音楽家のサバイバル術A way for musicians to survive
ジャズやポップスまで学びを広げる『音大卒の演奏家が仕事を得る方法? 』 Vol.6
本シリーズ第1回(Vol.1 音楽業界の現状)では、「デジタルとは無縁なクラシックの世界でも仕事が減っている」事実をお伝えしました。
最近では、ジャズ科のある音大も増えてきましたが、クラシックの学科でクラシックだけを学んでいる、もしくは学んでいた人も多いと思います。
では、
音楽だけで生計を立てて自立したいと思っている人は、果たしてクラシックだけの技術、知識でやっていけるのでしょうか?
【目次】音大卒の演奏家が仕事を得る方法
- 音楽業界の現状
- あなたがやるべき事を知るには
- デジタル技術で受注を増やす(前編)
- デジタル技術で受注を増やす(中編)
- デジタル技術で受注を増やす(後編)
- ジャズやポップスまで学びを広げる:今回記事
- レッスンの仕事に誇りをもとう!
クラシックだけでは生活出来ない
僕は、100パーセントに近いくらい「NO」だと考えています。
本シリーズ第2回(→『音大卒の演奏家が仕事を得る方法』 Vol.2 あなたがやるべき事を知るには)では、ピアノ科を例に挙げ、音大卒業後に「演奏のみ」で生活出来る人の割合は1パーセント、多くの人はレッスンなどもやって生計を立てている事を書きましたね。
ぶっちゃけ、これが答えと言っても過言ではないのですが、
99パーセントの人は、レッスンなど演奏以外の仕事をするにあたり、間違いなくクラシック以外の音楽にも関わる事になります。
となると当然、クラシック以外の音楽の事も知らなければ、お金は取れないし(取るべきではないし)、生活も出来ないのです!
たとえ演奏の仕事をしていくにしても、いわゆる自主公演ではなく、一般企業がクライアントで、イベントの仕事の依頼を受けたり、ブライダルの仕事などをする場合が多くなる事でしょう。
そうした生演奏の仕事では
「クラシックのみを演奏してください」
という依頼よりは、
「ジャズやポップスも演奏してください」
という依頼のほうが圧倒的に多いのです。
また実際に僕が過去の経歴の中で見てきた事ですが、千葉県浦安市の某大型テーマパークのパフォーマー(音楽家)も、某大手音楽教室の講師も、クラシックしか演奏出来ない人は100パーセント、オーディションには受かりません。
大手企業に興味がないにしても、たとえば管楽器で吹奏楽部の指導に行く場合、コンクールシーズンは別にして、文化祭や定期演奏会のシーズンで、ポップスをやらない学校のほうが少ないはずです。
“なんちゃって” でやってませんか?
「いやいや、自分はポップスもちゃんと指導が出来ている」
と思っている人もいらっしゃるかもしれませんが、そういう人の中には、
「ジャズやポップスは、クラシックより低レベルで簡単な音楽だ」
とナメてかかっている人も、残念ながら少なくありません。
では、ここで問題です。
- クラシックではこう演奏しなさいと教わる事と、ジャズ、ポップスではそれが真逆の場合があります。違いを説明出来ますか?
- ハーモニーにおいても、クラシックでは絶対に出てこないようなボイシングもあります。どんな種類があるか説明出来ますか?
- 譜面に書かれた情報とは別に、ノリやグルーヴといった内容を、ある程度説明、演奏出来ますか?
- 「アドリブってどうやるんですか?」と質問されて、「アドリブだから適当にやればいいんだよ」などと無責任なアドバイスをしていませんか?
ここに書いた内容を、音大のクラシックの学科で学ぶのはほぼ不可能だと思うので、自分で学ぶ機会を作った人以外のほとんどの人は、胸を張って出来ているとは答えられないはずです。
自分を過信せず、学びを広げる事
少し論点がズレるかもわかりませんが、
音大卒業時点で勉強が終わったと考えるのは絶対にやめたほうがいい
と思います。
これは、一般企業への就職でも全く同じですが、大学卒業はスタートラインでしかなく、学校では社会に出て必要な事のほんの一部しか教えてもらえません。
あとは自分で勉強するのです。
僕自身、ジャズやポップスを100パーセント理解したとは思っていないですし、たぶん一生かけてもすべては学びきれません。
ですが、演奏技術や指導の幅を広げるために、今も学び続けています。
もちろんクラシックも、吹奏楽でアマチュアの生徒さんに教えるうえで必要な技術、知識を深められるよう、マスタークラスを受講したり、練習もしています。
大切なのは、
ジャンルに優劣を付けず、学校で学んだ知識を過信する事なく、たとえお金をもらう立場になっていたとしても、謙虚に学び続ける事
ではないでしょうか?
次回はいよいよ本シリーズの最終回です。
最後は、レッスンの仕事に対する姿勢、考え方についてお伝えします。
次回記事:『音大卒の演奏家が仕事を得る方法』 Vol.7 レッスンの仕事に誇りをもとう!
前回記事:『音大卒の演奏家が仕事を得る方法』 Vol.5 デジタル技術で受注を増やす(後編)