音楽家のサバイバル術A way for musicians to survive
謙虚さ、感謝がある、謝罪が出来る『フリーランスで成功するための“10の秘訣”』 Vol.1
前回までの特集、「輝く7人の音楽家たち」はいかがでしたか?
僕自身も同世代の尊敬する音楽家の皆さんの生き方を伺ってみて、さらに価値観を広げることができました。
この7人のほか、今まで出会ったさまざまな音楽家を思い返してみて、生き残っている人には多くの共通点がある事に気付きました。
今回から10項目に分け、職業音楽家として、特にフリーランスで成功するための秘訣をお伝えしていこうと思います。
- 謙虚さ、感謝がある、謝罪が出来る
- 自己管理が出来ている
- 時間、期限を守っている
- 電話、メールなどできちんと連絡が取れる
- コミュニケーション能力がある
- 自分の価値がわかっている
- お金の価値がわかっている
- 自己投資が出来る
- 音楽以外の能力をもち合わせている
- 音楽が好きである、信念がある
1. 謙虚さ、感謝がある、謝罪が出来る
我々は音楽家である以前に一人の人間ですよね。
人として魅力のない人には仕事は来ない(続かない)のではないでしょうか。
その基本が「謙虚さ」と「感謝」ではないかと思います。
謙虚さが現状に甘んじない向上心を生む
中澤さんの記事の際にも書きましたが、フリーランスは特に現状維持をしようと思っているだけでは生き残れないと思っています。
つまり「向上心」をもつ事。
では、その向上心はどこから来るのかと言えば、それは「謙虚さ」からだと思うのです。
「自分はまだまだ」は、もっと「頑張らないといけない」(成長)につながっていきますよね。
似たような言葉に「謙遜」(けんそん)というのがありますが、日本人はこちらが強い、強すぎる人が多いと感じます。
手みやげを持って行った際に「つまらないものですが……」という、アレですね。
「6. 自分の価値がわかっている」でも触れますが、自分を下げすぎる必要はありません。
日本は特に「能ある鷹は爪を隠す」文化があり、「出る杭は打たれる」社会環境があります。
その問題に触れると論点がずれてしまうので、ここでは控えますが、場合によってはこの文化、環境を利用し、自分の能力のなさを「謙遜」という殻をかぶって自己防衛している人を多く見かけるんですよね。
これは「謙虚」とは別物なので、「謙虚さ」→「向上心」にはつながらないと僕は考えています(むしろ「逃げ」→「成長を止める」につながると思います)。
感謝を行動で示せる人、示せない人
次に「感謝」。
「ありがとうございます」という言葉が素直に使えるかどうかです。
これは、前述の「謙虚さ」がない人には出てこない言葉ですよね。
若手のころは特に、本当は実力が不十分であっても、先輩方が勉強、経験のために仕事に呼んでくれたりします。
その際に、「(こんな未熟な自分を使ってくださって)ありがとうございます」と思えるか、それを態度に示せるか(言葉に出せるか)ですね。
うちの事務所では、たくさんの若手に演奏の機会を提供していますが、1~2ヶ月前に仕事をお願いし、再度お願いした場合や、どこか別の場所で会った時に「先日はありがとうございました」とか「お世話になりました」という言葉が使える人と使えない人がいます。
どちらの印象が良いと感じますか?
「仕事をもらって当然」というような意識でいる人は、まさに謙虚さがない人で、そういう人からは感謝の言葉が出てこないのです。
心からの謝罪、形だけの謝罪
また、謙虚、感謝がない人の特徴として、「謝罪」も出来ない人が多いですね。
日本人は欧米人と比べると、自分が本当は悪くない時や、本心では悪いと思っていない時に簡単に謝ります。
ですが、あまりに謝り慣れていて、心がこもっていないケースがよくあります。
「4. 電話、メールなどできちんと連絡が取れる」でも書こうと思っていますが、たとえば、仕事に関係のあるメールの返信が遅くなってしまった時、「連絡が遅れました」と書いてくる人と、「連絡が遅くなって申し訳ありません」と書いてくる人がいます。
何気なくやっている人もいますが、これもどちらが印象が良いかは一目瞭然ですよね。
後者であっても、「心がこもっていないな」と感じる事もあります。
状況によっては、なぜ連絡が遅くなったかを説明したほうが良い場合もあるし、次からどうするのか、自分の変化を伝える必要もあります(例:毎日メールチェックをして、必ずすぐに返信するようにしますとか)。
個人的なやりとりではなく、複数の人間が関わっている内容だった場合(例:音楽家の場合、リハーサル日程の調整etc.)、一人の連絡が遅いために、プロジェクトが止まってしまう場合があります。
こういう状況において、周囲に迷惑をかけている意識があるかどうか。
それがないのに、いくら形式的に「すみません」「申し訳ありません」などの言葉を使っていても、本質的に謝っているかどうかは、見る人が見ればすぐわかってしまうのです。
早いうちに気づいたほうが得
感謝については、「輝く7人の音楽家たち」でも黒田さんが語ってくれていました。
Vol.5 音楽家として自立するには「信念・情熱・感謝」が大切! / 黒田慎一郎さん(ドラム)
僕自身も若いころは黒田さんと同様に、「俺が俺が」なところはありました。
当時の僕を知る人は、「お前が何を偉そうに書いているんだ!」と思っているかもわかりません(笑)。
言い訳をすれば、「若気の至り」や「勢い」も大切だと思います。
ですが、それが許されるのは本当に若い時だけです。
いろいろな人と出会い、頭を打ち(例:素晴らしい先輩と共演させていただき、自分の実力のなさを痛感したり)、成長していかないと自然にこの業界からは淘汰されていきます。
早いうちに気づいたほうが間違いなく得です。
人からの不当に低い評価とどう向き合うか
また、これも「6. 自分の価値がわかっている」で触れますが、僕は若いころから基本的に「謙遜」の習慣はないので、自分を必要以上に低く見られていると思った場合、決して謝罪はしません。
そこでわかり合えなかった人とは当然今、付き合いはないわけで、そういう人から見れば、僕は謙虚さのかけらもない人です。
ただ、事実として、僕はこうして生き残っています。
敵が多い自覚は多少ありますが(必要以上に作っているつもりはないですが)、その反面、強力な味方が多いので、その方々が僕の生活を支えてくれています。
人が自分をどう感じるか、それは相手次第なので(本質的に相手の心は変えられないので)、結局は「自分をしっかりもつこと」なんだと思っています。
では、今回はこの辺で。
次回記事:『フリーランスで成功するための“10の秘訣”』 Vol.2 自己管理が出来ている
前回記事:Vol.7 「好きこそものの上手なれ」好きならどんな苦労も乗り越えられる! / 福井健太さん(サックス)