音楽家のサバイバル術A way for musicians to survive
デジタル技術で受注を増やす(中編)『音大卒の演奏家が仕事を得る方法』 Vol.4
前回から、デジタル技術にいかに対応するか(テクノロジーを味方につけて仕事を増やすか)のノウハウを書いています。
さっそく、楽譜作成ソフトを購入してみた方はいらっしゃいますか?
今まで手書きだった人は、それをパソコンに切り替えたり、出版された譜面を演奏するだけでなく、自分でアレンジを始めてみるなど、「何か行動を起こす」事が大切です(人より先にやったもん勝ちです)。
- 音楽業界の現状
- あなたがやるべき事を知るには
- デジタル技術で受注を増やす(前編)
- デジタル技術で受注を増やす(中編):今回記事
- デジタル技術で受注を増やす(後編)
- ジャズやポップスまで学びを広げる
- レッスンの仕事に誇りをもとう!
自分のウェブサイトをもっていますか?
さて、今回は「ウェブサイト」の重要性について書いていきましょう。
皆さんは自分のホームページやブログ、SNS(フェイスブックやツイッター)、YouTubeのアカウントをもっていますか?
何もやっていない方は、今すぐ何らかの形で始める事を強くオススメします!
また、既にもっている人でも、あまり効果がない使い方だったり、むしろ逆効果なのでは?と感じるものも少なくありません。
自分のホームページをもつ重要性
ウェブサイトには、前述のように幾つかの種類があります。
今回は「なぜ自分のホームページをもっていたほうが良いのか」を解説していきます。
あなたと同じレベルの音楽家は余るほどいる
本シリーズの第1回『音大卒の演奏家が仕事を得る方法 』Vol.1 音楽業界の現状にも書きましたが、生演奏の仕事自体(需要)は確実に減っています。
それに対して、プロになりたいと思っている人はそんなに減っていないか、むしろ増えているため、「供給過多」が起きているとお伝えしました。
厳しい言い方をすれば、「あなたと同じレベルの音楽家は余るほどいる」という事なんです。
学校や家でどんなに一生懸命練習していても、「あなた自身の存在を知ってもらわないと仕事はきません」。
そのための一つの有効手段が「ウェブ」です。
ホームページの作成も、以前はHTMLの専門知識が必要だったり、専用のソフトが必要だったのですが、今では友達とのメールのやりとりと変わらないくらい簡単になりました。
インターネットが繋がっていたら、誰でも作成し、発信する事が出来ます。
昔よりはるかに簡単に「自己アピール」が出来るのです。
ホームページは個人商店と同じ
自分のホームページをもつのは、個人商店を立ち上げるようなものです。
「音楽家なのになぜ個人商店をやらなきゃいけないんだ?」と思う人もいらっしゃるかもわかりませんが、フリーランス、個人事業主というのは、個人商店の経営者とほぼ同じだという事に早く気付いたほうが良いでしょう。
検索結果があなたの信頼性を左右する
たとえば、皆さんは初めての場所に行って、何か美味しいものを食べたい時、どうやって情報を得ますか?
もちろん情報誌や、現地の人に直接聞いてみる方法もあるとは思いますが、ほとんどの人は今、PCやスマホで「検索」しているのではないかと思います。
通常、一般企業がクライアントの案件の場合、間に音楽事務所やプロダクションが入り、音楽家を派遣します(外注とも言います)。
僕がお仕事をさせていただいていた、某有名テーマパークでも同じで、我々は親会社所属ではなく、プロダクションの所属でした(規模は小さいですが、ネクストステージ・プロジェクトも、おおむね同じ役割を担っています)。
つまり、音楽事務所というのは、クライアントさんに満足していただける「商品」を提供(納品)出来るかどうかがビジネス成功の鍵なんです。
そのため、たとえばどこかの音楽事務所やプロダクションが初めて僕を呼ぼうと思った場合、責任者の方は
「この人を呼んで大丈夫か?(この人をクライアントさんに納品しても大丈夫か?)」
と考えます。
危機管理が出来ている責任者であれば、声をかける前に、必ず情報収集をしています。
そして、
トロンボーン 藤井
藤井裕樹
フジイヒロキ
などの検索ワードで「ググる」わけです(良かったら試しにやってみてください)。
僕の場合は、「Mt. Fuji Music」という個人ページが一番上に表示されるほか、フェイスブックのアカウントや教えている教室などのページが出てくるので、
「テーマパークの仕事経験があるから、演奏以外のパフォーマンス能力も高そうだな」
「有名なアーティストともたくさん演奏しているので、場慣れしていそうだな」
「大手の音楽教室でも教えていたので、指導も大丈夫そうだな」
といったイメージで、それなりに安心して呼んでいただける状態にあると思います。
ですが、このご時世に、何の情報も出てこない人だったら、頼む側はちょっと不安になると思いませんか?
(近所で見付けた、店内の見えない飲食店や美容室をググって何も出てこなかったら、あなたは入ろうと思いますか?)
もしも事務所側に複数の候補がいる場合、情報がある人とない人、どちらが有利かは一目瞭然でしょう。
演奏力はどの段階で問われるのか
さらに付け加えると、この段階では、「実際に音を聴いて判断される」という行為がいっさいなされていない事に気付かなくてはいけません。
音で判断されるのは「現場に呼ばれた後」の可能性も十分にあり得るのです。
単発のお仕事の場合、ネットにある情報が一次書類審査、一回目の仕事が一次面接。そこで結果を出せなければ次は呼ばれない(本採用にはならない)のです。
ネクストステージ・プロジェクトでも、音楽家の登録において、YouTubeでの動画審査を導入させていただいたのですが、ある人から、
「たった5分の動画で、しかも直接演奏する事もなく判断される事に納得がいきません」
という問い合わせがありました。
この人はここに書かれている「社会の現実」が全く見えていないのです。
音大の入試や卒試、定期的な試験が生演奏で、長い持ち時間を割いてもらえるのは、「あなた(の親)が高い学費を払っているから」(あなたのほうがお客様だから)です。
一般の就活でも、まずは履歴書やエントリーシートで書類審査が行われ、それを通過した人だけが面接に呼んでもらえます。
一流企業、人気企業になればなるほど、その倍率は高いでしょう。
常に人手が足りず、履歴書と面接が同時で「じゃあ、明日から入れる?」と言われて仕事が出来てしまうアルバイトとは状況が違います。
だから就活をしている学生さんは、ボランティア活動をしたり、短期留学などをして、少しでも履歴書がほかの人より映えるように努力しているんですよね。
演奏力だけで仕事がくると思わない事
少し話が逸れましたが、要は音大生ももっと演奏(練習)以外のアピールが必要だという事です。
自分のホームページという「個人商店」を開店し、そこに「どうやったら人が集まって来てくれるか」を考えなくてはなりません。
もちろんあなたが「口コミのみで予約でいっぱいの隠れ家的なお店をもてる音楽家」なら、コツコツと練習だけやっていたら良いと思います。
初回のブログ『“ネクストステージ”へ羽ばたく若い音楽家の皆さんへ』にも書きましたが、僕もそんなレベルではない「凡人」です。
凡人が周囲から興味をもってもらうには、もっと演奏以外の努力が必要なんです!
ビジネスとして音楽をやっていくため(音楽でお金をいただいて生活していくため)には、全くインターネットに関わらずに仕事が出来るというシチュエーションはもうありません(事前のメールのやりとりなどもインターネットです)。
実際に仕事がくるウェブ活用を
最初に「インターネットが繋がっていれば誰でもホームページがもてる」という話をしました。
しかし、無料のホームページを作って顔写真とプロフィールを載せれば仕事がくるわけではありません。
なぜかと言うと、「ほとんどの人が、既にそれくらいの事はやっている」からです。
大切なのは、「いかにほかの人より魅力的なお店を作るか」ですよね。
それには当然、楽譜作成ソフトと同じように、「勉強や投資が必要」となるのです。
僕は自分のホームページを軸に、フェイスブック、ツイッター、YouTubeを利用したマーケティングを行っています。
ホームページ:hirokifujii.com
フェイスブック:facebook.com/hirokifujii.trombone
ツイッター:twitter.com/hiroki_trb
YouTube:youtube.com/user/hirokifujii1/videos
よくある失敗談としては
「とりあえずホームページを作ったけど、1年間まったく問い合わせがありません」
という話を聞きます。
SNSやブログにしてもそうですが、何となくやって仕事がくるほど甘くはありません。
検索エンジンの仕組みや、それぞれのツールの特性を理解したうえで、意図あるウェブ戦略を構築しなければ、そうそう成果は出ない事も知っておいてください。
今回はメインのホームページについて多く解説したので、次回はSNSやYouTubeについてもう少し深く書いてみたいと思います。
次回記事:『音大卒の演奏家が仕事を得る方法』 Vol.5 デジタル技術で受注を増やす(後編)
前回記事:『音大卒の演奏家が仕事を得る方法』 Vol.3 デジタル技術で受注を増やす(前編)