音楽家のサバイバル術A way for musicians to survive

NSU教育学部

自分と他人 | NSU教育学部 Vol.5

シリーズNSU(Next Stage University )教育学部第5弾です。

このシリーズではここまで、「行動を起こす前に目的を明確にする事」、「カリキュラムやマニュアルに縛られず、柔軟な行動をする事」、「日本と欧米の教育の違い」、そして「どうように欧米の教育を取り入れるのが理想的か」というお話をしてきました。

教育の大きな目的は「自立」です。

その「手段」として、学力(音楽で言えば楽器などの技術)を上げる事は必要不可欠だと思いますが、もっと大切な事は何でしょうか?

それはズバリ「人間関係、対人関係を築くスキル」だと思います。

僕の解釈では、対人関係における立場、位置付けは

  • 自分
  • 他人

この2つしかありません。

「自分」は説明するまでもなく「わたし(自身)」であり、「他人」とは、親、兄弟、恋人、配偶者を含む、「自分以外のすべての人」を指します。

とてもシンプルな話ですよね。

人間関係は、自分以外に1人以上、他人が関わった時に生まれるものですが、実際には決してシンプルとは言えず、僕も含め、多くの人が「自分との付き合い方」、「他人との関わり方」で苦労しているのではないでしょうか。

「自分を大切にする行動」と「自分勝手な行動」の違いは?

皆さん、「自分を大切にする行動」と、「自分勝手な行動」の違いを意識した事はありますか?
多くの人はアルバイトの経験があると思うので、それを題材に解説してみます。たとえば、

『アルバイトを休む、辞める』

この行動って自分を大切にしていますか、それとも自分勝手ですか?

そんなのこれだけではわからないですよね。なぜでしょうか?

それは、ここに「他人との関わり方」の説明がないからです。
では、次の例はいかがでしょう?

A:面接で週2回勤務で良いと言われて働き始めたのに、入ってみたらとてもブラックなところだたった。ほかの子が辞めて人手が足りないなど、なんだかんだ理由をつけられて週6で入ってくれと頼まれたが、きちんとNOを伝えて「休む」(週2ペースを守る)、もしくは、実際に週6で働かされ、練習、本業どころではなくなってしまったので、さっさと「辞める」。

もっとシンプルに、インフルエンザになってしまったので、事情を話して「休む」。

B:楽だと思って始めてみたらお客様や上司からは怒られてキツイし、期待通りにいかなくて楽しくもないので(無断で)「休む」、または、入ってすぐに「辞める」。

一目瞭然だと思いますが、Aは「自分を大切にする行動が出来る人」、Bは「自分勝手な行動の人」ですよね。

まったく同じ「アルバイトを休む、辞める」という行動をとったとしても、「他人」が1人でも関わる事によって、AにもBにもなり得るという事がわかってもらえると思います。

(インフルエンザで来られたら周りが迷惑ですよね)

「他人を思いやる行動」と「他人の目を気にする行動」の違いは?

今度は「他人側」から同じ事例を検証してみましょう。

A:働いているお店の経営者や仲間もとても良い人で、社会勉強にもなっている。メインで働いていた人が病気でしばらく休む事になったので、その間だけならこのお店を助けたい。少し増えるだけなら練習の妨げにもならないし、むしろ収入がアップして助かるので、週4以内で働かせてもらおう。

B:一応週2で良いと言われて働き始めたけど、経営者は怖くて言う事を聞くしかない。周りのバイト仲間は日数を増やしたくないと言っているので、結局自分が入るしかない。結局週6で働く事になった。

こちらも一目瞭然で、Aが「他人を思いやる行動」で、Bが「他人の目を気にする行動」と言えますね。

人生で起きるすべての出来事は常に「自分だけ」という一方通行はありえないのです。

「いやいや、自分は一人暮らしで、朝何時に起きようがご飯を食べようが関係ない、ここには他人は関係ないじゃないか」という言い分もあるかもしれませんが、その時間寝ていられるのは、働いている人であれば、その日は休みという他人との契約があるからだし、そこで寝ていられるのは、賃貸契約なり、誰か他人との約束事があります。そして、自給自足でもない限り、基本的にご飯(の原料)は他人が作ったものです。

つまり、無人島で1人で生活をしている人以外、必ずそこには「自分」、「他人」という「人間関係、対人関係」があるんですね。そして、対人関係には「対」という字が使われていると思いますが、「自分」と「他人」は常に「対」になっている事に気付きます。

A:自分を大切にしている人は、他人を大切にしている
(他人を大切に出来る人は、自分も大切に出来ている)

B:自分勝手な人は、他人の目を気にして生きている
(他人の目を気にして生きている人は、人に迷惑をかけていても気付かない)

この法則が成り立つと思います。

自分を大切にしている人が他人の目を気にして生きていたり、自分勝手な人が他人を大切にしているという事は絶対に起きないと断言出来ます。

皆さんはAタイプ、Bタイプのどちらになりたいですか?

良好な人間関係を築くという事はすなわち「信頼関係」を築く事ですよね。

僕は、Aタイプの人のほうがそれを実現させる可能性が高いというか、Bタイプでは不可能だと思うので、間違いなくAタイプを目指します。

最初に「他人は親、兄弟、恋人、配偶者を含む」と書きましたが、「信頼関係の深さ」によって、良好かそうでないかは変わってくるので、身内でも仲が悪いケースもあれば、あかの他人でもとても仲が良い場合もあります。

つまり、AタイプかBタイプかというだけのシンプルな話で、僕自身は身内かそうでないか、国籍や性別、先輩か後輩か、上司か部下かなどは関係なく、本当にどうでも良いと思っています。

Aタイプを目指し、そこに「信頼関係」を築けるか、ただそれだけです。

『A or B/あなたが選択すべき人生の分かれ道』Vol.6 諦めない勇気 or 諦める勇気

この記事にも書きましたが、たとえば音大に行ってみたら才能のある友人との差を歴然と感じたり、ほかに興味のある事や得意な事が見付かったので軌道修正したいと思うようになった。でも、親御さんに高い学費を出してもらったのが申し訳ないし、周りがみんな、自分はプロになると思っているので、恥ずかしくて辞められない。

こんな人はBタイプです。

Aタイプの人は「自分の人生を生きている人」、Bタイプの人は「他人の人生を生きている人」です。

日本の社会では、目的を考えずに手段を取り、マニュアル化された教育で個性をなくし、他人との違いを評価されず、否定され、人間関係を築くために他人の目を気にして生きている人、こんな人がとても多いと感じます。

2020年の東京オリンピック誘致のプレゼンで「お・も・て・な・し」が話題になりましたが、実際は「思いやりがないわりに、他人の目を気にして生きている人が多い」気がしています。

国を引っ張っているはずの政治家にも多いと感じるし、音楽の世界もまた例外ではないと思いますね。

「自分との付き合い方」と「他人との関わり方」をもう一度見直す事で、私たちの人生はもっと生きやすいものになるのではないでしょうか。

『フリーランスで成功するための”10の秘訣”』Vol.4 コミュニケーション能力がある

今回の記事をふまえ、改めてこれを読んでいただくと理解が深まるかもしれません。

次回記事:NSU教育学部 Vol.6『辛抱と我慢』
前回記事:NSU教育学部 Vol.4『欧米の教育の取り入れ方』

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記事を書いた人

藤井裕樹
藤井裕樹(フジイヒロキ)

NPO法人ネクストステージ・プランニング音楽ディレクター。中学でトロンボーンを始め、大学には行かず19歳でプロになる。ジャズやポピュラー音楽を中心に、某人気テーマパークでの演奏や、有名ミュージシャンとの共演多数。詳しくは「ネクストステージ」へ羽ばたく若い音楽家の皆さんへ

HP: https://mtfujimusic.com/

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