音楽家のサバイバル術A way for musicians to survive
『夢を実現させるために、最も大切な行動とは?』 Vol.3
今回はこのシリーズの3回目(最終回)になります。
前回記事の「変換力を身に付ける」は理解出来ましたでしょうか?
※この記事から読み始めた方は、必ずVol.1からお読みください。
さて、今回のキーワードは、
情報を制限する
でしたね。
Vol.1では情報を集めろと言っていたのに、今度は制限???
その意図は何でしょうか?
それは、
今の時代は情報が多すぎる、簡単に手に入りすぎるから
です。
昔の情報収集はこんなだった
僕が10代、20代だったころは、まだインターネットもスマホも普及していなかったんです。
音大に行こうと思っても、どんな学校があるかもわからないし、学校名を知っていても、今のように簡単に住所や電話番号もわかりませんでした。
なので「音大受験ガイド」みたいな本を買い、そこから自分の行きたい学校や、親が学費を出してくれる学校を選んで、試験の要項を電話や郵便で取り寄せたりしていました。
今ならこんな事、ネットにアクセスして10分で出来ますよね?
僕より昔の人は、たとえばジャズミュージシャンの場合、マイルス・デイビスとかジョン・コルトレーンのLPレコードをけっこうな金額で買い、針でレコードが擦り切れるまで繰り返し聴いて(アドリブフレーズをコピーしたり、歌い方を真似したりして)勉強、練習したそうです。
今はネット経由でmp3音源を1曲から安価で買う事が出来、スマホでテンポを落として再生する事も可能なので、耳コピも簡単になりました。
2つの例を挙げましたが、要はインターネットやデジタル技術が普及する前は情報収集が今よりはるかに大変だったのです。
現在の情報収集は?
今の20代より若い人は、生まれた時からインターネットが存在していた、いわゆる「デジタル世代」ですよね。
皆さんは、インターネットにアクセスしたり、検索をすれば、世界中の情報が簡単に集められるのが普通、常識になっています。
これはとても素晴らしい事で、以前「生演奏を生業にする音楽家であっても、もっとデジタルに対応出来るようになろう」という記事を書かせていただきましたが、当然、便利な物は利用したほうが良いです。
原始時代の生活に戻る必要はないですよね。
参考:シリーズ『音大卒の演奏家が仕事を得る方法』(全7回)
Vol.3 デジタル技術で受注を増やす(前編)
Vol.4 デジタル技術で受注を増やす(中編)
Vol.5 デジタル技術で受注を増やす(後編)
ネット世代のデメリットは?
ですが、果たして良い事ばかりでしょうか?
僕が感じる最大のデメリットは、
情報が多すぎて、何を信じて良いかわからない
という点です。
事実の一部が誇張されている可能性
Vol.1でも書きましたが、たとえば、とある音楽専門学校のサイトに卒業生の進路が紹介されていたとします。
学校はビジネスであり、広告は、自分たちの商品を最大限に引き出して魅せる事が目的ですから、10年に1人の逸材を、さも毎年優秀な卒業生を輩出している、あなたも入学したら同じようになれるかのように書いてあるかもしれません。
この情報は本当に正しいと言えるでしょうか?
ちなみに僕は今年、6月上旬に1週間ほどフィリピンに行き、6月末から7月中旬までアメリカに行っていました。
合わせても1ヶ月にも満たないし、その前は2年くらい海外には行っていないのですが、先日会ったFacebookで繋がっている同業者の後輩に「藤井さんはしょっちゅう海外にいるイメージ」と言われました。
同じく、一時期食べ物の写真をよくアップしていたころは「藤井さんはいつも美味しい物、良い物を食べてますね」と言われました。
決して毎日投稿していたわけではありません。多くても週に2回程度のランチかディナーのどちらかだけです。
残りの週5回はコンビニやファストフードで済ます事も普通にあるのですが、ネット上のイメージでは、毎日、毎食美味しい物を食べている人みたいになってしまうのです。
若干話が逸れましたが、要は、
ネットやテレビなどのメディアの情報は、どんなに頑張っても、事実の一部を切り取った物でしかなく、時にはその事実ですらねじ曲げられている可能性があるのです。
自分自身の見方、感じ方によって正解も変わってしまう
もう1つのポイントは、
自分自身の見方、感じ方によって正解も変わってしまう点です。
先日ラスベガスで悲惨な銃撃事件が起きたのは記憶に新しいですよね。
あれをニュースで目の当たりにしたら、ラスベガスは怖い場所で、決して近寄ってはいけない所という解釈になるかもしれません。
ですが、僕はそのラスベガスに1年間住んでいました。その期間、銃声1発聞いた事がありません。
基本的には観光が売りの都市なので、ホテル、カジノの周りは夜でも出歩けるとても安全な所なのです。
4ヶ月前も10日ほど滞在していたのですが、シルク・ドゥ・ソレイユなどの世界最高峰のエンターテインメントに触れ、ラスベガスでしか味わえない刺激を受けてきました。
僕にとっての正解は、人生観や音楽観に良い影響を与えてくれる場所であり、それは事件の前も後も同じなんですが、見方を変えれば(ほかの人から見れば)行ってはいけない場所ともなります。
しかしこれは、超一流のエンターテインメントに触れ、自分を高める、視野を広げる可能性を狭めているとも言えるのです(損をしているとも言えます)。
先ほどのSNSの例も、僕が発信した一部の情報を、見る側が勝手にねじ曲げて、常に海外に行ってる人、毎日美味しい物を食べている人に仕立てあげただけですよね。
自分なりの正解に、情報を制限していく
このように、無限にあると言っても過言ではない情報や、事実の一部でしかない情報の中から、自分なりに正解を見極め、必要のない情報を制限していく、取捨選択をしていく能力が必要不可欠だと思います。
周りの99人が自分と違う意見でも、自身を貫く頑固さや信念が必要な時もあるし、自分の意見に固執せず、信頼出来る人をまずは信じてみる柔軟性も必要だと感じます。
このブログに関しても同じです。
以前書いたとおり、この記事に100パーセント正しい答は書いていません。
あなたがこの記事を読む事が有益だと思うなら、僕を信じて読み続ければ良いし、必要ないと感じるなら、時間がもったいないので、このページからの情報を「制限」し、ほかに役に立つ情報の収集に時間を使うほうが良いでしょう。
他人に敷いてもらったレールの上を歩いているだけの生き方は、音楽家のような職業で、特にフリーランスの場合、成功する可能性がきわめて低いというのが、一応約20年間、この業界に踏みとどまっている僕なりの感覚ですね。
音楽界の先輩として、大人として、少しでも有益な情報を発信出来るよう、これからも頑張りたいと思います。
- あなたには夢がありますか?
- それを実現させたいですか?
- そのための情報収集が出来ていますか?
- その情報を上手に自分の状況に変換出来ていますか?
- そこから本当に必要な情報、自分なりの正解だけに制限出来ていますか?
- これらを他人ではなく、自分の責任で行っていますか?
次回記事:特集『輝く7人の音楽家たち』(全7回) Vol.1 可能性が無限大の“フリーランス”という生き方 / 佐藤秀徳さん(トランペット)
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