!

CMやドラマ、映画音楽などのレコーディングを生業(なりわい)とする「スタジオミュージシャン」にあこがれる人も多いでしょう。

ですが、そのスタジオミュージシャンの仕事も、デジタル技術の進歩によって激減しています。

以前は複数人数で録音しないといけなかった案件でも、一人で重ね録りが出来てしまったり、そもそもデジタルなサウンドが主流になり、生音が必要とされなくなってしまっているからです(例:生音より、シンセブラスのほうが楽曲に合っている、カッコイイと思われたりする)。

僕はそれを逆手に取り、自宅でレコーディング出来る環境を整えています(演奏可能な物件に住むメリットでもあります)。

僕の自宅スタジオ

レコーディングに使用している「Logic(ロジック)」という音楽制作ソフトは、以前100万円くらいしていたそうですが、今はAppleの傘下になり、なんと2万円代でダウンロード出来るようになりました。

参考:音楽制作ソフト「Logic Pro X」HP

自宅レコーディングの事例①

この楽曲は、僕がブラスのアレンジと録音を行ったのですが、作業はすべて自宅のスタジオです。

プロデューサーさんのほうでは「シンセブラスでいこうか」となりかけていたのですが、「生演奏の良さ」を音で証明出来たので、結果、採用となり、その後なんと3万枚近く売れたそうです。

どんな形であれ、自分の関わった楽曲が多くの方に届いたのは、音楽家として何よりの喜びですよね。

自宅レコーディングの事例②

こちらは、僕が東日本大震災の復興支援も兼ねて制作したオリジナルのCDですが、これも「パソコンで書いた楽譜」と「自宅でのレコーディング設備」をフルに生かしています。

特筆すべきは、楽譜や録音データを海外の友人ともやりとりし、セリーヌ・ディオンやシルク・ドゥ・ソレイユ、ブラストなどでも活躍している、アメリカのミュージシャンにも参加してもらえた事です。

CD詳細:『Lullaby of Angels』

テクノロジーの勉強は「投資」

こんな事が個人レベルでもある程度出来る時代になったのですが、周りを見ても、このような設備を使いこなしている同業者はほとんどいません。

クラシックしかやっていない人はあまり実感がわかないかもしれませんが、自分名義のCDも、ある程度簡単に制作出来るという事です。

音楽家にとって何より大事な「名刺」は『音』ですよね!

ちなみに、ベートーヴェンも交響曲や小さな作品を作っては、貴族や出版社に売って生計を立てていたそうです。
今でいう「コンテンツ」の販売を、彼のような偉大な芸術家もやっていたという事ですね。

演奏の技術を学ぶだけでは、大した「投資」にはなりません。

スマホでゲームをする暇があるなら、ここに書いたような「テクノロジー」を勉強したほうが、音楽家として生き残れる可能性は高くなると思います!

次回はHPやSNSのメリット、活用方法について書いてみたいと思います。

次回記事:『音大卒の演奏家が仕事を得る方法』 Vol.4 デジタル技術で受注を増やす(中編)
前回記事:『音大卒の演奏家が仕事を得る方法』 Vol.2 あなたがやるべき事を知るには

おまけ

今回のデジタル技術を使って僕が実際にしてきた仕事を、僕は自分のホームページでPR(←これとても重要ですよ!)しています。
より具体的に、実践のイメージが実感出来ると思いますので、ご参考までに紹介しておきますね。

実践例:http://hirokifujii.com/sound

※決して宣伝や自慢の意図ではありません。デジタル技術を味方に付ける事で、どれほど仕事の可能性が広がるかを、具体的に感じ取っていただけたら幸いです。

前回のブログ(『音大卒の演奏家が仕事を得る方法』 Vol.1 音楽業界の現状)はいかがでしたか?

「そんなに厳しい世界ならやめておこう」と考えた人もいらっしゃるかもしれません。

それはそれで賢明な判断と言えるでしょう。
前回も書きましたが、強い信念や覚悟がない人がこの業界で生き残っていける可能性はきわめて低いです。

それでは、ここまで読んでもまだあきらめていない人のために(笑)、生き残るためのノウハウを書いていきましょう。

前回の記事は、見方によっては「音楽業界の将来はきわめて暗い」という、絶望的な内容ですが、見方を変えれば、「十分生き残りが可能な余地が残されている状況」だと思います。

そのために大切になるのが、一見ネガティブに感じる状況を受け入れつつ、チャンスを見付ける発想力、行動力です。

どうしたら良いのか、具体的に解説しますね。

ネガテイブとポジティブを両立させる

僕が思う一番大切なポイントは、ネガテイブとポジティブの両立、バランスを取る事です。

そう、“一見ネガティブに感じる状況を受け入れつつ、チャンスを見付ける発想力、行動力”とは「ネガティブとポジティブのバランスを取る事」なのです。

たとえばの話ですが

ネガティブすぎる人は

「音楽業界はそんなに厳しいのか、自分には無理だ。さっさとあきらめて安定した会社に就職しよう」

となります。

逆にポジティブすぎる人は

「音楽業界は厳しいけど、オレには才能があるから大丈夫。絶対大金持ちになれる!」

と考えているかもしれません。

どちらが正しいという話ではないのですが、前者は人生を悲観しすぎだとも考えられます。

このタイプの人は、何でもすぐにあきらめるし、自己責任で人生を切り開いていないので、結果、普通に就職出来たとしても、あまり有意義な人生にならないかもわかりません。

逆に後者は、自信過剰で、危機管理が足りないと言えるかもわかりませんね。

自信をもつ事はとても重要ですが、過剰すぎると「謙虚さ」がなくなり、どんどん周りから人が離れていく可能性もあります。

また、常にどうにかなると思っているので、コツコツ練習するといった努力を怠っている人も多いです。

人が性格を180度変えるのは難しいし、もし本気で変えようとすると、もの凄い労力、ストレスになりますよね。

大切なのは、自分がどのタイプなのかを知る事ではないでしょうか?

ネガティブすぎると思う人は、ある意味「危機管理が出来る人」でもあります。

「石橋を叩いて渡る」慎重な性格を生かしつつ、少し「自分に自信をもつ」要素が入れば、十分に成功する可能性はあります!

ポジティブすぎると思う人は、「失敗を恐れずに突き進める力をもった人」です。

「明日は明日の風が吹く」というような大らかな性格を生かしつつ、少しだけ「危機管理意識をもって人と接したり、コツコツ練習を積み重ねていけば」、やはり十分に成功する可能性があるのではないでしょうか?

メロディーと伴奏もそうですし、ハーモニーの構成音もそうですが、何事も「バランス」は大切ですよね!

「演奏のみ」で生活出来るという考えを捨てる

先日、「のだめカンタービレ」の吹き替え演奏で有名になったピアニストの清塚信也さんがテレビでおっしゃっていたのですが、音大を出て、ピアノの演奏のみで生活出来ている人は全体の1%らしいです。

これは僕自身も実感があり、周りを見渡してもピアノだけの話ではなく、どの楽器や声楽にも当てはまる「事実」だと感じます。

つまり、

多くの人は「レッスン」など、演奏以外の仕事もやっている

という事ですよね。

「演奏のみ」にこだわって頑張るのを否定するつもりはありませんが、その方は「1%のトップクラスにならなければいけない」という現実を肝に銘じておいてください。

自分にそれだけの実力や運があるか、自分自身の評価を正確に出来る能力はとても大切です。

ちなみにですが、ショパンでさえ、収入源はエチュードを作って貴族を相手にレッスンする事だったらしいですよ!
ピアニストや作曲家として評価されたのは、もっと後世になってからなのかもしれません。

自分を知ればこそ、やるべき事が見えてくる

今回書かせていただいたノウハウは、
「ネガティブとポジティブのバランスを取る」事と、
「演奏のみで生活出来るという考えを捨てる」の2点です。

共通するポイントは、

自分自身をもっとよく知る

という事です。

誰しも経験があると思いますが、他人の事はいろいろ気付くのに、意外と自分の事はよくわからないものです。

「自分はどんな性格なのか」、「自分は何が苦手で、何が得意なのか」など、もっと自己分析が出来ていれば、それを踏まえて戦略を立てる事が出来ます。

自分でよくわからないという人は、両親や友人に聞いてみると良いかもしれません。

たとえば、自分ではピアノを演奏するしか特技がないと思っていても、子どもが好きで、あやしたりするのがうまいと周りの人が教えてくれるかもしれませんよね。

こういう人は、子どものためのピアノ教室の先生に向いているかもわかりません。

まずは自分自身をもっとよく知るところから始めてみてください。

次回は「デジタル時代にどう対応していくか」を書いてみたいと思います。

次回記事:『音大卒の演奏家が仕事を得る方法』 Vol.3 デジタル技術で受注を増やす(前編)
前回記事:『音大卒の演奏家が仕事を得る方法』 Vol.1 音楽業界の現状

ガッツポーズをする女性前々回より

▼音大進学前の中高生へのアドバイス
『“音大に行きたい”と“プロになりたい”は違う』

▼音大在学中の学生さんへのアドバイス
『生き残る人の音大時代、消えゆく人の音大時代』

をお届けしてきました。

さて、いよいよ今回のテーマは

音大卒業後に演奏家が仕事を得て生き残る方法です。

大事なお話なので、全7回に分けて語りたいと思います。

音楽業界(ビジネス)の現状

まずは率直に「音楽業界(ビジネス)の現状」を僕の視点でお話しします。

残念ながら、あまり明るい話ではありません。

ハッキリ言いますが、

仕事は減っています!

特に、器楽や歌で、クラシック、ジャズなどの生演奏を提供する仕事は激減していると言っても過言ではありません。

その理由を幾つか挙げてみたいと思います。

デジタル技術の急速な進歩

ご存じのとおり、昔は生演奏しかありませんでした。
演奏された音楽を保存する技術がなかったからです。

それが、蓄音機に始まり、レコードが開発され、僕が小学生のころにCDになりました。

そのころまでは進歩も比較的ゆるやかで、コンサートやライブにも足を運んでもらえるし、会場やお店でCDも売れていました。

ところが、ここ最近はどうでしょう?

何か参考音源を聴きたいと思えば、たいていはYouTubeにあるし、お金を払ったとしても、月に1000円程度で聴き放題です。

一見とても便利になったように感じますが、これが意味するのは、

「演奏を聴くために高いお金を払う必要がなくなった」

という事です。

テレビの音楽番組でも、アイドルが歌っているけど、バックにバンドはなく、言わばカラオケ状態だったり、ミュージカルや舞台を観に行っても、以前はオーケストラの生音だったのが、オーディオを再生するだけに変わっていたりします。

制作側の一番のメリットは、制作費、人件費がかからない事、そして、レコーディングされた演奏は絶対間違わず、同じ演奏が出来るので、放送事故などが起こりにくいという事です。

制作側にとってはメリットでも、演奏を生業(なりわい)にしている我々には死活問題ですよね。

クラシックだって仕事が減っている

自分はエンタメ業界とは関係ない、クラシックが生演奏である事はこの先も変わりない。そう思われる方もいらっしゃるでしょう。

ですが、クラシックそのものを聴く人が減れば、当然、提供する側の仕事も減るわけで、もしもコンサートに行って「お客さんの年齢層が高いな」と感じるのであれば、極論かもしれませんが「近い将来、聴く人がいなくなる」事を意味します。

「需要」と「供給」のバランスが崩れている

ざっくり言ってしまえば、

「需要」とは「世の中にどれだけの仕事があるか」です。

「供給」とは「その仕事を欲しがっている人がどれだけいるか」です。

音楽家も広くとらえれば芸能界ですので、お笑い芸人さんを思い浮かべてみると良いでしょう。

テレビなど、報酬の高い仕事が出来ている芸人さんはほんのわずかで、バイトをしながら劇場に出て、芸人さんとしての月収は数千円という人が数えきれないほどいます。

学校もビジネス

その芸人さんたちは、「お笑い芸人としてビッグになる」という夢をもって、まずどこに行くか?

それが「養成所」ですよね。

将来の夢が安定した公務員なんて人が増えている時代ですが、必ず一定数夢をもった人がいます。

そういう人たちが通う「学校」はビジネスになるという事です。

学校は、あなたがその業界で成功する事を保証してくれる場所ではありません。

言葉は悪いですが、才能のあるなしに関係なく、夢のある人を集めてお金を取る場所でもあります。

芸人、声優、俳優、音楽家など、需要に対して、簡単に入れてしまう養成所や学校が多すぎると思いませんか?

こうして学生が増えてしまうため、「供給過多」が起きているのは紛れもない事実です。

待遇の悪化

(予算の)安いデジタル音楽が主流になり、生演奏はお金のかかる高級品となってしまいました。

それによって何が起きるかと言うと、「待遇の悪化」です。

ひと昔前に比べ、同じ仕事でも報酬額が激減している現場も少なくありません。

さらに、「供給過多」により、安くてもやりたい人はいくらでもいるので、結果、どんどん相場が下がっていくという「負のスパイラル」が起きているのです。

どうすれば生き残れるのか?

僕がこの記事を書いたのは、「音大に行くのはやめなさい、プロを目指すのはやめなさい」という意図ではありません。
むしろ、もっと夢をもって頑張ってほしいと思っています。

まずは現実を知り、受け入れる事から始まります。

多くの学生さんやその親御さんは、業界の華やかな部分ばかりを見ていて、ここに書いたような現実を知らない人がほとんどです。

まずは現実を知り、それを受け入れ、

「それでも自分は音楽家として成功したいんだ!」
という強い信念のある人しか、将来夢をつかめないと言っても過言ではありません。

次回はもう少し具体的に、どうすれば生き残れるのかを書いてみようと思います。

次回記事:『音大卒の演奏家が仕事を得る方法 』 Vol.2 あなたがやるべき事を知るには
前回記事:『生き残る人の音大時代、消えゆく人の音大時代』

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