音楽家のサバイバル術A way for musicians to survive
デジタル技術で受注を増やす(後編)『音大卒の演奏家が仕事を得る方法』 Vol.5
前回の記事では、「自分のホームページをもつ事がどれだけ大切か」というお話をしました。
そして、あなた自身に興味をもってもらうためには、「いかにほかの人より魅力的な“お店”を作るかが重要」だとお伝えしました。
今回はSNSやYouTubeについて書きますが、まずはホームページの見せ方について解説していきます。
- 音楽業界の現状
- あなたがやるべき事を知るには
- デジタル技術で受注を増やす(前編)
- デジタル技術で受注を増やす(中編)
- デジタル技術で受注を増やす(後編):今回記事
- ジャズやポップスまで学びを広げる
- レッスンの仕事に誇りをもとう!
良いお店の見せ方 5つのポイント
皆さんが飲食店を利用したり、何かを買おうと思った時、どうやって「検索」してそのページにたどり着き、何が書いてあれば(何を知る事が出来れば)そのお店を利用しますか?
- (どこにある)何のお店なのか?
- 何が売りなのか?(ほかのお店と違う特色は?)
- どんな商品を扱っているのか?(画像などでわかりやすく見せているか)
- 価格は明記されているか?
- 評判はどうか?(口コミや更新度合い)
それでは、これを飲食店を例に、音楽と結び付けて解説してみましょう。
1.(どこにある)何のお店なのか?
「池袋 ラーメン おすすめ」
のように、地名と食べたい物の種類を使って検索するのが一般的ではないでしょうか。
具体的なお店の名前で検索される場合もありますが、それは「有名店」だけで、あなたが既にその情報を得ている場合です。
たとえば僕の場合、「フジイヒロキ トロンボーン」と検索してもらえる事より、
「池袋 トロンボーン レッスン」
というようなワードで検索されて、なるべく上位に表示される事が大切なのです(レッスンの場合、場所はとても重要です)。
僕を知らない人にアプローチ出来たほうが、断然マーケットが広がりますよね。僕はそんなに有名人ではないので(笑)。
僕は、演奏の仕事や作編曲などの制作の仕事もたくさんやっていますが、これらは主に口コミというか、人脈でくる事が多いので、検索の引っ掛かりやすさは「レッスン」にターゲットを絞っています。
2.何が売りなのか?(ほかのお店と違う特色は?)
醤油ラーメンのお店なのか、味噌ラーメンのお店なのか、はたまた何でも揃っているのか、どんなスープにこだわっているのかなどの情報です。
ラーメンなら何でも良いと思って検索する人もいますが、最初から「醤油」など、食べたい種類が決まっていて、その中で一番美味しいお店を探したりしますよね。
僕の場合、「ジャズやポップス系に強いトロンボーンのレッスン」である事や、「初心者にやさしい」事などを売りにしています。
音大受験や、オーケストラに入りたい人は、僕より適任の先生がほかにたくさんいらっしゃいますので、「自分がどのタイプの先生であるかを明確にしておく事」はとても大切です。
3.どんな商品を扱っているのか?(画像などでわかりやすく見せているか)
ラーメンなどの場合、美味しそうな画像もなく、文字でメニューしか書いていなかったら、まず行こうとは思いませんよね。
僕は自宅のスタジオでレッスンを行なっているので、楽器店と比べると入りにくいと感じる方もいらっしゃると思います。
特に女性の場合は不安だと思います。
なので、トップには女子学生との写真を置き、部屋の中の写真なども公開し、少しでも安心してもらえる工夫をしています。
参考:https://mtfujimusic.com/lesson/
4.価格は明記されているか?
説明するまでもなく、これはとても重要ですよね。
「3.」ともリンクしていますが、音楽教室の場合、「1レッスン 90分 8000円」など、時間と値段が書いていないとほぼ問い合わせはきません。
たまに、演奏をメインにしている人のホームページやブログで、
「レッスンもやっています。詳しくはメールください」
としか書いていない人がいます。
「醤油ラーメンを扱っています。料金などはお問い合わせください」
と表記しているお店には絶対に入らないと思うのですが、音楽家はこれに近い非常識な事をやっている人がけっこういますね。
5.評判はどうか?(口コミや更新度合い)
食べログなどのサイトでは、数字や星でランク付けされていたり、口コミが載っていたりします。
これらを参考にしてお店を選ぶ人も多いのではないでしょうか。
個人の音楽家のページにランク付けはありませんが、僕は「生徒さんの声」というページを作り、レッスンに興味をもってくださっている方に安心してもらえるようにしています。
参考:https://mtfujimusic.com/lesson/voice/
SNS活用術
ようやくSNSの話まできました(笑)。
さて、あなたのホームページが「お店」だとすると、SNSは何に当たると思いますか?
SNSはウェブ広告のようなもの
答は「ウェブ広告」です。
フェイスブックやツイッターをやっている方は、誰かがシェアしている情報からメインのホームページに飛んだ事があると思います。
こうやって「本店」に誘導するんですね。
たとえば、あなたのレッスンに対する考え方や、演奏のYouTube動画などが上がっていて、そこに多くの「いいね!」があったり、リツイートがたくさんされていると、それが「口コミ」となり、評判の良いお店だと(習いたいと)思ってもらえるわけです。
SNSのタイムラインでは、あっという間に過去の投稿になってしまうので、「更新」が大切になります。
面倒くさいですが、ある程度評判になるまでは頑張るしかありません。
こうして、ほかのサイトからメインのホームページにきてくれる事で、「このページは常に世間の役に立っている」とグーグルが判断し、検索で上位にくる可能性が高くなります(SEOと言います)。
たとえば、テレビの地上波のゴールデンタイムでCMを流してもらうと、おそらく億単位か、何千万はするのではないでしょうか?
新聞などの媒体でも、大きさによっては何十万か何百万です。
これらに広告を出すのは実質不可能ですが、SNSやYouTubeは基本的に無料です。
利用しない手はないですよね!
大手が何千万もかけてテレビCMを放映するのは、「それくらい宣伝しないと商品は売れない」からです(ハイリスクハイリターン)。
逆に、少し前に、とある旅行会社が倒産しましたが、この会社は、ウェブを利用しない世代の需要を狙って、新聞広告に大金をつぎ込んだ事が仇になったと言われています。
つまり、莫大な費用をかけて大きな媒体に広告を出せば良いという時代ではなく(そういう事をするのは、潤沢な資金がある大手だけ)、「いかに安く、ピンポイントで自分を必要としている人にアピールするかが大切な時代」だという事。
それが、まさにSNSの役割と言えるでしょう。
「ピコ太郎」はちょっと極端な例で、あれを目指すのは危険もありますが、「ローリスクハイリターン」の良い例でもあります。
SNSでのNG行為
前回の記事で、
「既に(SNS、YouTubeのアカウントを)持っている人でも、あまり効果がない使い方だったり、むしろ逆効果なのでは?と感じるものも少なくありません。」
と書きましたが、それは具体的にどういう事でしょうか?
1.プライベートとビジネスを混同する
僕が思う最もNGな行為は、
「プライベートとビジネスを混同している事」
です。
先ほども書きましたが、SNSは「広告」です。
広告にプライベートな事を表記したり、放送している会社は絶対にありませんよね。
ですが、僕の友人のフェイスブックのタイムラインやツイートでも、音楽の投稿ではなく、今の政権に対しての不満だったり、芸能ニュースのリンクを貼っていたり、飲み会など、友達と遊んでいる写真ばっかり上げている人がいます。
初めてその人のページを見た人が、ざっとタイムラインを見渡した時、何をやりたい人なのかさっぱりわからないのです。
2.ネガティブな情報が多い
それどころか、酔っ払った写真などがたくさん載っていたり、人の悪口や、身の回りで起きた事の愚痴など、ネガティブな情報がたくさんあると、あなたの商品価値を著しく低下させます。
ちなみに、今まだアルバイトをしている人は、その事を書くのも基本的にはNG、気を付けてください。
もしもあなたが英語を習いたいと思った時、バイトと掛け持ちをしている見習い講師には習いたくないですよね?(すごく安くてていねいなどのメリットがあれば別ですが)
「自分は政治的な意見も発信していく社会派ミュージシャン」というキャラで投稿する、
「グルメなミュージシャン」という売りで、美味しいお店の紹介なども挟んでみる、
「アルバイトをしながら音楽家を目指す◯◯奏者のページ」というようなタイトルで、日々の苦労を綴りながら成長していく様子をアップしていく、
という方法もないとは言えないので、必ずしもダメだとは言いません。
ですが、このように「意図」してやるのはむしろ「戦略」で、何も知らずに発信する必要のない記事をバラまくのは全く意味が違います。
どちらにしても「バランス」は大切なので、音楽以外の投稿のほうが多いというのは避けたほうが良いでしょう。
3.他人の投稿ばかりシェアする
あとは、良かれと思って他人の投稿ばっかりシェアしている人。
特に、自分の意見をひと言も書く事なくURLだけ貼っている人。
これではあなたの個性は伝わらないし、場合によっては、同業他社のライバルの広告を出してあげている行為になります。
僕はプライベートでSNSをやるほど暇ではないので、このような事に気を付け、あくまでビジネスとしての使い方をしていますが、どうしてもやりたい人は、別々のアカウントを作り、プライベートのほうは友人のみの限定公開にする事をオススメします。
ウェブ活用のゴールデンルールとは
2回にわたってウェブの重要性、効果的な使い方、発信の仕方を書いてきました。
上手に使わなければ、時間をかけた割にほとんどの意味がないので、ぜひ工夫をしてみてください。ポイントは、
常にお客様の立場に立って考える
これだけです。
世間ではごく当たり前の事なんですが、学校で練習ばっかりしていた人で、これを理解出来ず(知らず)にいて、仕事に結びついていない人たちを僕はたくさん見ています。
あなたはそういうタイプの人になってしまっていませんか?
次回は、「クラシックだけにこだわらず、ほかのジャンルの勉強をする事の重要性」について書いてみようと思っています。
次回記事:『音大卒の演奏家が仕事を得る方法』 Vol.6 ジャズやポップスまで学びを広げる
前回記事:『音大卒の演奏家が仕事を得る方法』 Vol.4 デジタル技術で受注を増やす(中編)