音楽家のサバイバル術A way for musicians to survive

はじめに

“音大に行きたい”と“プロになりたい”は違う?

今回は、将来音楽の道に進みたい中学生や高校生へのアドバイスをします。

プロの音楽家(ミュージシャン)になる方法を教えて!!
音楽の仕事に就くにはどうしたらいいの?!

そんなふうに進路に悩む中高生へ、音大に進学する前の話について書いてみようと思います。

中高生時代の考え方が大切な理由

さて、タイトルにも書いた『”音大に行きたい”と”プロになりたい”は違う』という点。

どこが違うでしょうか?
ずばり答を書いてしまうと、
それは

「ゴールの位置」です。

前者は「音大に入った所がゴール」、後者は「プロになった所がゴール」です。

中高生に「将来の夢」をたずねた時、
「音大に行きたいです!」って答える人、けっこういませんか?

「じゃあそれからどうしたいの?」と聞くと、その先が答えられない。

ハッキリ言いますが、このタイプの人は成功しない確率が高いです。

その理由は、目標が明確でないから!
「音楽を専門にする仕事」と言っても、いろいろな選択肢がありますよね?

クラシックをメインにする演奏家、ジャズやポップスをメインにする演奏家。

その中でも、コンサートやライブを中心にしている方もいらっしゃれば、レコーディングを中心とした、いわゆるスタジオミュージシャンと呼ばれる方もいらっしゃいます。

作編曲家や、レッスンを中心に行うインストラクター、完全に音楽の先生として、学校に就職される方もいらっしゃるわけです。

共通の部分もたくさんありますが、音大の在学中にどんな勉強や練習をするかの割合や優先順位は、目標によってかなり違ってくるのではないでしょうか?

それ以前に、選ぶべき学校そのものが違うとも言えます。

音大というのは、「プロになりたい」という夢をかなえるためのプロセス、手段でしかないという事です。

ところが、「音大に行きたい」が夢になってしまっている人はそこがゴール、入学した時点で夢がかなっているので、その後、何をしていいかがわからなくなります。

僕が中学・高校時代にした事

ちなみに僕の場合ですが、最初は(大阪の中学で吹奏楽部に入りたてのころ)管楽器のリペアマンとか、楽器店で働いてみたいと思っていました。

当時はプロ奏者との接点などありません。

ボロボロの学校備品を修理に出したら、キレイに直って戻ってきたり、お店でピカピカの楽器を見て「あんなの欲しいな」と思っていた事から、おそらくそういう現場にあこがれたのでしょう。

もし僕がそのままリペアマンを目指していたのであれば、その過程としては、リペアの専門学校に進むのが近道ですよね。
音大では修理を教えてくれません。

その後、中2で大阪から東京に出てきて、たまたまコンクールで全国大会に出場している吹奏楽部に入ります。

そこでプロ奏者のレッスンを受けたり、コンサートにもたくさん足を運ぶようになり、僕はプロのトロンボーン奏者になりたいと思うようになりました。

ちなみにこの時はまだ、クラシック奏者としてです。
ウチはそれほど裕福ではなく、私立の音大は絶対NGだったため、東京芸大を目標としていました。

高校に入ってからは、国内外のジャズ、ポピュラー系のアーティストとたくさん関わるようになり、自分の気持ちはクラシックでないほうに傾いていきます。

当時は今ほどジャズ科のある学校はなかったですし、あってもそれらは私立。

海外のアーティストと接する事で、将来アメリカで勉強したいとの想いが芽生えはじめ、結果、僕は日本では大学に行かない(高卒のままプロを目指す)という選択をしました。

早いうちからゴールを描く事

僕の選択はリスクも高く、万人に当てはまる方法とは言えません。

皆さんに薦めるつもりもないし、「音大に行かないほうがいいよ!」と言ってるわけでもありません。

ただ、自分が将来どうなりたいのかをよく考え、現時点で最も夢に直結した道を選びましょう!
という話です。

ほとんど何も考えずに音大がゴールになってしまっているのはもってのほか。

プロになりたいにしても、出来るだけ具体的に「自分の進みたい道」を思い描いたほうが良いと思います。

そうすれば、おのずと今、何をすべきかが見えてきます。

この思考の大切さは一生ついてまわると思います。

思い描いていたとしても、現実はそのとおりにいくとは限りません。
と言うか、いかない事のほうが多いです。

それに、実際はプロになった所がゴールではなく、あくまでスタートラインは通過点ですからね!
僕自身、何度も軌道修正や目標の再設定をしています(夢が変わっていく事は悪い事ではありません。むしろ自然です)。

ですが、軌道(計画)があって修正するのと、そもそも軌道すら描いていないのとは全く別モノ!
だという事を肝に銘じておいてください!

これから音大を目指す人は、この文のまま理解していただければ、きっと役に立つと思います。

現役生や卒業生の方は、自分が入学前、または在学中、どんな思考だったかを考えてみてください。
これからどのように考えて行動していけば良いかが、きっと見えてくるのではないでしょうか。

今回は、音楽の道を目指す中学生や高校生に向けてのアドバイスでした。
次回は、今回お話しした両者が音大に進学した場合、どのように学生時代の差が出るかを見ていきます。

次回記事:『生き残る人の音大時代、消えゆく人の音大時代』
前回記事:『音楽は“ビジネス”だ』

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記事を書いた人

藤井裕樹
藤井裕樹(フジイヒロキ)

NPO法人ネクストステージ・プランニング音楽ディレクター。中学でトロンボーンを始め、大学には行かず19歳でプロになる。ジャズやポピュラー音楽を中心に、某人気テーマパークでの演奏や、有名ミュージシャンとの共演多数。詳しくは「ネクストステージ」へ羽ばたく若い音楽家の皆さんへ

HP: https://mtfujimusic.com/

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