音楽家のサバイバル術A way for musicians to survive

NSU教育学部

音楽家に不可欠な日本語教育 | NSU教育学部 Vol.10

シリーズNSU(Next Stage University)教育学部もついに10回目となりました。

今回のテーマは「日本語教育」についてです。

日本に生まれて日本で育っていれば、ほぼその人の年齢分学習し続けていると言っても過言ではないと思いますが、あなたは正しく使えていますか?

音楽家は、作家や新聞記者などと比べた場合、比較的語学力は必要ないと感じるかもしれません。ですが、ここ最近NSPでスタッフ育成を行っていても、実はかなり重要なのではと再認識させられています。

リスニング&スピーキング能力

改めて言うまでもないですが、現場で周囲の誰とも会話をせず、音楽だけで仕事や学生生活が成り立つシチュエーションは考えづらいですよね。

まずはリスニング(聴く)能力、スピーキング(話す)能力が必要になります。実際、赤ちゃんが喋れるようになる過程でも、聴く事から始まり、話せるようになっていると思うので、コミュニケーションの中での重要度が高い2つと言えるでしょう。

同年代の友人たちとリハーサルをやったりする分には不自由を感じている人はほとんどいないと思いますが、目上の音楽家や、お仕事をくださっているクライアント様への(敬語などの)言葉遣いがスレスレ、もしくはアウトな人は結構多いですね。

音楽家の場合、いわゆる一般の就活のような面接がなくてもある程度仕事になる事もあり、自分が使っている言葉をあまり意識していないかもしれませんが、音楽と同じくらいその人を評価する基準になっている場合があると僕は考えています。

想像してみてください。

たとえ同年代でも(年下ならなおさら)、初対面の人が異常に馴れ馴れしかったり、あからさまに上から目線であなたに話しかけて来たら、あなたはその人と良いアンサンブル(仕事)が出来る気がしますか?

言葉遣いというのは、敬語の使い方や文法の問題だけではありません。それ以上に大切なのは「表現力」だと思います。

「どう話すか」の前に「何を伝えたいか」。

例えば音大生がレッスンを受けるにしても、今、自分はどこを目指していて、どんな課題に直面していて、先生に何を見て(聴いて)もらいたいのかを的確に伝えないと、有益なレッスンは受けられないですよね。

エチュードを片っ端からやって、間違えないように演奏出来るようになったのを見てもらうだけでは何の意味もありません。

口下手だけど、演奏したら人が変わるというようなアーティストタイプの人もたくさんいますが、日本語の表現力と音楽の表現力って、ある程度は比例しているんじゃないかなって僕は感じています。

論文のような堅苦しい表現の人と、詩のような繊細な表現が出来る人の音楽、きっと同じじゃないですよね。

レッスンの仕事をやっている人は、自分の奏法やノウハウを言語化し、適切に伝えられなければ仕事になりません。音大受験生を見ているなら専門用語を使って多少難しい表現になっても良いですが、子どものレッスンや初心者の大人であれば表現を変えたりします。これもある意味音楽以上に大切な能力です。

「どう話すか」より「何を伝えたいか」。

これは一般企業に就職する人も同じではないでしょうか。

面接でどんなに丁寧な言葉を使っても、中身がない事を見透かされたら内定をもらえないだろうし、入社出来たとしても、自分が何に困っていて(何が分からなくて)、上司にどうやって助けてもらいたいのかを表現出来なかったら、成長の妨げになったり、もっと言えばストレスを抱えて仕事が続かなくなってしまいます。

参考:
NSPのスタッフに向けた「ミュージシャンのためのウェブブランディングセミナー」を開催しました。

リーディング&ライティング能力

これからの時代、コミュニケーションの手段としてさらに大切になるのはリーディング(読む)とライティング(書く)の能力です。

今から20年ほど前、僕がプロ活動を始めたばかりのころは、仕事の依頼はほぼ100%電話がかかってきていました。その後メールが主流になり、今ではFacebookやLINEなど、SNSのメッセージ機能でやり取りするのが普通になり、ほとんど電話も使わなくなってきています。

それだけに、読み書きの能力の必要性が高まっているという事ですよね。

ですが、生まれた時からSNS世代の若い人たちは、友達と

「元気?」→「うん」→「明日暇?」→「暇」→「じゃあ遊びに行こ!」→「いいよ。どこ行く?」→「渋谷はどう?」

このような短い会話をLINEでやっているかと思います。場合によってはスタンプ一つで会話が成立する事もありますよね。

ですが、ビジネスメールでこれは通用しません。

演奏の依頼がメールで来る場合も、クライアント様がどんなご要望かを正確に読み取り、的確な言葉遣いで、的確なご提案をしていく必要があります。

友達や先輩との会話では名前も名乗らず「お疲れ様です」という書き出しで良くても、ビジネスの場合ではきちんと「○○株式会社 ○○様」というように社名や名前を書き、「お世話になっております」というような書き方をします。

謝罪の場合でも「すみません」よりは「申し訳ありません」のような表現が一般的ですよね。

また、どんなに丁寧な表現を使っていても、お仕事をくださっているクライアント様に対し「○○をお願いいたします」というような内容の(です、ます形の)羅列になると、結果命令されているように受け取られてしまう場合もあります(「○○をお願い出来ますでしょうか?」というような表現にしたほうが良い場合もあります)。

内輪のスタッフに対しては上司に対しても「よろしくお願いします」くらいのほうが対等な立場で信頼関係があるように僕は感じるのですが、「よろしくお願い申し上げます」というような必要以上に丁寧な表現をされると、逆に裏表を感じるというか、他人行儀な印象を与えかねません。

こういった事をNSPでスタッフ育成をやっていても多々感じるのですが、それだけ学校では教わっていないという事かもしれませんね。

ビジネスメールの場合だけでなく、これからの時代は(すでにですが)ホームページやSNSがローリスクハイリターンになる可能性のあるマーケティングツールです(テキストが必要になります)。

レッスンをやっている人であれば、場所や曜日、金額のような事務的な内容しか記載されていないより、「自分にはこういうノウハウがある」とか「世間ではこんな指導がまかり通っているけど、自分はそうは思わない、こういう指導をする」といったその人のオリジナリティが伝わるほうが生徒は集まりやすいでしょう。

グローバル社会になってもまずは日本語!

最後になりますが、これからの時代はよりグローバルな社会になっていきます。

英語の必要性はいろんな所で言われているので、皆さんも良く耳にするでしょう。でも、英語というのも一つの「ツール」に過ぎません。やはりまずは母国語である日本語をきちんと使いこなし、自分の思った事を伝えられないと、それを英語に変換して伝えられるはずがありません。

それだけ「日本語教育」というのは大切だという事を常に意識しておくと良いのではないでしょうか。

日本語を学ぶ必要性を感じる人は、活字の本をたくさん読んだり、ネットでビジネスマナー(メールのマネーなど)を検索したりして、自分で学ぶ姿勢をもつと良いと思います。

→次回へ続く

次回記事:NSU教育学部 Vol.11『情操教育』
前回記事:NSU教育学部 Vol.9『ポジティブな人とネガティブな人』

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記事を書いた人

藤井裕樹
藤井裕樹(フジイヒロキ)

NPO法人ネクストステージ・プランニング音楽ディレクター。中学でトロンボーンを始め、大学には行かず19歳でプロになる。ジャズやポピュラー音楽を中心に、某人気テーマパークでの演奏や、有名ミュージシャンとの共演多数。詳しくは「ネクストステージ」へ羽ばたく若い音楽家の皆さんへ

HP: https://mtfujimusic.com/

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