音楽家のサバイバル術A way for musicians to survive

音大卒の演奏家が仕事を得る方法(全7回)

デジタル技術で受注を増やす(前編)『音大卒の演奏家が仕事を得る方法』Vol.3

前々回、デジタル技術の急速な進歩によって「生演奏」の仕事が減っているという、ある意味「ネガテイブ」な話をしました。

では逆に、デジタル技術の急速な進歩に「ポジティブ」な要素はないでしょうか?

そうです。

デジタルの台頭は演奏家の脅威である一方で、演奏家もそれを味方に付ける事で大きなアドバンテージを得る事が出来るのです。

確かに、楽器や声がアナログなのはこれからも変わらず、このこだわりを捨てたら音楽家としておしまいですが、テクノロジーの助けを借りる事で世界が広がる可能性も十分にあるんですよ。

にもかかわらず、なぜか音大生は、実にアナログな人が多いですよね。
きっとこの記事を読んでいる方にも、苦手意識をもっている方が多いと思います。

今回は、そんな方にこそ読んでいただきたい内容です。

デジタル技術への「投資」が、あなたにどんな利益をもたらすのか?

出来る出来ない、やるやらないの前に、まずは知る事が第一歩です。

それでは見ていきましょう!

デジタル技術のポジティブ要素

僕が思うポジティブな要素は次のとおりです。

  • 楽譜がパソコンで書けるようになった
  • 自宅でも簡単にレコーディングが出来るようになった
  • ホームページやブログの作成、投稿が簡単になった
  • YouTubeやSNSでお金をかけずに自己PR出来るようになった

順番に見ていきたいと思います。

パソコンで楽譜が書けるメリット

まず、パソコンで楽譜が書けるメリットについて考えてみましょう。

  • よほど手書きで綺麗に書ける人を除いて、一般的にはパソコンで書いたほうが美しい
  • 楽譜の管理、保存、演奏仲間とのやりとりが、紙よりもはるかに楽
  • 一度書いた曲を移調したり、違う編成にアレンジし直すのも簡単(管楽器の移調譜を書くのも簡単)
  • 書いた楽譜の音が出せるので、リハーサルや納品の前にある程度サウンドを把握したり、音源を作ったりする事が出来る

こんなにも便利なのに、音大のカリキュラムに入っている所も少ないし、自分で勉強している人が少ない印象を受けますね。

僕は、22歳でテーマパークのバンドに在籍していたころから使っていました。

拘束時間の中で、ショーとショーの間にけっこうな空き時間があった点と、バンド内に同じ楽譜作成ソフトを使いこなしている仲間が2人いたおかげで、ずいぶん上達しました。

2年目にはテーマパークの運営会社からアレンジの仕事の依頼も受けられるようになりました(もちろん、ソフトの使い方だけでなく、アレンジそのものの勉強もしましたが)。

僕が使用している「Finale(フィナーレ)」という楽譜制作ソフトは5万円以上しますが、学生さんなら「アカデミーパック」もありますし(学生さんほか、教育関係に関わっている証明があれば、3万円台になります)、廉価版なら1万円代からあります。

演奏やアレンジの仕事が広がれば、あっという間に元が取れるレベルの「投資」だと思います。

使わないと損だとは思いませんか?

参考:楽譜作成ソフト「Finale」HP

自宅でもレコーディングが出来る!

CMやドラマ、映画音楽などのレコーディングを生業(なりわい)とする「スタジオミュージシャン」にあこがれる人も多いでしょう。

ですが、そのスタジオミュージシャンの仕事も、デジタル技術の進歩によって激減しています。

以前は複数人数で録音しないといけなかった案件でも、一人で重ね録りが出来てしまったり、そもそもデジタルなサウンドが主流になり、生音が必要とされなくなってしまっているからです(例:生音より、シンセブラスのほうが楽曲に合っている、カッコイイと思われたりする)。

僕はそれを逆手に取り、自宅でレコーディング出来る環境を整えています(演奏可能な物件に住むメリットでもあります)。

僕の自宅スタジオ

レコーディングに使用している「Logic(ロジック)」という音楽制作ソフトは、以前100万円くらいしていたそうですが、今はAppleの傘下になり、なんと2万円代でダウンロード出来るようになりました。

参考:音楽制作ソフト「Logic Pro X」HP

自宅レコーディングの事例①

この楽曲は、僕がブラスのアレンジと録音を行ったのですが、作業はすべて自宅のスタジオです。

プロデューサーさんのほうでは「シンセブラスでいこうか」となりかけていたのですが、「生演奏の良さ」を音で証明出来たので、結果、採用となり、その後なんと3万枚近く売れたそうです。

どんな形であれ、自分の関わった楽曲が多くの方に届いたのは、音楽家として何よりの喜びですよね。

自宅レコーディングの事例②

こちらは、僕が東日本大震災の復興支援も兼ねて制作したオリジナルのCDですが、これも「パソコンで書いた楽譜」と「自宅でのレコーディング設備」をフルに生かしています。

特筆すべきは、楽譜や録音データを海外の友人ともやりとりし、セリーヌ・ディオンやシルク・ドゥ・ソレイユ、ブラストなどでも活躍している、アメリカのミュージシャンにも参加してもらえた事です。

CD詳細:『Lullaby of Angels』

テクノロジーの勉強は「投資」

こんな事が個人レベルでもある程度出来る時代になったのですが、周りを見ても、このような設備を使いこなしている同業者はほとんどいません。

クラシックしかやっていない人はあまり実感がわかないかもしれませんが、自分名義のCDも、ある程度簡単に制作出来るという事です。

音楽家にとって何より大事な「名刺」は『音』ですよね!

ちなみに、ベートーヴェンも交響曲や小さな作品を作っては、貴族や出版社に売って生計を立てていたそうです。
今でいう「コンテンツ」の販売を、彼のような偉大な芸術家もやっていたという事ですね。

演奏の技術を学ぶだけでは、大した「投資」にはなりません。

スマホでゲームをする暇があるなら、ここに書いたような「テクノロジー」を勉強したほうが、音楽家として生き残れる可能性は高くなると思います!

次回はHPやSNSのメリット、活用方法について書いてみたいと思います。

次回記事:『音大卒の演奏家が仕事を得る方法』 Vol.4 デジタル技術で受注を増やす(中編)
前回記事:『音大卒の演奏家が仕事を得る方法』 Vol.2 あなたがやるべき事を知るには

おまけ

今回のデジタル技術を使って僕が実際にしてきた仕事を、僕は自分のホームページでPR(←これとても重要ですよ!)しています。
より具体的に、実践のイメージが実感出来ると思いますので、ご参考までに紹介しておきますね。

実践例:http://hirokifujii.com/sound

※決して宣伝や自慢の意図ではありません。デジタル技術を味方に付ける事で、どれほど仕事の可能性が広がるかを、具体的に感じ取っていただけたら幸いです。

カウンセリング受付中

NPO法人ネクストステージ・プランニングでは若い音楽家向けに、本記事著者の藤井裕樹によるカウンセリングを受け付けております。詳しくはこちら

シェアのお願い

この記事が参考になった!勉強になった!という方は、ぜひお友達にもこの記事を教えてあげてください!

記事を書いた人

藤井裕樹
藤井裕樹(フジイヒロキ)

NPO法人ネクストステージ・プランニング音楽ディレクター。中学でトロンボーンを始め、大学には行かず19歳でプロになる。ジャズやポピュラー音楽を中心に、某人気テーマパークでの演奏や、有名ミュージシャンとの共演多数。詳しくは「ネクストステージ」へ羽ばたく若い音楽家の皆さんへ

HP: https://mtfujimusic.com/

音楽家のサバイバル術トップへ

Reccomend