音楽家のサバイバル術A way for musicians to survive
音楽家にとって大切なお金の教育(上) | NSU教育学部 Vol.7
あけましておめでとうございます。
昨年は皆さんにとってどんな年でしたか?
「一年の計は元旦にあり」という言葉があります。
このシリーズNSU(Next Stage University )教育学部のVol.1(→NSU教育学部 Vol.1『目的と手段』)にも書きましたが、「目的」をしっかり持つ事で「手段」がより明確になりますよ。
元旦は過ぎていますが、
「将来○○を実現するために、今年はこんな事をしよう、こんな年にしよう」というような計画をぜひ立ててみてくださいね。
さて今回は、シリーズNSU教育学部第7弾です。
年始という事で、皆さんに「お年玉」を!
といっても現金をあげるわけにはいかないので(笑)、将来の役に立つ「お金」の話をしたいと思います。
お金ときちんと向き合ってほしい
過去の記事でも、フリーランスの音楽家は個人事業主、つまり「ビジネス」である事を書きました。
日本はお金の話をするのがタブーという考え方が根強く残っているので(特に芸能関係)、目を背けたくなるかもしれませんが、「個人事業主」は特に、しっかりとお金と向き合っていく必要があります。
アメリカのお金の教育
このNSU教育学部のシリーズでは、「欧米との教育の違い」(→NSU教育学部 Vol.3『日本と欧米の教育の違い』)についても触れましたが、昨年アメリカのニュースでこんな話題が取り上げられていました。
『13歳の少年が、自宅の前で無許可でホットドッグ屋さんをやろうとして通報されたけど、市の衛生局が「ダメ」と言わず、起業支援しているNPOにも協力してもらい、この子がビジネス出来るようにしてあげた』
というお話です。
なんともアメリカっぽいエピソードというか、日本ではまずあり得ないですよね。何が言いたいかと言うと、
「アメリカではこれくらいの子どもでもお金を稼ごうとする、稼ぐ方法を身をもって体験、学習している」
と言う事。まさに「生きた教育」ですよね。
僕は高卒ですが、少なくとも日本で高校までの間に「お金を稼ぐ方法」や「税金(納税)について」の授業などはなかったと記憶しています。
※税金については社会の授業で触れてはいますが、そんなに詳しくはなかったと思います。
日本はなんだかんだ言っても裕福で、未成年の子どもがお金を稼ぐ必要がないのも理由かもしれません(少し話が逸れますが、発展途上国では特に、子どもが学校に行くより家計を助けるために働く事を優先せざるを得ない状況にあります)。
アメリカの大学では?
もう一つの例ですが、アメリカの大学にはTA(Teaching Assistant)、GA(Graduate Assistant)という制度があります。
ざっくり説明すると、大学院生になったら教授のアシスタントのような形で生徒(クラス)を持って、学費が免除になり、給料も貰えるという制度です。
僕の記憶と、つたない英語力での認識ではTAが修士課程の生徒、GAが博士課程の生徒だったような気がします。自分がやっていたのではなく、受けていた側なので、もしかしたら100%正確でないかもしれません(ご存知の方、情報をお待ちしています)。
ただ、大学院生になったら実際に先生の立場になり、給料(もしくは返済不要の奨学金?)が貰えるというのは当たらずとも遠からずだと思います。
日本の教育実習で報酬は発生しないですよね。
優秀な大学院生の学費が免除されるのはあるかもしれませんが、学生が学内で教えながらお金を得るというシステムは、日本には存在しないのではないでしょうか。
僕が在籍していたアメリカの総合大学でも、音楽科のアシスタントの大学院生が実際にレッスンをしたり、バンドで指揮を振ったり、音楽史のような副科のクラスを持っていました。
つまり、教育実習のような事をやりながら、「お金を稼ぐ」勉強、実体験もしているんです。
この件に関して僕はヨーロッパの事情はわからないですが、少なくともアメリカはこの例を見ても「実践的なお金の勉強をかなり早い段階からしている」と言えます。
日本で私立の音大に通っている人(通っていた人)は、そもそも裕福な家庭も多いし、そうでないにしても、子どもに練習時間をたくさん作ってあげるために親御さんが頑張って働いてアルバイトをさせなかったとか、実家通いが幸いし、働かないで済んだというケースもあると思います。
そういう人は、お金を稼ぐ勉強、実体験が欠落している可能性があります。
『フリーランスで成功するための“10の秘訣”』
Vol.5 自分の価値がわかっている/お金の価値がわかっている
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ここにも書きましたが、お金の価値を理解し、自分の市場価値がわからないと、ギャラの交渉も出来ません(だから僕は、早い段階でのアルバイト経験を推奨しています)。
何でも言われるがままに仕事を受けてしまって安売りしてしまう可能性もあるし、自分の実力や相場の自己判断を誤って高いギャラを要求し、「じゃあいりません、ほかの人にお願いします」となる可能性もありますよね。
給料を貰える現場はまだ良いですが、そうでないフリーランスがお金にシビアになるのは本来必然なんです。
Vol.1 可能性が無限大の“フリーランス”という生き方 / 佐藤秀徳さん(トランペット)
Vol.3 演奏機会が少ない楽器だから、自分のポジションは自分で作る / 円能寺博行さん(ユーフォニアム)
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彼らのインタビューも参考になりますよ!
次回は日本の奨学金や税金の制度など、お金についてもう少し掘り下げてみたいと思います。
次回記事:NSU教育学部 Vol.7『お金の教育』(下)
前回記事:NSU教育学部 Vol.6『辛抱と我慢』