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NSP奨学生執筆記事

スマートフォン撮影のための録音マイク徹底比較レポート!

こんにちは。第3期NSP奨学生の、原あいらと申します。

昨今、多くのジャンルでオンライン配信の活動が増えてきましたが、クラシックの音楽家はアナログな傾向があるように感じます。
楽器にはこだわり出費を惜しまない一方で配信機材はスマホのままだったり。特にオーディションなどでは損をする可能性がありますが、なかなか慣れない場合、工夫せずそのまま送ってしまう…
こういう事、皆さんもやっちゃってませんか?
実は私も知らない事が多くて、収録迷子だったところ、今回はこんな体験をしました!
皆さんにもぜひ知っていただきたいです。

連載・第5回目としてスマートフォンで録音可能なマイク徹底レポートをお届けします!

なぜスマートフォンに限定したかというと、自分たちで収録する場合、スマートフォンを使用することが圧倒的に多いからです。それ以外の機材を使う場合は自分で揃えるのが大変ですし、大抵が業者に頼むことになりますよね。するともちろんコストもかかってきます。
なので今回は、スマートフォンの使用を前提に、いかに音質をよく出来るかということに注視しました。

どんなマイクを使ったの?

前回の記事では、オンラインでの音楽活動についてご紹介しました。
今読んでくださっている皆さんの中にも、きっともうすでに取り組んでいる人、あるいはこれから取り掛かろうという人、いらっしゃるかと思います。
せっかく収録するなら、より良い音質を求めたいですよね。

今年の夏、株式会社マウントフジミュージックMt. Fuji Music 様のスタジオにて代表、そしてNPO法人ネクストステージ・プランニング様の音楽ディレクターも務められている藤井裕樹さんと、ピアニストの安斎航さんと共に、録音マイクの比較テストに挑戦しました。
今回の収録は、私たち音楽家がスマートフォンを使用した場合というコンセプトで行いました。
お二人のコメントも併せてご紹介していきます!

今回の検証に使用したマイク一覧はこちら。
下に行くほど順に、ハイクオリティなものになっています。

・SHURE MV88
・SHURE BETA 57A
・BeyerDynamic  TG V70d
・AKG C414 XLS
・AKG C414 XL II
・NEUMANN U87Ai Studio Set

なんと、6種類ものマイクを試させてくださいました。
中には本格的なレコーディングや、コンサートホールで行われるクラシックの音楽番組の収録で使われているような超高級品も…!
なかなか個人では手に入れることが難しい本格的なマイクのクオリティの高さには衝撃を受けました。

聴き比べしてみよう!

それではさっそくご紹介していきます。
曲はイタリア人作曲家、G.プッチーニ作曲のオペラ『ジャンニ・スキッキ』より、「私のお父様」より一部抜粋で歌わせていただきました。
安斎航さんの素晴らしいピアノの音色も、ぜひお楽しみください。

テスト⓪ マイク無し(iPhoneのみ)

こちらはスマホで直撮りのもの。
ここからどんなふうに変化するのかドキドキです。

テスト① SHURE MV88

まずはSHURE社のスマートフォン専用外付けマイク。
スマホにそのまま接続して普通に使用するだけでランクアップが可能なマイクなので、とてもお手軽です!

上記のリンクにも「スマートフォンでの音声収録も、SHUREがあれば一流に」と商品の説明がされています。

(MV88 iOS デジタル・ステレオ・コンデンサー・マイクロホン)

〈感想〉
原「わぁ、なんだか音がクリアになった!という印象が。」
安斎さん「マイクと楽器の距離は同じなのに、音の細部を拾っている感じがします」
藤井さん「このマイクには無料の専用アプリがあり、録音(入力)レベルを調整出来るので、テスト⓪ のような、ただ音が大きく収録されているという状態や、音割れ、音ムラが起きません。スマホに直で挿すことが出来、専門的な知識がなくても簡単に使用出来るというのはとても大きなメリットです」

テスト②-1 SHURE BETA 57A

次は①と同じくSHURE社の外付けマイク。

上記の商品説明によると、「プロミュージシャンが使用するギターアンプ、アコースティックギター、サクソフォン、スネアドラムやブラス用のマイクロホンとして最適。ボーカルアーティストにも使用可能。ステージ上でもスタジオ内でも両方使える頑丈さとクオリティーを兼ね備えています」とのこと。

まずは、オーディオインターフェイス* 無しで下記のケーブルを使用して収録してみました。
(*オーディオインターフェイスとは、マイクで収録した音をデジタル変換し、パソコンやスマホに取り込むための装置)

(マイク:SHURE BETA 57A/オーディオインターフェイス:無し)

〈感想〉
原「音がテスト⓪と①に比べてよりまろやかで、声の震えなどの細かい部分も繊細に拾ってくれているように感じます。」
安斎さん「低音がとても豊かです!音の伸びもいいですね!」
藤井さん「オーディオインターフェイス代わりに使った上記のケーブルは、600円台にしては悪くないですよ(ダイナミックマイクなら装着可能。)」

テスト②-2 SHURE BETA 57A オーディオインターフェイス有り

次に、マイクは同じまま、スマートフォン用のオーディオインターフェイス使用して録音してみました。「TASCAM ixz 」を使用しています。

(マイク:SHURE BETA 57A /オーディオインターフェイス:TASCAM ixz)

〈感想〉
原「より華やかな音のように感じます、とりわけ高音の部分など。そして一つ気付いたのですが、インターフェイスを使うとあまりの性能の良さに、椅子の軋みの音や呼吸の音などもありのままに入っていますね!」
安斎さん「高音から低音までのバランスが良い!歌がよりよく響いている気がします。僕は好みかも!」
藤井さん「iXZというスマホ用のオーディオインターフェイスは6000円弱にしては使えるのでオススメですよ。一つ前の600円のケーブルの際と同じマイクですが、やはりこちらのほうが良い音で録れています。電池式とは言え、ファンタム電源があるので、コンデンサーマイクにも使えるのもポイントです」

 

テスト③ BeyerDynamic  TG V70d

マイクといえばこの形、このイメージ!という見た目のBeyerDynamic TG V70d。

上記の商品説明にはロックボーカリストに最適と書いてありました。
低音域や大音量のステージにぴったりのマイクだそう。
実際収録してみるとどのようになるでしょうか。低音に注目です。

(マイク:BeyerDynamic  TG V70d /オーディオインターフェイス:TASCAM ixz)

〈感想〉
原「やっぱり中音域〜低音部分がより充実しているように感じます。もしかすると、男声の特にバリトンやバス歌手が撮ったら大迫力になるかもしれませんね」
安斎さん「このマイクは細部の音まできっちり拾っている感じです。その意味で美しいです」
藤井さん「テスト②のSHURE 57BETAとテスト③のBeyerDynamicは『ダイナミックマイク』という分類で、比較的安価とは言え、後者だと2〜3万円するので、安い『コンデンサーマイク』なら買えますね。どちらが良いかはシチュエーションや好みによります。値段的には、一般の人が投資出来るのはおそらくこのくらいまでかな?」

テスト④ AKG C414 XLS

この辺りからはもう素人にはなかなか手の出せない敷居の高いラインナップになってきました…!AKG(アーカーゲー)社のコンデンサーマイクです。

上記の商品説明によれば、テスト④はピアノなどにオススメされていましたが、こちらはより「リアリティーのあるサウンド」「ボーカル、ドラム、パーカッション」などに向いているとのこと。

(マイク:AKG C414 XLS/オーディオインターフェイス:TASCAM ixz)

〈感想〉
原「“リアリティーのあるサウンド”という説明がされているだけあって、演奏者の技量が試されますね!悪いところもそのまま拾われてしまうかも。こちらはしっかり、ふんわりとした響きが合うのは次にご紹介する⑤かな?」
安斎さん「声や息使いの奥の方まで拾っている感じがしました」
藤井さん「AKG C414は8万円〜12万円、この後ご紹介するNeumannは30万円代後半〜40万円半ばくらいするので、一般の人が使うのは現実的ではないかもしれません。このクラスのマイクを6000円程度のオーディオインターフェイスに接続して使うのもどうなのか?(宝の持ち腐れ?)〉

テスト⑤ AKG C414 XL II

次にご紹介するのはテスト④と同じくAKG社のC414 XL II 。10万円を超える高級マイクです!

「癖のない音質で、ボーカルやギター、管楽器、ピアノなど、様々な音源に使用可能」と上記の商品説明に記載されていました。
このマイクはまさにクラシック音楽の収録にぴったりのよう。
では、いざ聴いてみましょう!

(マイク:AKG C414 XL II /オーディオインターフェイス:TASCAM ixz)

〈感想〉
原「なんて綺麗な音質!ぐっと音が変わる気がします。ヴァイオリンなど弦楽器にも良さそうですね」
安斎さん「他のマイクより音が少し細い感じですが繊細です」
藤井さん「先程のAKG シリーズC414 XLSとこちらでは、もう好みの問題と言えるかもしれません」

テスト⑥ NEUMANN U87Ai

コンサートホールなどでも多く使用されているマイクです。
見せていただいた時から、もうケースはまるで宝石箱、中身のマイクは宝石のようで、期待感が高まります。

なんとお値段も50万円近くするマイク。
ここまで揃えられたらもうプロの業者さんですね…!

(マイク:NEUMANN U87Ai /オーディオインターフェイス:TASCAM ixz)

〈感想〉
原「聴いてびっくりしました。別格ですね…こんなにも変わるなんて!この音で収録できたら、コンクールやオーディションのためにも良いですよね」
安斎さん「歌が前面に出ていてゴージャスに聞こえます」
藤井さん「この『ノイマン87』は、レコーディングスタジオやテレビ・ラジオの収録でよく使われる、最もポピュラーかつ高品質のマイクです。先ほどもコメントしたように、30万円代後半〜40万円半ばくらいの高価格のマイクを6000円程度のオーディオインターフェイスにつないで使用する人はいないと思いますが(笑)、今回はあえて比較のために同じ条件にしました。とは言え、この状況でもマイクによる音質の違いは表現されている気がしますね」

全部を比べてみよう

それでは最後に、すべてを順にまとめた動画を作ってみました!
いかがでしょうか?

ボーナストラックとして、藤井さんも比較動画を作ってくださいました!

藤井さん「この動画では、『スマホのみ』と、『スマホ+高級マイク+高級オーディオインターフェイス』という形で、今回紹介している中で最もロークオリティーとハイクオリティーの比較をしてみました。「iXZ」ではなく、「apollo x4」という20万円以上するオーディオインターフェイスを使用し、映像と音声は別で収録、後から合成しています(コンサートホールのような響きになるように、多少調整もしています)。手間はかかるけど、やっぱりそれだけ高品質になります。特にNeumannのような高級マイクを使うと差は歴然というサンプルになりますね」

まとめ

今回検証したテストの中で、とにかく手っ取り早く良い音で録れるのはMV88ということが判明!
私のようなあまり専門知識がない者でも、とりあえずスマートフォンで収録するなら、直接繋いで使用出来るタイプのマイクを持っておくと良いと学べました。

藤井音楽ディレクターに取材したところ、
「もはやこのご時世、スマホやマイクは楽器の一部と言っても過言ではありません。
プロで、アマチュアレベルの安い楽器で仕事をしている人はいないのに、(特にクラシックの)音楽家が機材に弱すぎて、スマホのまま平気で配信したり、オーディションに送ってしまっている音は危険。損をしている可能性が高い。

予算の範囲で構わないので、出来る限り良い音質で配信や動画制作をしましょう。
そして、オーディションなど、ふだん以上に気を使う場面では、うちのようなプロに依頼したほうが良いかもしれません」
というようなコメントをいただきました。

今後ますます必要になってくるオンラインの知識や収録のための知識…勉強するのは大変ですが、使いこなせたら自分の演奏にも大きな武器になるはず。
この機会に私もさっそくMV88のマイクを購入!
演奏する音楽はクラシックでも、世間に向けて発信出来るように必死で時代について行きたいと思います。

お読みくださりありがとうございました!

安斎航
安斎 航 | ピアニスト | 公式ウェブサイト

藤井裕樹
Mt. Fuji Music – Music Production & School –

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